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第482話 相棒

キタザワは、鬼のように強かった。

ヤジマを目指すただそれだけの思いで、

キタザワはギャングのアジトを壊滅させた。

「ヤジマさんは、どこだ」

キタザワは、先ほどやっつけた、

ギャングに問う。

「ヤジマは、夢に監禁して、あるんだ」

「今すぐ解放しろ!今すぐにだ!」

キタザワは柄になく怒鳴る。

それは、鬼の叫びさながら。

ギャングは、生きた心地がしない顔で、

ついでに、痛めつけられた身体で、

ヤジマの解放をおこなった。


ヤジマは、うっすら光が見えてくることを感じる。

あれ?と、思う。

ヤジマは目を閉じる。

瞼の奥にはキタザワの姿がある。

瞼を閉じたのに明るくて、

なんだかキタザワが近くにいるような気がする。

「ヤジマさん」

声まで聞こえる、末期だなとヤジマはふわふわ思う。

「ヤジマさん」

ヤジマはそろそろと瞼を上げる。

キタザワが泣きそうな顔でヤジマを見ていた。

「ヤジマ、さん」

ヤジマは腕を上げてみる。

夢、だろうか。

その手でキタザワの頭に触れてみる。

大型犬のようなキタザワ。

なでると、本格的に泣き出してしまった。

「よかったぁ…」

ぐしゃぐしゃに泣いているキタザワを見て、

ああ、こいつは本物だと、ヤジマはとろとろと思った。


ギャングは悪夢でも食らったような顔をしている。

キタザワは泣いている。

大体何が起きたかは想像つくけれど、

ヤジマは自分が、かっこ悪いなと感じた。

キタザワを置いてきたのに、

そのキタザワに助けられるなんて、

心底かっこ悪いと思った。


「ヤジマさん」

キタザワが涙声で呼ぶ。

「俺って、ヤジマさんの、何ですか?」

ヤジマはしばし考える。

そして、いい言葉をひとつ思いつく。


「相棒」


「え?」

「ヤジキタ宅急便の、相棒だ」

ヤジマは照れくさそうにそっぽを向く。

キタザワは泣き笑いした。

「帰りましょう、ヤジマさん」

「…いいのか?」

「当然です。相棒ですから」


ヤジマはしぶしぶという風に、うなずいた。

心から、うれしいと思ったのではあるけれども。

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