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第三話 幕開き 開幕早々物騒

 縁達はグリオードの管理しているキャンプ場やって来た。

 小川があって近くには森もある、縁は早速テントを設営の準備をする。

 色鳥は辺りを呆れた顔をしながら見回している。


「なあグリオード、ここはお前の管理しているキャンプ場だよな?」

「そうだぞ色鳥」

「あのな、周囲に敵意を感じるんだが?」


 ここぞとばかりにいずみのメガネが光った。

 フレームが七色、レンズの部分は白くにごる様に光っている。

 そして満面の笑みで色鳥に高揚感バリバリで聞いた。


「色鳥さん! ご説明しましょうか!?」

「……いやいい……と、思ったが簡単に頼む」

「では一言で! 私を含めて皆さん、地位とか立場とか高いじゃないですか!」

「あぁ……グリオードは王様だし? シンフォルトも道徳の神のシスターとして位が高いか」

「加えて私は説明と解説の神の図書館の司書、人の世ではちょいと有名な図書館でも司書をしています!」

「で、縁は縁で聞いた風の噂だと、兎の神のお偉いさんの代理」

「そうそう、更に加えて色鳥さんは武術の大会とかで稼いでますよね?」

「まあ旅費とかな」

「チャンピオンは恨まれますよー?」

「……なあ俺は個人では凄くないんだが」


 陣英が手を挙げた、彼は傭兵部隊に身を置いている。

 言わばチームワーク、個人の実力もあるだろうが全体的な評価になりやすい。


「待て待て陣――」


 色鳥が何か言いかけた時、大きな銃声が響いた。

 それと同時にシンフォルトの頭から鎖骨辺りが突然吹き飛んだ。

 彼女はその場に倒れて血が流れている。

 が、その場に居る誰も心配をしていない。


「あらあらまあまあ、敵は悪手ですね? メガネクイックイッっと、戦力で言えば確かにシンフォルトさんは弱いですが……」

「ふむいい狙撃だ、称賛に値するが……博識の言う通り悪手だな」


 陣英は倒れたシンフォルトに近寄った、そして傷口を見て一言。


「対修道女徹甲三式弾だ」

「なんだそのシンフォルト特攻は?」

「い! 色鳥さん! せ! 説明! ご説明しましょうか!?」

「……」


 色鳥は今、自分だけが普通の感性をしていると思っている。

 自分だけ敵の位置を確認する為に気を張っていた。

 他の友人達は何時も通りの過ぎる、そして縁は――


「縁、お前もくもくとテント設営してないで驚けよ」

「いや色鳥、お前も慌ててないだろ」

「だからって……ああ、お前神様だったな? 薄情とまでは言わな――」

「ん? だったら友達の頭を吹っ飛ばした奴らの一族を根絶やしにするか?」

「落ち着け落ち着け、今のお前は昔以上に自然災害だろうが」

「幸せの神様ですが何か?」

「身を滅ぼすだろ」

「それは身の丈に合わない選択をしたからだ、つまり俺がヒステリー起こすと自然災害だ」

「神様って面倒くさいなぁ……」


 今までピクピクと動いていたシンフォルトが急に起きだした!

