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生と死と 2

「ううぅ……、寒いー」


 ルーは厚着をし、帽子もいつもの三角帽ではなく、毛糸の帽子を被っていた。


「裏の道具の反応はここから北にあります」


 ユモトはそう言って歩き始め、その後をムツヤ達も付いていく。


 途中の魔物はムツヤが適当に蹴り飛ばし、反応まであと僅かと言った距離になる。


 そこでムツヤ達は、目の前の光景を見てとっさに身を隠した。


「誰かいますね」


 モモが白い息を吐きながら小声で言う。


「黎明の呼び手の連中かもしれないな。ムツヤ、声を集める魔法だ」


「わがりまじだ!!」


 ムツヤの魔法によって皆がいる場所に会話が流れ出す。


「こちらが、ルクコエ様です」


「あぁ、あなた様が……」


 ルクコエと呼ばれる者がリーダー格かとアシノは推測を立てる。


「えぇ、そうです」


「お願いします。私に永久の安息をお与え下さい!!」


「良いでしょう。辛かったでしょうね。今、楽になりますからね」


 次の瞬間、ムツヤがハッと驚く。


「人の気配が……、1つ減りまじだ」


「なっ!!」


 アシノはこの会話とムツヤの言葉で察する。


「このルクコエって奴。目的は不明だが、人殺しだな」


「えぇ、そうみたいね」


 ルーも同じ考えをしていた。それを聞いてムツヤが飛び出でようとする。


「待てムツヤ!! まだ相手の能力がわからない!!」


「でも、人殺しはダメです!! 止めないと!!」


「そうだが、今は待て!!」


 ムツヤは悔しそうな顔をしてアシノの言葉に従った。


「ムツヤ、相手の生命を奪う裏の道具はあったか?」


「人に使ったことはないでずが、魔物相手にだったらありまずけど……」


 歯切れが悪そうにムツヤは続ける。


「沢山ありすぎで、わがりまぜん」


「そうか……、まぁそうだよな……」


 アシノは腕を組んで言う。また洞窟からの会話が流れた。


「ルクコエ様!! 私も、私もこんな辛い人生は散々です!! どうか死をお与え下さい!!」


「えぇ、わかりました。安らかなる死を……」


 また人の気配が消える。


「死んでいく奴ら……、自分から望んでいるのか?」


「わからないわ、心を操られているかもしれないし……」


 悩む暇も無く、次の者が名乗りを上げた。


「お、俺も!! 俺もお願いします!!」


「このままじゃ犠牲者が増え続けるな」


 アシノの言葉にムツヤは居ても立っても居られなくなる。


「俺が、俺が止めに行きまず!!」


「待て、ムツヤ!!」


 アシノの静止も聞かずにムツヤは飛び出す。そんな彼を仲間達も追う。


「お前!! 今すぐやめろ!!」


 ムツヤがそう叫ぶが、目の前の人間はガクリと倒れ、絶命する。


「くそっ!! 何が目的なんだ!!」


「あなた達は……。勇者アシノ?」


 ルクコエと呼ばれていた女性は長い黒髪に白いローブを身に纏っていた。


 黎明の呼び手のメンバー達は武器を構え、ムツヤ達と対峙する。


「私は死を望む者達に死を与えているだけです」


「そんな事!! 許されるわけがないだろ!!」


 ムツヤは怒りをあらわにして言う。


「何故ですか?」


 ルクコエは冷たい顔をして問いかけた。


「人を殺して言い訳がない!!」


「この者達は自ら死を望みました。私はその手伝いをしただけです」


 その言葉にムツヤは勢いで返す。


「だからっで、だからっで、そんなのはダメだ!!」


「何故、ダメなのですか?」


「それは……」


 ムツヤは言葉に詰まってしまった。その間もルクコエは続けた。


「悪いのは私ではありません。この者達が死にたいと思うこの世界です」


 それを聞いてルーが言う。


「それで本当に殺しちゃうのはあなたのエゴよ」


 ルクコエはフッと笑って言葉を返した。


「死にたいものを無理に生かす方が残酷ではありませんか?」


 シンと静まり返った中でムツヤが叫ぶ。


「それでも、それでも、ダメだ!! 俺が許さない!!」


「お話になりませんね。そんな感情論こそ本当のエゴです」


 そう言うと同時に黎明の呼び手のメンバーがアシノ達に襲いかかる。


 ムツヤが圧倒的な力で一人ひとり倒し、吐かれた血で白い雪が赤く染まった。


 仲間達の出る幕は無く、ルクコエを睨み続けるだけだ。


 黎明の呼び手を蹴散らした後にムツヤがルクコエを見て言った。


「降参しろ!! 後はお前だけだ!!」


「しませんよ?」


 ルクコエがニコリと笑い、杖を掲げる。すると喪服に身を包んだ半透明な女性が現れた。


 それはムツヤに向かって一直線にやって来る。


「まずい!! ムツヤ避けろ!!」


 アシノに言われた通り、ムツヤはそれを飛び退いて避けた。


「あなた達にも死をお与えしましょう」

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