縁達はグリオードの管理しているキャンプ場やって来た。
小川があって近くには森もある、縁は早速テントを設営の準備をする。
色鳥は辺りを呆れた顔をしながら見回している。
「なあグリオード、ここはお前の管理しているキャンプ場だよな?」
「そうだぞ色鳥」
「あのな、周囲に敵意を感じるんだが?」
ここぞとばかりにいずみのメガネが光った。
フレームが七色、レンズの部分は白くにごる様に光っている。
そして満面の笑みで色鳥に高揚感バリバリで聞いた。
「色鳥さん! ご説明しましょうか!?」
「……いやいい……と、思ったが簡単に頼む」
「では一言で! 私を含めて皆さん、地位とか立場とか高いじゃないですか!」
「あぁ……グリオードは王様だし? シンフォルトも道徳の神のシスターとして位が高いか」
「加えて私は説明と解説の神の図書館の司書、人の世ではちょいと有名な図書館でも司書をしています!」
「で、縁は縁で聞いた風の噂だと、兎の神のお偉いさんの代理」
「そうそう、更に加えて色鳥さんは武術の大会とかで稼いでますよね?」
「まあ旅費とかな」
「チャンピオンは恨まれますよー?」
「……なあ俺は個人では凄くないんだが」
陣英が手を挙げた、彼は傭兵部隊に身を置いている。
言わばチームワーク、個人の実力もあるだろうが全体的な評価になりやすい。
「待て待て陣――」
色鳥が何か言いかけた時、大きな銃声が響いた。
それと同時にシンフォルトの頭から鎖骨辺りが突然吹き飛んだ。
彼女はその場に倒れて血が流れている。
が、その場に居る誰も心配をしていない。
「あらあらまあまあ、敵は悪手ですね? メガネクイックイッっと、戦力で言えば確かにシンフォルトさんは弱いですが……」
「ふむいい狙撃だ、称賛に値するが……博識の言う通り悪手だな」
陣英は倒れたシンフォルトに近寄った、そして傷口を見て一言。
「対修道女徹甲三式弾だ」
「なんだそのシンフォルト特攻は?」
「い! 色鳥さん! せ! 説明! ご説明しましょうか!?」
「……」
色鳥は今、自分だけが普通の感性をしていると思っている。
自分だけ敵の位置を確認する為に気を張っていた。
他の友人達は何時も通りの過ぎる、そして縁は――
「縁、お前もくもくとテント設営してないで驚けよ」
「いや色鳥、お前も慌ててないだろ」
「だからって……ああ、お前神様だったな? 薄情とまでは言わな――」
「ん? だったら友達の頭を吹っ飛ばした奴らの一族を根絶やしにするか?」
「落ち着け落ち着け、今のお前は昔以上に自然災害だろうが」
「幸せの神様ですが何か?」
「身を滅ぼすだろ」
「それは身の丈に合わない選択をしたからだ、つまり俺がヒステリー起こすと自然災害だ」
「神様って面倒くさいなぁ……」
今までピクピクと動いていたシンフォルトが急に起きだした!
