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第50話 ムルデの街へ ~フォルトナサイド~

目の前に大きな氷のドラゴンが出てきたと思ったらさー。

マリーがしゃしゃり出て、倒そうとしたけど、倒せなくてー。

アグリが助けに入って、苦戦しているな―と思ったら……

なんか剣とか兜が光りだしてー。

光ったなーと思ったら、ドラゴンが真っ二つに割れていたんだけどー。

というのがここ最近の流れなんだけど……


「ボクの出番がほぼないってどういうこと?」


確かに戦いには参加してなかったけどさ。


「出番ってどういうことかな。

 そういうメタい話は、欄外でやってよ」


アグリがなんか言ってきたけど……


「何、その『メタい』って言葉!

 何言っているかわからないし」


分からない言葉を聞いてさらにいらつく。

もっとわかりやすく話してくれないかなー。


「ごめんごめん。

 出番というか、あのドラゴン相手だとフォルトナが戦うのは難しいし、

 後ろで控えていたので正解なんじゃないかな」


そう言われるとそうだけどさ。

ボクに何も出来ることはあの場ではなかったのは確かだけどねー。


「ムルデの街までの案内はよろしく頼むよ。

 その辺りの情報は持っているんだろ?」


アグリはボクを道案内としか思っていないのかな。

確かにムルデまでの道のりの情報は母さんに聞いているからわかっているけどさー。


「ボクは道案内だけじゃなくて、もっと他にも頑張れるんだから。

 そっちも頼ってほしいなー」


ちょっと気持ちが収まらないのでグチグチと文句を言う。

アグリは苦笑いしながら


「頼るところはきちんと頼るから。

 機嫌直してくれ」


とボクのご機嫌を取りに来た。

まぁ、そこまで言うなら、仕方ないなー。


「わかったよ。

 ちゃんとボクにも役割ちょーだいね」


そうアグリに言うと、先頭にたちムルデの街の方へ向かっていく。

アグリは慌てた様子で、ボクの隣に並んできた。

ゾルダとマリーは、後ろについてくるようだ。

マリーは相変わらずゾルダにベッタリしているなー。


「そう言えば、ムルデの街というのはどんなところなの?」


アグリがこの後向かうムルデの話をしてきた。


「ボクが聞いている話だと、なんかとても栄えていて、

 人も温厚で、活気があるって聞いてるよ」


「へぇ、そうなんだ」


アグリはうなずきながらボクの話を聞いてくれた。


「ただ、一部の商人や役人以外は、ムルデの街への出入りは出来ない状態なんだ。

 街の人たちも、居心地がいいのか、誰一人として街を出る人はいないんだ」


母さんたちも、許可をとろうとしたり、隠密に入ろうとしたりしたけど、全く入れなかった。

そういう意味では、街の中の情報は聞いたことの内容ばかりしかないんだけどねー。


「鎖国している街なのかな……」


アグリが腕を組みながら考えている。


「さ……こ……く?

 『さこく』って何?」


アグリの言葉がよくわからなかったので確認をしてみた。


「またわからない言葉使っちゃったかな。

 『鎖国』とは他の国や地域との交流をしないってこと」


どうやら『さこく』はアグリの前の世界の言葉らしい。

こちらの言葉で簡単に言える言葉はないなー。

アグリの前の世界は、そういう言葉を簡単に言う文化があったのかもしれないねー。


「フォルトナ、そういう話だと国王の側近も入ったことがないの?」


アグリが疑問に思ったのか、ボクに尋ねてくれた。


「ごく一部の人は入れたらしいけど、決まった人だけだったみたい。

 その人たちからの報告は、いつも素晴らしい報告ばかりだったらしいよ」


「じゃあ、その報告通りなら、素晴らしい街なのかもしれない。

 そんな街が音信不通になると、国王も心配するね」


アグリはいい街なのかもと思ったのか、気持ち晴れやかな表情になっていた。

ただボクは交流をしないってところは引っかかっているんだけどなー。

そりゃ、報告通りに素晴らしいところだったら文句はないけど、

でも見せないってことはそれなりの理由はありそうなんだけどなー。


「ボクも母さんもよくわからない街ってことだけは確かかなー。

 いい街に越したことはないけどねー」


「見せないってことは見せたくない理由があるからじゃ。

 だいたいそういう時はよからぬことを考えておるものじゃ」


ゾルダが今までの話を後ろで聞いていたのか、話に割り込んできた。

ゾルダはなかなか鋭いところをついてくるねー。


「ゼドっちも、裏でコソコソやっていたしね。

 ただマリーはそんなことしませんわ。

 コソコソやるのは小物だけですわ」


マリーも話に加わってきたけど、、それはちょっと違う話な気がするねー。


「そんな街なら、それこそ中に入れてもらえないかもしれないな」


アグリは急に不安になったのか、考え込み始めた。


「とりあえず国王の命だし、そんなことはないと思うけどなー」


「そうだよね。

 国王の命令だもんね……」


アグリはちょっとホッとしたのか表情が緩んできた。


「入れてくれないなら入れてくれないで、

 ワシがなんとかするから、安心せい」


胸を張ってゾルダが自信ありげな顔をする。


「ゾルダ、それって強行突破だろ?」


アグリはゾルダの性格を知ってか、素早くツッコミを入れている。


「話して、入れてくれないのであれば、正面突破しかないじゃろぅ」


アグリの予想通りの反応のようだけど、ゾルダも当たり前のように自信満々に答えている。


「そこはもう少し考えようよ。

 忍び込むとかさ」


アグリは穏便に済ませたいのだろう。

余計な問題を起こしたくないんだろうなー。


「マリーはねえさまの意見に賛成ですわ

 そんな小賢しいことをねえさまにさせないでいただきたいわ」


ここでマリーが参戦してこなくてもいいのにー。

余計に話がややこしくなるのになー。


「まぁまぁ、とりあえずその時に対応を考えようよー

 どうなるかはボクもわからないし、今から考えても無駄だからさー」


いろいろと策は考えておく必要はあると思うけどねー。

でも、その場でどうなるかわからないし。

出た結論から考えていこうよ。


「そうだな。

 フォルトナの言う通りだ。

 まずは街へ向かってから考えよう」


アグリがそういい、とりあえずこの話はひと段落した。


そんこんな話をしつつ、ムルデの街へと向かって歩いて行った。

天気はアルゲオを倒したこともあって、寒いけど吹雪のようなことはなくなったかなー。

これなら、そんなに時間がかからず着くかもしれない。


雪で覆われている道を慎重かつ早く進みながら、山を下っていく。

しばらくすると雪の量も少なくなり、周りの風景も変わってきた。

そうこうすると、遠くに大きな城門が見えてきた。


「ここがムルデの街の入口だよ」


ボクがそうみんなに伝える。

いよいよムルデの街へ入ることになるんだけど……

まずは城門から先に行けるかどうかは、そこでの話次第かなー。

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