縁と結びはゲーム内ロビーへと戻って来た。
「お疲れ様、縁君」
「お、おう、お疲れ様」
「どったのさ?」
「いや……ゲーム内でもリアルでも、ちゃんと挨拶してないなと思って」
「ああ、さっきはああ言ったけど、演技だよ」
「いや、それはわかっているんだけどさ……リアルではちゃんと挨拶してないなと思って」
縁は明らかに落ち込んでいた、初めての彼女で将来を誓った女性。
心の何処かでやらなきゃとは思ってはいた。
そう、思っていただけなのだ。
落ち込んでいる縁に、結びは更に驚きの言葉を投げる。
「ああ、私は縁君のお母さんとお父さんに、挨拶したよ? リアルで」
「ファ!?」
「絆ちゃんと遊んでいたら、自然とエンカウントした」
「いや……すまない、俺は浮かれていたようだ、そこら辺をちゃんとしていなかった」
「ああ、気にしない気にしない、私達は結婚を前提に付き合ってるじゃん?」
「……ああ」
「なら、両親の挨拶って結婚の報告の時でいいんじゃない?」
「いや……そうなんだが……ちゃんと挨拶もせずに、人様の娘さんを」
今更ながら色々と後悔が、縁に押し寄せてくる。
だが結びは笑って、未来の旦那さんをぺしぺしと叩いた。
「待て待て待て、未来の旦那」
「え?」
「私達は成人してるだろ?」
「あ、ああ」
「ふっ、親の許可なくとも結婚出来るんだぜ?」
「お、おお、確かにそうだけども」
「ま、そこら辺はログアウトしてから話そうよ」
「そうだな」
ログアウトした後は何時も通り、居酒屋へ向かう。
品物頼んで一時間、荒野原はお酒で出来上がっていた。
「げっへっへっへっ!」
「上機嫌だなぁ」
「いやいやいや、未来の旦那は可愛いと思ってね、親への挨拶をちゃんと考えていると」
「当たり前でしょ、それよりも俺の両親に挨拶していたとは」
「まあそりゃ? 未来の妻だもの、しっかりするよ?」
「お、おお」
「あ、でも一度両家の挨拶はしとく? 結婚報告じゃなくてさ、結婚は私もまだする気は無いし」
「……ああ、そうだな」
「げっへっへっへ……こうして結婚に一歩近づくんだよ」
「おう」
幸せに向かって、日々を一歩ずつ歩いていく。