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第3話 王都のガラクタ街

 ガラクタ街……って言い始めたのは誰かは知らない。

 ドラグニティ市場の中で、中古品や他の店が引き取らないような物が売買されるようになったことでその名が付いたらしい。

『ラスト・オブ・ファンタジア』でも、このドラグニティ市場では生産職系のプレイヤーが露店を大量に出してて、通過するのも一苦労の描画が激重な場所だった記憶がある。

 こっちの世界もそれは同様で、色んな商人がそれぞれ露店を開いて、様々な物の売買を行っている姿が目に飛び込んできた。

「とりあえず、昨日柊斗さんから頂いたメモには『弱火の魔石』と『吸水の魔核』と『発火の精霊糸』と『小さな歯車心臓』、『青の魔結晶』ってありますけど。依頼品を作るにはこれだけで足りるんですか?」

「ああ、たぶん。揃えば俺が考えた魔導具になると思う」

「でも、どれも中古品なんかで出回らないんじゃない? ほとんどお金にならない下級の素材ばっかだし。お金にならない素材は売らずに捨てちゃう人が多いし」

「だろうな。かさばる割に売れない品って冒険者も依頼でない限り持ち帰らないからな……。中古品の魔導具を分解して手に入れるって手段もあるんで、そっちも探しておきたい」

 この世界は魔導具という物が普及しており、魔石、魔核、精霊糸、歯車心臓、魔結晶という五種パーツの組み合わせ使って、魔力を発動原動力として使用する道具がある。

 それぞれの機能を説明させてもらうと。

 魔石→精霊糸から供給される属性付き魔法力を使って、属性効果に変換し、周囲に影響を与える効果を決める出力機器。

 魔核→魔石の効果を増幅したり、拡大したり、別の属性に合成するための機器。

 精霊糸→歯車心臓で変換された魔法力に属性を付与し、魔石や魔核に送り込むための回路。

 歯車心臓→周囲に影響を与えない魔力を、周囲に影響を与える魔法力に変換する機器。

 魔結晶→使用者や外部からの魔力を充填しておく機器。

 てな感じで、魔導具は構成されている。

 魔導具の使用用途は広く、魔法を行使するための道具だけでなく、俺が居た世界における電化製品といった感じの物が作れられており、生活に密着した道具でもあった。

 魔導具のおかげもあり、俺も日本に居たころとほとんど変わらない快適な生活が送れているのだ。

「その五つを使ってる中古品の魔導具……。それもけっこう見つけにくい気がするけど」

「『弱火の魔石』と『発火の精霊糸』と『小さな歯車心臓』は、初心者の使う魔法の杖とかに使われてるはずだから、すぐに見つかると思うが。問題は『吸水の魔核』と『青の魔結晶』だな」

 水を貯め込める『吸水の魔核』は、これらを落とす魔物が少ないため、流通量自体があまりにない。

 水を貯め込めるだけなので、使い道もあまりなく、水がない場所で水魔法を使うためか、水不足の土地に水を運ぶ魔導具くらいしか利用された実績がない。

 そのため売値が低く、さらに大きくてかさばる品のため誰もが持ち帰らない品物だった。

 そして、『青の魔結晶』の方は、充填できる魔力量が多いが、歯車心臓に送り込める魔力量が小さい、低出力であるため長時間使えるバッテリーである。

 今回の依頼品を作るには、この二つの中古品を探し出さねばならなかった。

「では、まずは『吸水の魔核』と『青の魔結晶』を探してみましょう。他にもよさげな物は仕入れておいた方がいいですよね?」

「ああ、何が必要になるか分からないからな。希少なものがあったら買っておきたい」

「あたしとお姉ちゃんに【鑑定】はできないから、見つけたら『風信樹ふうしんじゅ』で柊斗を呼べばいいね」

『風信樹』は風の精霊を介し、遠くの人と会話する携帯電話みたいな魔導具である。

 距離が遠ければ遠くなるほど、消費する魔法力が跳ね上がる仕様であるため、あまり離れた場所で会話を続けるとすぐに魔結晶の魔力が枯渇する品物だ。

 けど、短距離ならそこそこ持つため、王都内ならと使用制限をして膨大な魔力を持つレイニーに持たせている。

 ちなみに一つで20万ガルドほどする超高価な魔導具だ。

 最初こそ、レイニーも金額を知ってて恐る恐る利用してたが、最近では朝のモーニングコールに利用するまでに進化していた。

「ああ、いつも通りそうしてくれ」

 シェイニーやレイニーが頷くと、ガラクタを並べた露店街の中に消えていく。

 無事、目当てのものが見つかるといいんだが……。

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