もちろん鎖骨付近から上は吹き飛んでいる、もはやホラーである。
シンフォルトは身振り手振りで何かを伝えていた。
そこにメガネを光らせたいずみが参戦。
「……」
「あ、シンフォルトさん、私が通訳しますので」
「……」
「ふむふむ、対修道女徹甲三式弾、お見事なお手前です……再生に時間がかかります」
「……」
「しかし、友人とのキャンプを邪魔するとは……道徳がありませんね!」
「……」
「では私は道徳とか何かを伝えに行ってまいります!」
シンフォルトは森の中へと一直線にスキップで向かった、嬉しさを隠し切れないらしい。
それそれとして、陣英はクーラーボックスの中を確認していた。
「元気だなーシンフォルトは、あ、グリオード、お前さん食べれるキノコとか木の実とか見分け付く?」
「無論だ陣英」
「お、称賛に値するな」
「だろう!? 加護の力で痛い目にあってから、我が王国は砂漠に生活を作る所から始まったからな」
「そう考えるとスゲーよな」
「もしもの時の為にと昔勉強したんだ、だが木の実やキノコは新種も増えているだろう、教えてくれるか?」
「無論だ」
「では私達は食べ物を拾ってこよう」
現状に特に気にする事も無く、グリオードと陣英は森へと向かった。
「カオスな親睦会だなぁ」
「おやおや色鳥さん? ご説明がいりますか?」
「お前は説明したがりなんだよ」
「……ふふふ、私大活躍です!」
「少し前っても約10年、こうしてあまり笑いあってなかったな」
「そうですねぇ、縁さんは妹を絶対に守る、色鳥さんは何か余裕が無くて、陣英さんは死にたがりやで、グリオードさんは称賛と賞賛の嵐で、私は知識を自慢したがりで、シンフォルトさんは……あれ? 今と変わらない」
「いや……シンフォルトは少し寛容になったよな? 昔怖かったよなー小さい事でも道徳がどうの言ってたし」
「ああ……そう言えばそうですね、少し落ち着きましたね」
「で……あえて聞くけど」
色鳥は全てをわかっている顔と、呆れた顔が混ざっている表情をした。
少し大きな声で辺りに話しかけるように、あちらこちらを見る。
「お前ら本当に俺達を殺せると思ってるのか?」
「手を貸すか色鳥?」
「いらねーよ、お前……妻が居ない今こそ少し暴れても問題無いと思っているだろ?」
「え?」
「顔が昔に戻ってるんだよ、人間を殺しても問題無いってな」
「……」
そう今まで準備をしていた縁の顔は、人を見下し自分が偉いといった顔をしていたのだ。
縁はそれを指摘されて物凄く落ち込んだ、知らず知らずのうちにそんな顔をしている事に。
「マジかよ……やはり俺には結びさんが必要だ」
「でもいいんじゃねーか? たまには肩の力を抜け? 俺達に遠慮はいらんぞ?」
「お前は相変わらずいい奴だな」
「おう」
「で、博識さん、何で敵は攻撃してこないんだ? そこら辺に隠れているのに」
「ムッハーーーーーーー! ではでは! 私が解説いたしますね! 縁さん!」
「お、おう……」
いずみは再びメガネをキラキラとさせた、そして意気揚々と解説を始めたのだった!
「まず! 相手は過激派軍事国家の『ボウリューン』という国です! 目的は簡単に言えばグリオードさんの国が欲しい! で、王様が親友達がここまで強いとは思わなかったのでしょう」
「ふむふむ、俺達が規格外なら逃げればいいのに、てか軍事国家なら俺達の実力は知ってるだろうに……もしかして調べてない?」
「うーん……ボウリューンは言わば中級者って事ですね」
「中級者?」
「ええ、初心者は全てに慎重になるじゃないですか? それこそ国とりゲームなら弱い所から攻めますよね?」
「ゲームだったやり直しが出来るがな」
「そうですね、イケイケの中級者がたまたま上級者、もしくはそれ以上の存在に勝ったら?」
「ああ……感覚がバグったのか、俺もあったなぁ……斬銀さんがいい例だ」
「まあまあ縁さん、昔話はいいとして」
「で、結論として何で襲い掛かってこないんだ?」
「私達に勝てないからですよ」
「逃げないのは?」
「例えば追放されたとして、外の世界で生きていけると?」
「ああ……やべぇ国の出身者なら殺される可能性もあるか」
「はい」
「そうか……」
縁は手を止めて辺りを見回し鼻で笑い作業を続けた。
「色鳥に遊んでもらえ」
「あら? 今の縁さんなら助けると思ったのですが」
「それは結びさんにいい所をアピールしたいからだ」
「あら人間的」
「半分人間だ、てか恋人いるならいい所を見せたいのは仕方ないだろう」
「お客様が満足するように俺が相手になってやるか」
色鳥はストレッチを始め、よっこいしょと縁達から離れた。