縁達はロビーへと戻ってきた、今日はシーナも一緒だ。
「お疲れ様です」
「お疲れ様~」
「はい乙ー」
「で、サンディどうしたよ?」
「いやなに久しぶりに飲もうぜ? もちろん結びさんも一緒にな」
「あら私もいいの?」
「奥さんになる方が居るのに男女2人で飲みに行けるか、私も旦那居るし」
「んじゃ遠慮なく~」
そんなこんなでシーナのプレイヤーと2人は飲みに行く事に。
何時もの居酒屋の出入口付近で待ち合わせする事に。
そして長谷川達が居酒屋に向かうと、入口に女性が立っていた。
成人女性にしては背が少々小さく短い髪で活発そうな女性だ。
「……おお! 長谷川が女の人と一緒に居る!?」
「谷川、お前も変わらんな」
「ちんちくりんとか言ったらぶっ飛ばす」
「あのな、大人になってまでそんな事言うか?」
「おお、凄い息が合ってるね」
「まあ高校の時にガッツリレアスナタやってたからな、一緒に」
「お、その話詳しく、さ、店へレッツゴ~」
何時もの席に通された3人、一通り注文をして品物がそろったら宴会開始だ。
互いの自己紹介や今日のプレイ等々を話していたが、荒野原的に気になる事を聞いた。
「で、谷川さんは長谷川君とどんな歴史が?」
「ああ、コイツは高校生から一人暮らししてたんだけどさ、バイトとか無い日はさ、ほぼ一緒に毎日レアスナタしてたな」
「おお、付き合ってたの?」
「そう思われても仕方ないよな、違うよ、私と長谷川はあくまでもゲーム仲間だ」
「ああ、その通りだ」
「まあ嫁さんになる人から見れば……アタシは疑わしい人だよな」
「大丈夫、長谷川君の事だから多分谷川さんに失礼な事を言ったと思う」
「お、未来の旦那を理解しているな? どういったとおもう?」
「リアルで初対面の人には申し訳ない言い方になる」
「ああいいよ」
荒野原はコホンと言葉に出した後、めちゃくちゃイケボでこう言った。
「……俺は異性としてお前に魅力を感じない、だがそれはお前も同じだろう? 周りに何を言われようがお前は最高のゲーム友達だよ」
「よかったな長谷川、お前の理解者が居て」
「……何で当てれるんだよ、それに近しい事は言った記憶がある」
「それは私が長谷川君を愛しているから」
「リアルでもイチャイチャするんだなお前ら」
ゲーム内で散々イチ2人のイチャイチャは見てきた谷川、だがゲームとリアルは違うだろう。
今この場には逃げ道が無い、リアルなのだから。
「過度なイチャイチャは駄目かもしれんが……必要な事だろう、好意で伝えないと」
「……ゲーム内ではキャラとして受け止めれたが……あの長谷川が……」
「そんなに長谷川君は浮いた話が無かったの?」
「長谷川、昔をしていいか?」
「無論だ、レアスナタの為に清廉潔白だった俺の過去を語るがいい」
長谷川はここぞとばかりにイキリ散らす様な顔をした。
それは長谷川を知る者はわかる。
レアスナタをプレイする為に清廉潔白で居続けるヤバい奴だと。
「……んじゃ語るけど、高校生の時に長谷川はとある疑惑がかかったんだ」
「疑惑?」
「何処の誰かは知らんけど、高校生の長谷川は成人向けのゲームを持っているみたいな噂だ」
「はっはーん、長谷川君の優秀さに嫉妬したと見た、それで」
「アホな連中が長谷川をからかったんだが……アホだったな」
「どうなったの?」
「当時長谷川はパソコンを持って無かった、スマホも持ってなくて携帯電話だった」
「なるほど~全てはレアスナタの為か、長谷川君らしい」
「そうだ、ちなみに中学生の時にとあるギャルゲーを友達が貸してくれてな、安心しろ全年齢だ」
「誰も疑わないから安心してよ」
「その作品で高校生の主人公が、パソコンを友人達に見られるというイベントがあってな」
「ほうほう」
「俺はその時衝撃が走った、そうか! 自分が高校生になったらこの可能性が出で来るのか! とね」
「……何つーか健全な男子高校生じゃないね、普通あるでしょうに」
「いらん、あの時の俺にとってはレアスナタが全てだ」
「今は?」
「もちろんこれから家族となる人が最優先だ」
「……げっへっへっへっへ」
「お前らチャンスがあればイチャイチャするんだな」
谷川は呆れながら自分の飲み物に口を付けた。
「で、その疑惑は結局はどうなったの?」
「ああ、オチを言うと成人向けは無かったがR15作品はあった」
「おおう、そういうオチ、健全でよかったよかった」
「当時の俺は持ちたく無かったんだが、妹に言われて買った」
「あ、多分さ、兄貴……一般的に考えて可笑しいから、噓でもいいからもっときな……とか言われたんじゃない?」
「うむ……今思うと昔の自分は可笑しかったなぁ」
長谷川はため息をしながら、目の前のつまみに手を出した。
「でもお前あそこからへんからさ、高校生の友達増えたよな」
「ねじ曲がった高校生だったなぁ」
「私は長谷川君が人並みに性欲が有る事にビックリだよ」
「あ! わかるー! 高校の奴らと海とか一緒に行っても鼻の下の延ばさなかったのコイツだけだった!」
「容易に想像出来る……『ここでニヤリとしてしまったら、どこかのタイミングでレアスナタがプレイ出来なくなる可能性がある』とか思ってそう」
「当たりだ、私がコッソリと後で聞いたらそんな事を言っていた」
「仕方ないだろう? 俺にはレアスナタが全てだったんだから」
「何でそこまで執着するんだよ」
「レアスナタが荒んだ俺の心を癒してくれたからだ」
「そいや、オンラインゲームで嫌な事があったんだっけ~」
「そうそう、罵詈雑言や下ネタだの装備がなんだのかんだの」
「落ち着け落ち着け、ほれついでやる」
谷川が長谷川の空のコップにお酒をついだ。
そして、ついでもついでもいつの間にか無くなっている荒野原のコップにもついだ。
自分にもついだ谷川は、乾杯をするようにコップを荒野原に突き出す。
「荒野原さん、私が言うのもなんだがコイツをよろしく頼むよ、アタシから見たらやっと人らしくなったんだ」
「ほっほっほ、任された!」
「でまあ私も知りたい事がある」
「おお、なんじゃ」
「お前達のなりそめだな」
「それに触れるか、いいだろう! とことんのろけてやる!」
「落ち着いてくれ、ゲーム内ならいいがリアルで惚気……しかも親友には恥ずかしい」
長谷川はそういうが、恋人の惚気話はここからが本気だった。