 もちろん鎖骨付近から上は吹き飛んでいる、もはやホラーである。

 シンフォルトは身振り手振りで何かを伝えていた。

 そこにメガネを光らせたいずみが参戦。


「……」

「あ、シンフォルトさん、私が通訳しますので」

「……」

「ふむふむ、対修道女徹甲三式弾、お見事なお手前です……再生に時間がかかります」

「……」

「しかし、友人とのキャンプを邪魔するとは……道徳がありませんね!」

「……」

「では私は道徳とか何かを伝えに行ってまいります!」


 シンフォルトは森の中へと一直線にスキップで向かった、嬉しさを隠し切れないらしい。

 それそれとして、陣英はクーラーボックスの中を確認していた。


「元気だなーシンフォルトは、あ、グリオード、お前さん食べれるキノコとか木の実とか見分け付く?」

「無論だ陣英」

「お、称賛に値するな」

「だろう!? 加護の力で痛い目にあってから、我が王国は砂漠に生活を作る所から始まったからな」

「そう考えるとスゲーよな」

「もしもの時の為にと昔勉強したんだ、だが木の実やキノコは新種も増えているだろう、教えてくれるか?」

「無論だ」

「では私達は食べ物を拾ってこよう」


 現状に特に気にする事も無く、グリオードと陣英は森へと向かった。


「カオスな親睦会だなぁ」

「おやおや色鳥さん? ご説明がいりますか?」

「お前は説明したがりなんだよ」

「……ふふふ、私大活躍です!」

「少し前っても約10年、こうしてあまり笑いあってなかったな」

「そうですねぇ、縁さんは妹を絶対に守る、色鳥さんは何か余裕が無くて、陣英さんは死にたがりやで、グリオードさんは称賛と賞賛の嵐で、私は知識を自慢したがりで、シンフォルトさんは……あれ? 今と変わらない」

「いや……シンフォルトは少し寛容になったよな? 昔怖かったよなー小さい事でも道徳がどうの言ってたし」

「ああ……そう言えばそうですね、少し落ち着きましたね」

「で……あえて聞くけど」


 色鳥は全てをわかっている顔と、呆れた顔が混ざっている表情をした。

 少し大きな声で辺りに話しかけるように、あちらこちらを見る。


「お前ら本当に俺達を殺せると思ってるのか?」

「手を貸すか色鳥?」

「いらねーよ、お前……妻が居ない今こそ少し暴れても問題無いと思っているだろ?」

「え?」

「顔が昔に戻ってるんだよ、人間を殺しても問題無いってな」

「……」


 そう今まで準備をしていた縁の顔は、人を見下し自分が偉いといった顔をしていたのだ。

 縁はそれを指摘されて物凄く落ち込んだ、知らず知らずのうちにそんな顔をしている事に。


「マジかよ……やはり俺には結びさんが必要だ」

「でもいいんじゃねーか? たまには肩の力を抜け? 俺達に遠慮はいらんぞ?」

「お前は相変わらずいい奴だな」

「おう」

「で、博識さん、何で敵は攻撃してこないんだ? そこら辺に隠れているのに」

「ムッハーーーーーーー! ではでは! 私が解説いたしますね! 縁さん!」

「お、おう……」


 いずみは再びメガネをキラキラとさせた、そして意気揚々と解説を始めたのだった!


「まず! 相手は過激派軍事国家の『ボウリューン』という国です! 目的は簡単に言えばグリオードさんの国が欲しい! で、王様が親友達がここまで強いとは思わなかったのでしょう」

「ふむふむ、俺達が規格外なら逃げればいいのに、てか軍事国家なら俺達の実力は知ってるだろうに……もしかして調べてない?」

「うーん……ボウリューンは言わば中級者って事ですね」

「中級者?」

「ええ、初心者は全てに慎重になるじゃないですか? それこそ国とりゲームなら弱い所から攻めますよね?」

「ゲームだったやり直しが出来るがな」

「そうですね、イケイケの中級者がたまたま上級者、もしくはそれ以上の存在に勝ったら?」

「ああ……感覚がバグったのか、俺もあったなぁ……斬銀さんがいい例だ」

「まあまあ縁さん、昔話はいいとして」

「で、結論として何で襲い掛かってこないんだ?」

「私達に勝てないからですよ」

「逃げないのは?」

「例えば追放されたとして、外の世界で生きていけると?」

「ああ……やべぇ国の出身者なら殺される可能性もあるか」

「はい」

「そうか……」


 縁は手を止めて辺りを見回し鼻で笑い作業を続けた。


「色鳥に遊んでもらえ」

「あら? 今の縁さんなら助けると思ったのですが」

「それは結びさんにいい所をアピールしたいからだ」

「あら人間的」

「半分人間だ、てか恋人いるならいい所を見せたいのは仕方ないだろう」

「お客様が満足するように俺が相手になってやるか」


 色鳥はストレッチを始め、よっこいしょと縁達から離れた。

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