縁とグリオードはキャンプ場へと戻って来ると……
それはそれは楽しそうな人達であふれかえっていた。
お茶菓子を頂きながら、夕飯の準備をすると言ってた者達は――
「おう! グリオードに縁!」
「むはははは! 先にお酒飲んでますよ! 説明いります?」
「くっくっく……こほん、これは御神酒です、神聖なお酒なんです」
色鳥、いずみ、シンフォルトはすっかりと出来上がっていた。
夕飯の
縁達は少々呆れながらその場を見ている。
「……陣英が帰ってきてないな」
「心配だ」
「はぁ、俺が見つけて来る」
「そうか? すまないな」
「酒盛りの相手するより楽勝だ」
「そういう見方もあるか」
縁は再び森へと歩き出した、人との縁を感じ取れるので陣英の居場所は簡単にたどれる。
大木に隠れている陣英を難無く見つけた、木の葉で身体を隠してもいた。
「おーい、陣英、さっさと帰るぞー?」
「む? 縁? 敵がまだ居ると思っていたのだが?」
「お前何をしていたんだ?」
「ん? 潜伏している敵をこっそりと気絶させた。」
「……何してんだお前は」
「実戦、俺を殺すに値するかとかな」
「お前昔みたく病んでるのか?」
「縁、お前には言われたくないぞ?」
陣英は身体を起こして木の葉を払った、縁は鞄からペットボトルに入った水を差し出す。
それを受け取り少し飲み始める陣英は、少しため息をした言った。
「少し話していかないか?」
「ん? 何かあるのか?」
「昔からそうだったが……お前は誰かと一緒ってのは少なかっただろ?」
「昔は妹の事でいっぱいだったからな」
「何つーか余裕無かったよな」
「ああ、1日でも早く妹を助けたかったしな」
「そんなお前が人を愛するとはな」
「失礼な、俺だって女性には興味があった」
「えぇ? 昔のお前は殺す殺すうるさかったぞ?」
「それを言うならお前は俺を殺して見せろだったろ」
「それは今も変わらんな」
陣英は軽くため息をした。
そのため息は今も昔も何も変わってはいない。
縁は見違えてしまう位には変った。
人を許さないと言った神が今は人の世の者を愛している。
自分があまり変わっていない事へのため息だ。
「命のやり取りでしか生の実感をしない」
「お前は何をいっているんだ? そんな考え方だったか?」
「今も少なからずあるんだが……」
「あるんだが?」
「昔より落ち着いた」
「何で?」
「縁、お前にわかりやすくするなら……お」
「何かいい例えがあったか?」
「うむ、毎日カレーは飽きると仮定しよう」
「ふむふむ」
「で、味を変えたりトッピングしたり、濃さや薄さを変えたり」
「カレーへの情熱は凄いな」
「でもずっとカレーを食ってるのには変わらないだろう?」
「確かにな」
「それに気付いた時変えた」
「どうやって?」
陣英はそれはそれは楽しそうに笑っていた。
我慢からの解放、言わば待てをされている犬。
普段見せない陣英の狂気が見え隠れしていた。
「普段から食べずに我慢したら、粗悪品でも至高の品へと早変わりだ」
「……お前も変だなぁ」
「神様には言われたくないぞ」
「不死鳥の神様の使者には言われたくないな」
「あ、不死鳥で思い出した、隊長の無理聞いてくれてありがとうな」
「ああ……グッズ作りたいってアレか?」
「そうそう、昔から可愛く見られたいと思っていた人だからな」
「わかるわー俺は可愛くとは思わないが、幸せになる努力をしない奴が幸せを望むなよと」
「お? お前のグッズて無いのか?」
「あっても神社のお守りとかだろ」
「お前の……兎術、
「……あー神社の維持費も考えなきゃいけないのか」
「そうそう、遊んで暮らせる財を持っているお前でも、神社はちゃんと維持しないとな?」
「せっかく新しくなるしな」
「それこそ結婚式の結納の場にもいいじゃん」
「あー……でもそれやると俺の教師生活が……」
「お前人気だものな」
「良くも悪くもな」
縁には敵が多いがそれは昔の話、縁を良く思う人達も居る。
これは普通に当たり前の話だ、好き嫌いの話だからだ。
ただ神に表立って嫌いですと言える者達は少ないだろう。
「あ、グリオードに任せっきりだった」
「ん? 何を?」
「グリオードを除いて皆酔っぱらってる」
「何で?」
「グリオードとボウリューンに出かけてな、影武者だったけども」
「ふむ」
「俺とグリオード抜きで酒盛りしてたんだよ、夕飯の仕込みするとか言ってこれだよ」
「んじゃ帰るか?」
「お前の用事は終わったのか?」
「ああ、俺は久しぶりに隠密行動したかっただけさ」
「さっきのカレーの話か」
「そうそう」
「じゃあキャンプ場に帰ろうか」
「ああ」
2人はキャンプ場へと向かって歩き出した。