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第413話 一刀

これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。

どこかの扉の向こうの世界の物語。


怪獣は遊園地を壊しにかかる。

しとめないといけない。

そうしないと、この遊園地からは帰れないだろう。


「おいワタル」

ヒビキがワタルに追いつく。

「どうすれば、しとめられると思う?」

ワタルは瓦礫をよける。

「足止めと、強烈な一撃だな」

「やっぱりそう思うか」

ヒビキの言葉に、ワタルはうなずく。

ヒビキは考えなしの癖があるが、戦いに関しては間違っていない。

カタナは怪獣と戦っている。

いくら踏み込んでも足元がせいぜいだ。

「カタナ!」

ヒビキが怒鳴る。

カタナが振り向く。

「今から怪獣の足止めをする!」

「止まるか?」

「止まるとも!そうしてカタナは上から怪獣を一刀両断にするんだ!」

「上から?」

「俺の能力で放り投げる!」

カタナはうなずいた。


ワタルは能力を解放する。

怪獣の足止めの氷の力となると、

とにかく意識をなくすまで、放たないといけないかもしれない。

意識をなくすまで放ったとして、カタナがしとめられなかったら…

つぶされておしまいだ。

「信じろ」

ワタルは自分に言い聞かせる。

「信じろ」

隣でヒビキもつぶやいている。

カタナがこっちにかけてくる。

ヒビキは能力を解放して、カタナの手をとり、

炎とジェットの要領で中空へと飛び立つ。

ワタルは能力を解放し、氷で怪獣の足止めにかかる。

いくら放っても氷はなかなか怪獣の足止めにならない。

全ての力を出し切る覚悟で、ワタルは氷を放った。

怪獣の足元が凍る。

遊園地を壊していた怪獣の動きが止まる。

「今だ!」

ワタルが叫ぶ。

ヒビキはカタナを放り投げる。

そのままヒビキは落ちてくる。

そして…

カタナは上空で姿勢を整えると、輝く刀を振り下ろした。

カタナは咆哮する。

それこそ獣のように。

輝く刀が怪獣の頭から足元まですごい勢いで下ろされる。

カタナが落ちてくる。


怪獣は一刀両断された。


怪獣がさらさらと灰になる。

「わたしのあかちゃん…」

どこかからそんな声がした気がした。


「これからどうするよ」

ヒビキがカタナに問いかける。

「また何かを斬る」

カタナはそう言って、刀を鞘に収める。

そして、振り向かずに去っていった。

「俺たちも帰ろうぜ」

ワタルがヒビキに声をかける。

壊れた遊園地のこととか、そういうことはとりあえず後回しにしたかった。

とにかく生きている。それが何よりうれしかった。

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