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第126話 砂糖オーラと撃退

「んーっ! 怖かったけど楽しかったぁ!!」


「だな。……で、結局最後のアレ、なんだったんだろうな?」


「ねー! なんか一周回って面白かったよ〜」


 お化け屋敷を出て、由那は笑顔でのびをする。


 終始泣きそうになっていた由那だったが、何回か幽霊役の人に驚かされた後。そろそろ出口も近くなってきたところで俺たちを襲ったのは、謎の死体だった。


 懐中電灯で衣装越しに自分の身体を照らし、ピクピクと痙攣しながら倒れている先輩。隣には血塗られたナイフが落ちていたが、あれは結局何を現していたのだろうか。人を殺しに行って殺し返された人? それとも切腹? とにかくまるで突発的な″何か″が起こって倒れたみたいな感じだ。


 それまでのがかなり本格的で怖かっただけに、最後の謎演出で一気に恐怖の糸が途切れたのだった。というか、由那が隣でずっと完璧なリアクションかましてたせいでそっちに意識がいって、今思えば俺はあまり怖がれていなかった気もするが。


「ふふっ、私ゆーしとなら無敵かも! あんなに昔から怖くて入れなかったお化け屋敷を、こうやってクリアしちゃったんだもん!!」


「……はっ。抱きついてばっかで泣きかけてたくせに」


「んにゃっ!? な、泣きそうになんてなってないよ!?」


「はいはい、強がりもほどほどにな」


「むうぅ!! さっきまで頭なでなでしてくれてあんなに優しかったのにぃ!!!」


 まあなんでもいいか。結果こうして二人、無事に楽しめたわけだしな。


 不満げにぶつぶつ言ってくる由那を静止しつつ、次のクラスを目指す。


 飲食店は既に何ヶ所か回ったので結構お腹は膨れている。行くなら縁日系とか映像を公開しているところか。


 クラス単位の出し物だけでなく部活ごとに出店しているところもあるそうで、確か由那と決めた予定表にはそれも含まれていたっけな。全体的な数が多すぎてもうどれがどれだかほとんど覚えていないけれど。


「ゆーし、次はあそこ入ろ?」


「お、次はなんだっけ?」


「へへっ……あ•そ•こ♡」


 由那の視線の先では、六人の待機列ができている。


 男女二人のペアが三組。待っている間用に設置されたのであろう椅子に座ってイチャイチャしている彼らの後ろにある看板に書いてあるのは「占いの館」の文字。


 何となく、察してしまった。


「お、俺は嫌だぞ。あれの後ろに並ぶの恥ずかしいって!」


「え〜、今更だよぉ。絶対逃さないからっ♡」


「占いなんてその……ほら。結構時間もかかるだろうし、他の優先で行った方がいいんじゃないか? 店の数まだまだあるんだし────」


「……ゆーしは私と相性占いしてもらうの、嫌?」


「う゛っっ!!」


 こてっ、と首を少し横に傾けながら、上目遣いで。由那は寂しそうな声をあげる。


 占いの館なんて予定には入れてなかった気がするが。さてはコイツ……俺が嫌がるかもと思って今の今まで黙ってたのか?


「私はゆーしとの占い、受けたいなぁ。私達が相性悪いわけがないもん。しゅきしゅき同士の甘々カップルになるために、これからのこととかも占ってもらお?」


「こ、これからの……」


「うんっ。だって私……ゆーしとずっと一緒にいたいもん」


「っぐ……んぐっ!」


「ね、行こ?」


「…………はい」


「やったぁ〜〜!!」


 ああもう、そんなこと言われて断られるわけがないだろ。


 クソッ、もし相性悪いとか言われたらショックだから行きたくなかったのに。コイツ怖いもの無しか?


「えへへ。私たちの甘々っぷり、いっぱい見てもらおーね!」


「おま、悪い結果出ても凹むなよ?」


「出ないよっ♪ それにもし出ても、その時は悪い結果なんてかき消しちゃうくらいイチャイチャしてゆーしのこと離さないもんね〜〜」




 どちらかといえば凹みそうなのは俺の方かもな、と思いつつ。廊下を歩く男子たちにまたいつもの如くな視線を向けられながら、イチャイチャ組の後ろに着席して。由那に手をにぎにぎされたまま順番を待った。

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