長谷川はルームランナー型でログインをした。
目の前に映る景色が部屋から遊園地へと変った。
縁の目の前には遊園地の入口、看板も特になくシンプルなデザインだ。
列を作っている入口と、すんなり入れる入口があった。
おそらく列を作っている入口は、遊園地気分を盛り上げる為にあるのだろう。
チケットを係員が確認して、対応している。
よく見れば、遊園地あるある自動改札機のもあるようだ、どれを選ぶのも自由なのだろう。
結び達は入口に集まっていて、テンション高めに話し合っていた。
「あ、縁君遅かったね」
「ああ、俺の担当した人がツレ君で話していた」
「うお、ツレ君何してるの、いやリアルでお仕事か」
「俺と同じ反応だ」
「それは置いといて兄貴! 速くいこう! あ、ロールしながらまわるの?」
「あー……いや、やらなくていいんじゃないか? 多分感動の方が勝つ」
「縁君わかる、始めてレアスナタした時はキャラなんて演じれなかった」
「だね、メニューでいじっておこう」
4人はメニューを開いてパーティーを組んだ。
そして、遊園地のパンフレットを直ぐに出せる様に設定する。
4人は気持ちを抑えきれないらしく、さっさと出入口を通った。
4人の目の前に広がったのは、まさに現実では出来ない遊園地だった。
氷で出来た城や溶岩で出来た家、花火は連射で撃ちまくり。
遊園地の上をジェットコースターのレーンが浮いている。
そして、遊園地の出入口だからか、お土産さんが多かった。
情報量の圧が4人に襲い掛かる!
「うおー! それじゃあ何処から行こうか!」
「あ、皆苦手なものはある~? 例えばお化け屋敷とか」
「お化け屋敷は苦手だな」
「あ、縁君ダメなんだ」
「ああ、怖いと思えなくなるからだ」
「ほう、まあ私も好きじゃないけど」
「俺も好きじゃないぜ!」
「んじゃ兄貴達、あれはどうよ」
絆が指をさしたのは、可愛いおばけのデザインのお店だった。
でかい看板には、絵本に出で来るようなまんまるな可愛いおばけが、餅つきをしている。
「ほう、おばけおもちとな?」
「デザインがファンシ~」
「テーマパークの出入口ってお土産が多いよね~」
「パンフによれば、食事に出してくれるらしい」
「ほう、とりあえず行ってみよう~」
その建物の近くに行くと、ポワン、という音と白い煙と共に、まんまるい身体にシルクハット、モノクルをしたおばけが現れた。
「これはこれは、おはようございます、この工場を案内しています、モチモッチン三世と言います」
「あ、どうもご丁寧に、おはようございます」
「おはようございます」
「おはようございますわ」
「おはよう!」
「この工場では可愛いおばけ達の餅を作る工程を見れます、リアルお土産にもどうぞ」
「へぇ、リアルでのお土産もあるんだ」
「はい、詳しくはこちらに」
モチモッチン三世は、縁達の目の前にカタログを出した。
リアルで食べれる物の解説を動画付き、ゲーム内で使えるアイテム等々。
「おお、美味しそうじゃん~」
「……おお、お客様は『プレミアム招待券』の方々でしたか」
「はい、招待されました」
「お客様は実際に購入出来る物を、五つ、お土産としてお持ち帰りできますよ」
「え! お土産ですか?」
「はい、お帰りの一時間前には選んでください、受付でお渡しいたします、物によっては配送になります」
「わかりました」
「んじゃ、とりあえずここに入ってみようか」
「だね~」
4人はモチモッチン三世の案内で工場の中へ、販売所を通って見学コースの道を歩く。
リアルの工場見学と同じ様に、もちが作られる工程や歴史等々の説明看板がある。
「ここでは可愛いおばけ達が、定番メニューを流れ作業で作っています」
「おお~確かに可愛い」
「一生懸命に作ってるね~」
「定番の味からよくわからん味まであるな!」
「ソーダ味? ……もちでソーダ味? 兄貴が好きそう」
「想像出来ないが……挑戦したくなるよな」
「お、付きたてのもちも食べれるらしい~」
「昼食にご提供でき、作っている所も見学できますよ、設定では彼らが作っているという事になっています」
「見せてもらおう」
「ご案内いたします」
モチモッチン三世の案内により更に奥へ。
そこに居たのは、腕組みをして顔は可愛いおばけで、身体が斬銀の様にたくましいおばけだった。
工場見学の様に遠目ではなく、近くに居た。
見ようによっては、筋肉ムキムキが白い全身タイツを着ている様にも見える。
縁、結び、鏡は予想していた様な顔をして、筋肉ムキムキおばけを見ていた。
「お、兄よ、お客様のようだ」
「そうだな弟よ」
「では2人共、何時もの頼みますよ」
「「行くぜ! 兄弟!」」
筋肉ムキムキおばけは、臼に事前に仕込みをしていたもち米を入れる。
二人は杵を振り上げて、呼吸を整えた!
「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」
凄まじいスピード、振り上げて降ろして、息があった様にもちを時たま素手で織り込む様に中心へ。
「「くぉりゃ!」」
その光景が約15秒程続いて、テテンテテレレテテテン、と音楽が鳴って終わった。
出来上がったもちは、可愛いおばけ達が回収していった。
「これを見てどう反応しろと」
「可愛い」
「え? 絆ちゃん?」
絆はとても愛くるしい者を見るような目をしながら、モチモッチン三世に質問をした。
「もし、案内人さん、彼らのグッズは無いのですか?」
「ありません」
「ほら部ちょ――ゴホン、やはり我々のグッズを作られるべきだ」
「兎のお嬢さん、我々のグッズは無いんだ、申し訳ない」
「あら残念ですわ」
「だが、安心してほしい!」
「我々は実費でこれを作った!」
絆の目の前に現れたのは動画だった。
その動画には、アクリルキーホルダーからフィギュアまで。
様々なグッズをさっと紹介かる動画だった。
それを見て絆は更に目を輝かせた!
「実費! 言わば非売品ですわ!」
「これは我々ら興味を持ったお嬢さんにプレゼントだ!」
「無論送料は我々が負担しよう! 詳しくはメールを送っておこう!」
「詰め合わせセット! ハッ! 今更ですがお二方のお名前は?」
「私は長男のモッチリーノ・フリアゲーノ!」
「俺は次男のモッチリーノ・マゼーノ!」
モッチリーノ兄弟は再び腕組みをした!
絆はサイリウムを振って応援している。
「「俺達、餅つきブラザーズ!」」
「カッコイイですわー!」
「盛り上がってるね~」
「ああ、楽しそうでなによりだ」
「鏡さんや、絆ちゃんはああいうキャラクターが好きなの?」
「ああ! マイナーキャラクターってか、こう……狙ったキャラクターが好き?」
「ギャップ?」
「んーとも言えない時もある」
「2人共簡単だ。心が震えるから好きなんだろ」
「お、流石お兄ちゃんだね~」
その後、昼食のデザートにもちを使った物を頼もうと流れに。
絆は凄くキラキラとした満足顔で見学を終えた。