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第四話 演目 色彩の神との再会

 学園長との話し合いを終えた縁と結び。

 納得いかない顔をしながら、学園から出で来る。


「何だかあれよあれよと決ってしまったな」

「そりゃ相手からしたら、厄介な生徒を手放せるんだもの、良かった良かった、天空原は救えるし、猫娘ちゃんも大丈夫でしょ」


 縁達の要求は簡単だった、そちらの優秀に生徒を引き抜きたい。

 対価は支払おう、そして今後の為に交流会として、私達の生徒と、引き抜く生徒での模擬試合をしたい。

 これを小難しく言ったのだ、相手の学園長は二つ返事で了承した。

 生徒2人で自分の立場が安泰、もしくは他に何か意図があるのか。

 とりあえず2人は街の中央へと歩いている。

 せっかく来たのだから、街を見て回る事にしたのだ。 


「2人もうちに来るのか」

「ああ、あの猫娘ちゃんはシーナ先生に任せようかと」

「シーナに?」

「シーナ先生凄いんだよ?」

「どんな風に?」

「ああ、縁君は知らないか」

「何を?」

「シーナ先生はちょいと訳ありの生徒達を教えているのさ」

「なるほど」

「ま、クソガキ程度はちょちょいのちょいだろうさ」

「いや……普段シーナはどんな生徒教えてるんだよ」

「ま、あんま言うもんじゃないけど、興味本位で世界征服とか、侵略とか考えていた奴らとか?」

「んな馬鹿な」

「善悪の知らない子供とか、調子に乗るクソガキとかさ」

「ほう……ちなみに聞くけど……子供は流石に大丈夫だろう」


 縁は結びの方をジッと見た。


「ん? 何が?」

「あ、いや、結びさんは何処から容赦ないのかなと」

「ああ、そうだね~先生としてなら容赦はするよ?」

「じゃなかったら?」

「ん~縁が関係していたら、全員消えてもらう」

「……暴れないでくれよ?」

「いやいや、縁君も人の事言えないのでは?」

「え?」

「絆ちゃんに聞いたよ? 私に何かあったら神として神罰を下す、ってさ」

「……ああ、この間神様の会合という名の酒飲みがあったからな、その時に言ったな」

「おお、神様の集まり、よく聞く神話っていうか、伝説みたいな感じ?」

「ああ、色々な神様が居るよ?」

「おお、会ってみたいけど、無理だよね~」

「いや? 俺の妻となる人なら大丈夫だ」

「え? そういうもんなの?」

「ああ、関係者って奴だ」

「夫婦です、結婚してないけど、関係者じゃなく、夫婦にしてください」

「お、おう」


 毎度の事だが、隙あらば夫婦を推してくる結び。

 縁もそれは否定はしないのだが、やはり街中でそれを言うのは、少々恥ずかしかった。

 結びの様な勢いと自信があれば恥ずかしくないのかもしれない。

 縁が足を止めて、街の広場の方を見た、子供達が楽しそうにお絵かきをしていた。


「ん? これは……」

「どうしたの縁君」

「……俺に魂の一撃を与えた人物を覚えているか? 色で戦ってた現人神あらひとがみ

「ああ、確か名前は田中国政たなかくにまさで、七星了司ななほしりょうじに忠誠を誓っていたね~」

「そうその人」

「で、その人がどうしたのさ」

「いや、あの子供達の近くに居るのを感じた……そして、今のままだとまずいな」

「ふむ、どうするの?」

「助けてやろうとね」

「縁は優しいね~」

「違うよ? 神は優しくない」

「ほほう」

「俺は『良き縁を持つ者を助ける』が、それは人の世の善悪の基準に当てはめると、いい神になるだけだ」

「縁君は人の世で生きてるんだから、いい奴になるじゃん」

「……それを言われると返す言葉も無いな」

「まあ私でもわかる、いい音と風を感じる……でも助けるって?」

「神の存在の安定には、社が必要だ、俺の様に半分人間なら多少融通が利くんだが」

「シンボルが必要だものね」

「彼には今社が無い、子供達の縁を守る為の交渉さ」

「なるほど」


 田中国政に向かって歩いていると、彼は子供達に囲まれていた。

 身なりは、絵の教室を開いている先生らしい服装をしている。

 子供達は、我先にと作品を見せている。


「カナリアせんせー! 僕の絵を見て!」

「私も出来たー!」

「オラも見せるだー!」

「はい、皆さんの絵は順番に見ますからね」


 ニコニコとしていた田中国政だが、縁達を見た瞬間顔を一瞬だけ強張こわばらせる。


「……皆さん、私にお客さんが来ました、少しの間新しい絵を描いて下さい」


 さすがの子供達でも、先生が何時も通りではないと感じた。

 でも言付け通り子供達は、新しい絵を描き始める。

 3人は近くにあるベンチへと座った。


「私にとどめを刺しに来ましたか? 縁の神」

「待って待って、俺は縁結びの神だ、子供達と貴方の縁を引き裂く様な事は出来ない、助けに来たんだ、せめて話を聞いてから判断してください」

「……助ける?」


 敵だと思っていた相手に助けると言われ、あっけにとられる。

 そして、縁達に敵意や悪意を感じなかった。

 田中国政はとりあえず話を聞くことにする。

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