「ただいまー」
昼までに帰ってくると言って、おばあさんに会いに行った祟ってる奴が、ちょうどそれくらいに帰ってきた。
『おかえり! どうだった?』
昼飯の準備は一段落していたので、玄関まで迎えに行く。祟ってる奴は、なんだか複雑な顔をした。
「えーと、その、おばあちゃん、彼氏できてた……」
『はあ!?』
「あ、でも、千歳は彼女じゃないってちゃんと話したから!」
それはいいけど! それ以外が気になるだろ! すごく!
『いや、うん、それはいいんだけど、彼氏ってどういうことなんだ、もっと詳しく聞かせろ!』
というわけで、昼飯を食べながら話を詳しく聞いた。八十代で好きあった男女二人、老人ホームで最後の暮らし、かあ。
『まあ、お互い独身なら問題はないのか、一応……』
「なんかね、おばあちゃんが惚れ込んでる感じで、栗田さんはおばあちゃんのためなら何でも頑張る! って感じだったな。実際それでおばあちゃん助かってて幸せなんだから、俺が言えるのはよろしくお願いします、くらいだよね」
『それもそうだなあ』
ワシはハムエッグにかぶりついた。
「あ、そうだ、組紐ありがとうね、おばあちゃん喜んでた。問題ないって言うから手首に結んできたよ」
『うん、まあ、お守りの出番ないのが一番だけどな』
ワシは頷いて、それから少し気になった。そんなお祖母ちゃんたちに、こいつ、ワシのことどう説明したんだ?
『ワシのこと、おばあさんにはどんな風に話したんだ?』
「え? えーっと」
祟ってる奴は少し戸惑った顔をしたが、嫌がりはせず話しだした。
「普通に、前にした千歳についての紹介は、全部本当だけど別に恋愛関係ではないよ、って。あと、千歳がどんな人がある程度言っておかないと安心してもらえないかなって思って、千歳は俺が偶然会った霊能力者で、家庭事情が複雑なのと性別が曖昧なのとで中学生くらいまで閉じ込められてたけど、今は別の家に仕事とか世話してもらって、そこんちの養子になってますよ、って話した」
『ふーん』
大幅にいろいろ端折ってる気はするけど、まあ、間違ってはいない。
『そんなふうに説明されると、なんかワシ、すごく苦労した奴みたいだなあ』
「してるだろ、苦労。その割に千歳は明るくて元気だなって思ってるよ、俺」
そうかな? うーん、でも、ワシいつもモリモリに元気だし、性格も暗くはないかも。
『うーん、まあ、そうかも……いや、今の説明で、おばあちゃんに安心してもらえるもんか?』
だいぶ波乱万丈な人生の人間に聞こえるけど? そんなのが孫息子と同居してて安心なのか?
「あー、その……おばあちゃんには、「豊ちゃんが幸せならおばあちゃんはそれでいいからね」って言われた感じ」
『ギリ及第点って感じだな』
まあ、おばあさんが生きてるうちにこいつが彼女連れていければ、もう少し点上がるかもしれないけど……。
サラダを頬張ってから、ワシは別のことに思い当たった。
『ん? なんか話の流れからすると、お前今幸せですってことになるけど』
そう言うと、祟ってる奴はなんだか照れくさそうにした。
「あ、その、まあ、そう。すごく幸せに暮らさせてもらってる、その、千歳のおかげで」
『え、そうなのか!?』
いや、まあ、確かに、最近はそんな不幸そうには見えなかったけど。嫁も子供もいないのに、幸せなんだ、こいつ。
祟ってる奴はハムエッグのせ食パンをかじり、言った。
「だってさ、いろいろかまってもらえて寂しくないしさ、家事やってもらえて毎食おいしいもの作ってもらえてさ、仕事もとりあえず困ってないしさ、友だちもできたしさ、おばあちゃんともちゃんと話せたしさ、すごく幸せだよ、今」
『へえー』
そっか、そう言われると、こいつ割と幸せなのか。まあ会った時に比べればそうなのかな、会った時割と終わってたもんな。
こいつの今みたいに穏やかな顔、会ってすぐだったら、見られなかった気がするし。
そうか、今幸せなら、とりあえず、こいつが人生投げる心配ないかな。
でも。
『お前、それですごく幸せなんじゃ、彼女できたり結婚したり子供できたりしたら、もう幸せすぎて爆発しちゃうぞ?』
「爆発!?」