縁と絆とサンディは手分けをして、施設の停止をしようと機械を操作していた。
「お前と2人は久しぶりだな」
「昔は一緒に暴れまわってたな」
「あの頃は楽しかった、人前では言えないな」
「俺もだ、人殺しの毎日だったが」
2人は黒い笑みをした、人を殺すのを楽しみにしている。
目標のために何年も積み重ねて、誰にも否定はさせない。
殺伐とした人生の詰め合わせ、そんな顔だった。
「おいおい、恋人にそんな顔をするなよ?」
「生徒の前でそんな顔をするなよ?」
「新入生には驚かれるが、在校生は慣れられたよ」
「それは何よ――サンディ、絆、良き縁を持つ者の危機を感じた」
「おっけ、手を貸すぜ」
「参りましょう」
縁が感知した場所、そこでは分かりやすい場面だった。
腹部の傷を左手で倒座っている男、右手は無い。
数体の化物達と、その背後に居るスーツ姿の男達だ。
怪我をしている男は、ボロボロのスーツの間から見える包帯。
おそらくは全身包帯なのだろう、左手は包帯を巻いていない。
そして包帯の隙間から見える目は、敵を睨んでいる。
「はっはっは! 『解説魔法のシン』と呼ばれたお前もここまでだ」
「泣かせる話だぜ、切り落とされた右手を探しに来たとはな」
「ま、てめぇはここで終わりだ……」
「くそ! こんなつまらねぇ! つまらねぇ死に方は!」
化物達は腕を振り上げる、包帯の男の絶体絶命、どう考えても助からない。
介入出来るなら神、だが救うにしても価値があるかどうかだ。
「死――」
「さっさとしないとこうなるぞ?」
一瞬でサンディが、包帯の男以外の生きてる命を刈り取った。
目にも止まらない、風月に近い速度、体術、音、そして身体が弾けた。
「なっ! なんだ!? はっ! あ、あれはまさか! 界牙流!? それに絶滅演奏術と……しかしあの内部の破壊は
包帯の男は突然考察を始めた、そしてその顔は包帯でもわかるほど驚き、声色は楽しそうだった。
「第70代目、
「解説どうも、あたしのマイナー流派知ってるとはね」
「大丈夫ですか、この宝玉を握って下さい」
遅れてきた縁は、鞄から宝玉を取り戻して男に握らせた。
絆は特に慌てもせずに歩いてくる。
「こ、これは通称回復の宝玉! 正式な名前が無い、回復の神の道具の一つ! 物にもよるが、時間内の怪我はなんでも治すとか……って! あんたは
「え、ええそうですが……」
「理由はどうあれ、命を助けてもらったんだ……自己紹介するぜ」
男はゆっくりと立ち上がると、斬銀の様な大男だった。
少し下を向いて縁達を見ながら、タバコを吸い始める。
「俺はこの街に昔から住んでいる……裏の人間ってやつだ、名前は
「お、昔この街を支配していた人間……の部下だった人じゃないか」
「サンディ、詳しいのか?」
「お前覚えてないのか? 科学寄りになる前はこの町は魔法の街だったのさ、悪人の街には変わらないがな」
「……昔に来たことあるのか」
「私はしりませんわね」
「魔法が科学に負けて……俺達のシマは小さくなっちまった」
「なら何で敵の本拠地に単独で? 殴り込み?」
「俺の腕を取り戻しに――」
「お兄様、今死ぬのに不釣り合いな者達を感じました」
縁は目をつぶり何かを感じ取った。
「……これは響山さんに付き従う者達の縁か」
「まさか俺の部下がここに来ちまったのか!」
「絆」
「承りましたお兄様、手助けしてまいります」
「おそらくこの人の部下が外の化物達と戦っている」
「ええ、位置を感じ取りました」
「待ってくれ!
「あら、神の名を知っているとは……お兄様は有名ですけども」
「こいつを持っていってくれ、言葉いらずで信用する」
「お借りいたします」
響山はポケットからペンダントを取って絆に投げた。
縁は何かを見定め様に響山を見ている。
「ふむ、なるほど、大昔に全身大怪我をした、そこから包帯生活が始まったが……子供が産まれ時がたち、手を治さないかと言われたと」
「……流石は神様だ、隠し事はできねぇな、その通りだ」
「縁、人の縁を勝手に」
「俺に似合わず頭のいい子に育った、赤子を抱いた時には包帯生活だった、学校行事も俺が裏社会の人間だから参加出来ない……それでも父としたってくれた! そして! 手だけでも治さないかと子供達が言ってくれた! 孫を撫でる時に……他人……との握手……くっ……くうぅ」
響山は徐々に声が大きくなり、泣きながら自分の想いを口にした。
タバコが口から落ちる、それを携帯灰皿へと捨てる。
この人物が子供に対して愛情が深いことがわかる。
そして縁や絆が、それを見捨てる様な神ではない。
「素晴らしき親子愛だ」
「ああ、そんな話を聞いて助けない訳にはいかないな」
「そいや……あんた達は……『外道殺しの神を真似る裁き』って名乗ってたな」
「ぐっ……これが黒歴史」
「昔のあたし達のネーミングセンス」
「善も悪も行き過ぎれば外道になる、俺はあんた達のファンでね、俺も悪人だが忠告通り、汚れちゃいけない部分だけは汚さなかった」
「あ……もしかして、昔会った事あります?」
「ああ、あの時はあんた達に、親や仲間達を殺されたけど……神様、あんたの言った通り、ちゃんと身の丈にあった生活、縁も大切にしたぜ」
「思い出してきた、昔忠告したお兄さんだ」
「ああ、私も思い出した」
縁達はピンとした顔で響山を見ると、彼は再びタバコに火を付ける。