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第七話 演目 説明はしますけど、ある程度の理解力は必要ですよ?

 手紙からいずみからの一方的なメッセージ、現状を解説してくれるようだ。

 縁と絆は気付いており、風月は自分の考えた答えと、合っているか気になるようだ。


『風月さんは大丈夫でしょうけど、解説や説明って相手の理解力に委ねる部分が多いんですよ』

「私も学校の先生してるからさ、言いたいことはわかるよ」

『出来るだけ短く説明しますね、長くなると混乱しますし』

「はい、お願いね~」


 いずみはメガネをクイッとして、意気揚々と解説を始めた。


『簡単に言えば全て色鳥さんの手の上ですよ』

「それってつまり、いずみの様に先が見えてるって事?」

『いえいえ、私よりも凄いですよ! 色鳥さんは体格、喋り方、声質、身なり等々で人の行動を予測とかします』

「ほえ~洞察力が高いって事ね」

『今回の流れを解説いたしましょう! そこの憑依が解けた男に注目ですよ!』


 いずみはビシッと、娯楽に憑依していたあろう男を指差した。

 自然と皆の視線はそちらに行く、今だに地面で苦しがっている。

 憑依が解かれた娯楽は気絶していた。


『そこで苦しがっている男が娯楽さんに憑依しました、何故娯楽さんだったかとかは、たいした理由ではないので省略します、あ、ちなみに娯楽さんは世捨て人で、近くの村に食料を貰う代わりに荒事を代わりにしています』

「ほ~」

『憑依して色鳥に喧嘩を売ります、この時に色鳥さんは憑依した男……鈴木友道すずきともみちさん、異世界転生は楽しいですか?』


 苦しがりながらも、鈴木友道は驚いた顔をしていた。

 もはや唸り声は出せても、喋れないようだ。


「あ、こいつ異世界転生者なんだ」

『ええ、隷属の神でしたか? 縁さんに戦いを挑んだおバカさんの残党ですよ』

「なるほど、七星了司ななほしりょうじに拾われたと」

『はい、ま、それは置いといて解説の続きをしましょう』

「よろしく~」

『色鳥さんはわざと負けましたね』

「だよね~それこそ遊んでたんでしょ?」

『鈴木友道さんと色鳥さんがどんな会話をしたかは……説明をすると長くなりますので簡単に言いますね』

「お願い~」

『一つ、俺の能力を奪うなら、それは貸すになる、二つ、その貸す期間はお前が縁と結びが同時に会うまで、三つ、返して貰う時の対価はお前の命……ですかね』

「ああ~簡単に言えば、契約書を見ないでサインしたみたいな?」

『はい、隷属の神が呼んだ異世界転生者は、皆さんお花畑ですので……貰った力を過信しているんですよ』

「ま、そういう風に教育されたんならさ、仕方ないんじゃない?」


 少し前に縁に喧嘩を売ってきた隷属の神。

 名もない神が信仰心を高める為に、異世界転生を行った。

 神の手駒にしやすい人間を選んだ結果、承認欲求の塊の化物が生まれる。

 まともな考えを持った人間は少なかった、だからほぼ滅んだ。  


「あ、でも、私達が遊びの加護の影響を受けていたのは?」

『色鳥さんの遊び心ですね、本気で殺し合いなんてしないでしょ?』

「当たり前でしょ、手合わせでもしたくない」

「俺もだ、殺し合いに発展する前に話し合う」

『おっと、イチャイチャする前に私のお話を終わらせましょう』

「……いずみ、憑依していた者が消えているんだけど?」


 絆が指差した場所に、鈴木友道は居なかった。


『ふむ、契約……というかルールに乗っ取り、色鳥さんの所に遊びの加護は戻ったのでしょう』

「なるほどね~不思議だね~あ、いずみって加護の説明をちゃんと出来るの?」

『ええ、出来ますが……知りたいですか? 面白くないですよ?』

「……あ、なるほど、手品がワクワクして見れないのと同じかな?」

『感覚的にはそれに近いですね、私も説明と解説の加護を貰った時は……最初は楽しかったですよ?』

「あ~知らない事がワクワクするよね、でも全て知ってるってつまらないよね」

『はい……では、このくらいにしておきますか、私の加護を奪った人物には気を付けてくださいね』

「逆に楽しみだ、いずみ」

『あら、縁さんがそう言うとは珍しいですね』

「知識は正しく使ってこそだ、俺に……いや、俺達に対抗出来る知識を見せてもらおうかなと」


 縁は珍しく黒い笑みを浮かべている。

 兄に続き絆もニヤリと笑っていた。

 風月はへらへらと笑っている。


『縁さん達、随分と悪い顔をしてますね』

「当たり前だ、親友いたぶられて黙ってられるか、色鳥はともかくお前は重症だろうに」

『ですが私と約束したように、遊んであげて下さい』

「ああ……お前の知識を使って、神にあらがえるか見てみるよ」

『報告が楽しみですね』


 魔法陣が消えると、手紙も一緒に消えてしまった。

 風月はやれやれと首を降っている。


「……てか本当に一方的なメッセージ? 普通に会話していたよね?」

「それがいずみの怖い所だ」

「ではまいりましょうか、お姉様、お兄様」

「ああ、待って待って、娯楽をちゃんと寝かせてあげよう」


 風月はささっと娯楽を、近くのボロ小屋へと運んだ。


「じゃ、行こうか」

「ああ」


 その場から3人が居なくなる。

 いずみの能力を奪ったのであれば、全て知っているだろう。

 だが知ってるからと言って、縁達に勝てるかは別である。

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