縁の助けるという提案に、多少の不信感は有りつつも
いつも通りの、良き縁を感じたから助ける、なんてことない何時もの行動。
ただ、敵対していた相手から言われたら、警戒するのは当たり前だ。
田中国政は不可解な顔をしながら、縁を見ている。
「それで、助けるとは?」
「貴方は今、人ではなく紛れもない神」
「……ええ、貴方と戦い敗れた後、子供達の信仰心が私を神にした」
「ふむ、まずは名を聞こうか、
「
「おお~色を扱う神っぽいね~でも縁君、助けるって具体的にはどうするのさ? あ、私達もカナリア先生って呼ぼう」
「ああ……で、どう助けるかだが、俺の神社の敷地内に
「本当に社って大切なんだね」
「名刺代わりだったり、安心感だったり……まあ色々と神様としてのスタートラインなのよ」
「あ~一言で言えば、祀られてないと笑われる?」
「まあそれに近いな、だから祀る」
あれよあれよと話が進むが、カナリア先生は更に
助ける気が満々だからだ、確かに神に社は必要。
社が必要な理由はシンボルだったり、世間的な安心感だったりと色々ある。
だがカナリア先生から見れば、やはり自分を支援する理由が見つからない。
他人の理解出来ない善意、これほど怖いものは無いだろう。
「待て、摂社?
「ふむ、損得で動く神も居るが、俺はそうじゃない、貴方が居無くなれば子供達が悲しむからだ」
「神がそれだけの理由で動くのか?」
「では聞こう、子供達から授業料を取っているのか?」
「いやまさか、この行為は人間の時からの私の趣味、色の楽しさを知ってほしい」
「ならば徳だ、他の神はどうか知らんが、俺は徳を積む者を救いたい」
「カナリア先生、私の旦那はこうなると、結構ガンコでね、まあ神様らしいというか、時々面倒くさいけど」
「え゛!?」
縁は普段出さない声で驚いた。
これまた結びは普段、そういう事は言わないからだ。
多少お互いに何かあっても流すからだ。
んな事にちまちまチクチク言っている暇があるなら、相手の良い部分を見よう。
これが2人の約束事だった、だからこそちょっとした言葉でも、反応してしまう。
とは言え、恋人同士、夫婦同士、相手を多少なりと面倒くさいと思わない関係は無いだろう。
「面倒くさいにそこまで反応する?」
「……ごめん」
「いやいや、縁君も私を面倒くさいと思う事があるでしょ?」
「ああ……いやまあ」
「それが許せる時は大丈夫だよ、私も気を付けるし」
「ああ」
そして隙あらばイチャイチャするのがこの2人だ。
そんな甘い空気……にはならない。
何故なら絵を描き終わった子供達が来たからだ。
「センセー! 出来たー!」
「あ、はい、お疲れ様です」
「あ、先生! 皆で絵を描いたんだよ!」
「おお、皆の合作ですか」
「はい! これ皆がんばった!」
子供の一人が描いたをカナリア先生に渡した。
そこに描かれていたのは、神社っぽい建物だった。
そして、色合いがぐちゃぐちゃだ。
おそらくは、子供達のそれぞれ好きな色を塗ったのだろう。
「これは……神社ですね?」
「おお! カナリア先生凄い!」
「センセー神様になったんでしょ? この間言ってたもんね」
「神社描いた!」
「先生の神社わからないから、皆で描いた」
「いつかセンセーの神社を見たい!」
カナリア先生は心を打たれた。
自分には神社が無い、だが、子供達はあると信じている。
きっと、先生には神社が無い、そんな事を言っては間違いなく傷つける。
何より、渡された絵には子供達の『信仰心』を感じた。
噓偽り、欲の無い信仰心、考えは一瞬で固まった。
この子達との関係をより良い物にしておきたい。
カナリア先生は縁を、不可解な顔ではなく、少し申し訳ない顔で見る。
「……縁のか――縁さん、この子達の為に、貴方の提案を受け入れよう」
「ああ、わかったカナリア先生」
子供の一人が縁を見上げた。
「うさみみのおじさん、カナリア先生のお知り合いなの?」
「ああ、お友達だ」
「おねえちゃんもお友達?」
「そうだよ~」
「一緒にお絵かきしよう?」
「お、いいね~」
「俺兎以外描けないんだよ」
「どゆことさ」
「描けばわかる」
画材……と言っても画用紙と色鉛筆を借りて、お絵かきスタート。
結びは、人や物を描いて上手かった、カナリア先生が褒めるほど。
だが縁は本当にダメだったも人や物は破滅的、悪い意味で画伯だった。
しかし、本人が言うように、兎だけは超リアルに描けている。
子供達もビックリする上手さだ。
「……何で兎以外下手なの?」
「俺が兎が下手だったら示しがつかんだろ」
「ああ~まあ確かに」
そんな感じで子供達とお絵かきを楽しんだ2人だった。