ロビーに帰ってきた一行は、壮大なエフェクトと共に歓迎された。
花火やらライスシャワーやら、とりあえず縁起物が飛び交うカオス。
ロビーの観客達はテンション高めで狂喜乱舞していた。
「お帰り縁! 結びちゃん!」
「やっぱ界牙流です、設定が一味違う」
「噓偽りなく直ぐに終わったな、それでこそ界牙流」
「一本槍さん強くなり過ぎじゃね?」
「いやいや落ち着けよ、今までのロール見る限り、一時的にとかじゃね?」
「確かに、彼がインフレする時は、必ず何かあったな」
「東洋さんかっこいいー!」
「私は斬銀さん派、おもしろおじ様いいじゃん」
もうそこからお祭り騒ぎ、いや既にお祭り騒ぎだが。
縁と結びのこれからを祝う者、椰重推しの者。
一本槍達とのシナリオを提案する者と様々だ。
だがこれらは彼らが特別だからではない。
レアスナタのプレイヤー達は、当たり前の様に他のプレイヤーをねぎらう。
オンラインゲームだからこその人との関わり合い。
ネットマナーを徹底してるゲームだからこそ、気軽に他者と絡めるのだ。
縁もとい長谷川達は、カオスな空間から解放されたのは深夜だった。
これは仕方ない、楽しい空間はズルズルといてしまうものだ。
とりあえず長谷川達は、コンビニで買い物をして帰宅した。
「いや~ロビーは大賑わいだったね~」
「自分のキャラクターがあそこまで祝福されるとは」
「珍しい事ではないじゃん、何かとプレイヤーの人達ってファン多いイメージ」
「とは言え、自分達が祝福されるとびっくりさ~」
「有名になりたくねー静かにゲームしてぇー」
「いやいや、直ぐに収まるでしょ? この間だって長く続かなかったし」
「ああ……そいやそうだな一週間も無かったか」
最初のブームは、縁を拝めばリアルの縁結びが上手くいく。
そんな少々オカルトじみたものだった。
だが現実は小説より奇なり。
本当に上手くいく人達が続出したが、それも次第に収まっていった。
正しくは長谷川達に迷惑をかけたくない、という気持ちだろう。
ネットマナーが出来ていれば当たり前の話だ。
「さてさて長谷川君、次の縁は何を目標にするんだい?」
「うむ、ゲーム内で結びとイチャイチャだ」
「いやん」
「……いや、考えたら縁と結びはデートらしい事してない」
「ああ確かに、何時も殺伐としてたね~」
「そこでだ、二人っきりとはいかないが」
「いかないが?」
長谷川は立ち上がり、小さい引き出しから、招待状が入っていそうな手紙を見せた。
そこから何かの券を取り出して、荒野原に渡した。
「レアスナタVR遊園地、四人一組招待状だ、アミューズメントルームご招待だな」
「んん!? これあれだよね? この間言ってた、特別なルームで遊園地気分が楽しめるやつ、これどしたのさ? いや確か最低プランが一日三万する高級ルームやん」
「斬摩さんがプレゼントしてくれた、社員特典で手に入れたとか言ってたけど」
「これは有難く頂戴するとして、お返し考えないと」
「ああ、」
「んで他に誰を連れて行くの?」
「妹夫婦でいいかなーと」
「なるほど、あ、期限は?」
「今年中だから大丈夫、予定は合わせられるだろう」
「おおー」
「これは、縁と結びのイチャイチャの第一歩な訳ですな?」
「リアルの俺達もな」
「げっへっへ……うひひ」
そう、リアルでもゲームでも2人のイチャイチャは、これから始まるのだ。