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第139話 野外イチャイチャお昼ご飯2

 すぐにお弁当の入った巾着的な物を持って戻ってきた由那に連れられ、階段を一階まで降りる。


 言っていた通りいつもと違うのか、お弁当を包む袋が変わっていた。サイズ感はあまり変わらないように感じるけど。


「それで、結局どこ向かってるんだ?」


「まだ内緒〜。もぉ、そんなに焦らなくてもすぐに分かるよっ」


 分かるよっ、と言われても。


 俺たちは今、明らかに教室が並ぶ場所から離れて行こうとしている。


 一回の端の方まで来ると店は開かれておらず真っ暗に消灯されているところがほとんどで、何ならまだ入ったことのない場所ばかり。


 校舎のそんな一階の端へと向かい、別の校舎への渡り廊下を経て。どんどんどんどんと一番賑わっているところから離れていくと、周りにほとんど人のいないそこで由那はようやく立ち止まった。


「ふっふっふ。ゆーし、私は文化祭の時もすかさず好き好き発作が出たら二人きりになれるよう、場所をあらかじめリサーチしておいたんだよぉ。その結果なんと、この文化祭当日限定で何箇所かに休憩用のベンチが設置されてることを知ったの」


「ほ、発作……。てか、臨時のベンチなんかあるのか。俺全然知らなかった」


「でしょぉ! だけどこのスーパーエリート由那ちゃんにかかればそんなマル秘情報もお手のもの!! えへへっ♡ ここの裏庭、普段は誰も行かないような場所だから多分、ベンチが置かれることにすら誰も気づかないよっ。どう? ゆったりイチャイチャするには最高の場所だと思わない!?」


 褒めて褒めて、と言わんばかりに。由那は顔をグイグイと近づけながら凄いでしょうアピールをしてくる。


 いや、本当に凄い。こんな所にベンチを置くなんて情報、どこから仕入れて来たんだか。


 確かに言われてみれば、ここから見える限りでも運動場と渡り廊下の間とかに長めのベンチが置かれている。全く意識せずに歩いていればそれにすら気づかない奴も多いだろうに、まさかこんな校舎の裏庭にベンチが置いてあるなんて誰も想像はつかないだろう。


 本当に穴場だ。そんなところに何目的かも分からないベンチを置いてくれた事務員さんにも、そしてそれを見つけてくれた由那にも感謝だな、と。俺は素直に感心して差し出された頭をよしよしした。


 この先なら気兼ねなく由那とイチャイチャできそうだ。まあ多分誰も来ないだろうし、思う存分由那成分をチャージさせてもらおう。今日はまだキスも出来てないしな。


「よぉし、じゃあ早速行こ! 上履きにはちょっと土付いちゃうかもだけど、あとでちゃんと払えば問題ないよね!!」


「だな。最近暑くなって来たけどそこなら結構涼しく過ごせそうだし。本当、いい場所見つけてくれたな」


「くっふふ。感謝の気持ちは甘々イチャイチャでお願いしますよ彼氏さん。たっぷりのご褒美待ってるから!」


「任せとけ。死ぬほど甘やかすからな」


 開かれた会話をしながら、廊下を少し出て。コンクリートの地面の上を歩いて校舎裏へと向かう。


 だが俺はこの時、違和感を感じておくべきだった。


 よくよく考えたらまだ一年生の由那のみが知り得る情報など、早々無い。その上、由那に情報を教えた奴がそれを伝えたのは、由那にだけではないのかもしれないということ。


 そして情報を伝えた奴がそもそも一人しかいないとは、限らないということに。


「ね……寛司。その……もう一回キス、してもいい?」


「勿論。目、瞑った方がいい?」


「うん……」


 ザッ、ザッ、と土が擦れる音を鳴らしながら、俺より一足先に校舎裏へと向かった由那は。その場でカチンッ、と固まって一点を見つめている。


 何事かと思い俺もそちらへ視線を向けると。その瞬間────戦慄した。


「………………っわ!?」


 俺は咄嗟に由那を連れ戻し、その場から立ち去る。


 よりによって先客が中田さん達だとは。幸いこちらに気づかれなかったからよかったものの、気づかれていたらどれだけ気まずいことになっていたか。


「ゆ、ゆゆゆゆーし!? あ、あれっ!? 有美ちゃ……エッ、なキス、自分から!?!?」


「ば、バカ声でかいって!! いいから移動するぞ!!」





 全く、とんだハプニングだ……。

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