めちゃくちゃキラキラした顔をしながら、ごきげんの絆。
縁達も絆が楽しそうで何よりといった顔をしている。
「絆ちゃんホクホクだね」
「妹が楽しそうでなにより」
「あ! あれは! ゲーセンで稼働している、未来緊急ロボ!
突然鏡が声を上げた!
その方向を見てみると、看板にロボットアニメのキャラクターが描かれてていた。
ぱっと見、熱い魂を持ったロボットと少年の友情の物語なのだろう、と思わせる。
「鏡君、それはいったい?」
「むむ! 結びの姉さんは知らないか!? 説明しよう!」
「あ、これ早口になる、鏡にそれ言っちゃダメだ」
絆の呆れた顔をよそに、早口解説をしだした。
「未来緊急ロボ、確実参上発火印とは平成時代にひっとりとOVAして、一部の人達しか知らなかった! ネットはまだ浸透してなかったし、アニメ見放題などもお手軽ではなかった! そんな時代の名作なんだ!」
「ふむふむ、内容は?」
「実に単純明快! ほうき星という名前の惑星に、突然現れた謎の機械生命体! ブラックホール軍だった! 奴らの目的は主人公! 星々ひかるの抹殺だった!」
「ほうほう、その理由は?」
「未来の世界でひかる君は、ブラックホール軍に対抗出来る兵器を次々と開発する!」
「なるほど、そりゃ狙われるね」
「少年時代のひかる君を助ける為! 未来からやって来たのが発火印だ! ちゃんと自立思考で喋れる! 無論作ったのは未来のひかる君だ!」
「ほうほうほう、全何話?」
「六話だ! 圧倒的に話数が足りてないが、まとまっていると思う!」
「それくらいの長さだと……ブラックホール軍は、最後の抵抗で過去に向かったとか?」
「おお! 流石姉さん! その通り! 当時の小説版ではじっくりとやっていた! ぐっ!」
傍から見れるのは、鏡がこの作品のガチファンという事だ。
誰しも自分の好きな話、そして相手が聞く態勢ならば早口にもなるだろう。
「はっは~ん、アニメ最終回のセリフわかったぞ」
「な、何!? 視聴していないのに!?」
「おそらく全6話の中でも、少年とそのロボは友情を育む、そして別れ際に、涙と共に僕は君を絶対造るからな! それの返答が、ああ! 星々ひかる博士……かな?」
「あまり間違っていない! ほぼ合っている!」
「お、当たった、何か面白そうだからみてみよ~」
「おお! 同志がまたここに! 今なら森山ボックスのサブスクで見れる」
「なるほど」
「てな訳で皆! 俺はあれに行きたい!」
鏡は超嬉しそうな声でその場所を指さした。
もう遊園地でテンション上がりまくる子供にも負けてない。
「ゲーセンにあるって言ってたけど、どんな内容なの~?」
「ゲーセンにあるのは、基本的にはストーリーモードと、協力モードだ、協力モードにも色々とあるが……わかりやすいブラックホール軍殲滅戦がいいか」
「どんなモード?」
「雑魚兵をただばったばったと薙ぎ払うだけだ!」
「わかりやすいね~」
「さあ! 早速受付だ!」
「は~い、って受付? ゲーセンにあるんだからいらないんじゃ?」
「今パンフレット速攻見たんだけど、ゲーセンにある奴の上位互換らしい、違いは係員さんが説明してくれるらしいぜ!」
「ほほう」
とりあえず少年の様にワクワクしている鏡を先頭に、目的の場所へと入っていった。
建物の中は案外普通で、作品の解説コーナー、ゲームセンターに置いてあるゲームを出来る。
レアスナタ内でのみ体験出来るゲームモードの受付場所等々、早速鏡は受付に移動した。
「いらっしゃいませ! 鏡様、お待ちしておりました!」
「え? 何で?」
「失礼いたしました、順番に説明いたします」
「あ、お願いいたします」
「何時も森山ボックスのゲームをご愛顧いただきありがとうございます」
「いえ、こちらこそ」
「感謝の気持ちを込めて、プレミアム招待券の鏡様には、最高の体験をして頂きたく、勝手ながら準備させていただきました」
「え? 俺に?」
「はい、未来緊急ロボ確実参上発火印を、ご愛読ありがとうございます」
「はっ! 俺がここに来る事が!?」
「ああそいや、招待券使う人たちのアカウントとかアンケート書いたな」
「おうおう~そいやそうだったね」
プレミアム招待券を使用するにあたって、縁達は個人情報を書いた。
これは不正使用させない目的もあるが、メインはこのサプライズ部分なのだろう。
「鏡様に特別プランを用意いたしました」
「それはいったい? いやむしろいいんですか?」
「アニメ第五話『確実絶対防衛戦』のアレンジです」
「はっ! ま、まさか!」
「そのまさかです」
「原! 作! 再 !現! いや、俺が介入するからアレンジか!」
もはや鏡は、周りを配慮しないくらいはしゃいでいる。
しかし、逆を言えばそれだけ憂いという事だ。
それを見ていた縁達も、自然と笑顔になる。
「これは鏡君一人で体験するべきだね~」
「だな、俺達は見学していよう、ガチファンの方が楽しめるだろ」
「アニメみてる感じになるかもねー」
「お、なら解説コーナー見てみるか」
そんな話をしていると店員の一人が縁達に近寄ってきた。
「縁様、風野音様、絆様、鏡様の準備が整うまで、私が解説を案内いたします」
「おお、至れり尽くせり~」
「お願いいたします」
縁達は、未来緊急ロボ確実参上発火印の解説コーナーへと向かった。