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第582話 翻訳

それは電脳世界の話。


一通り、バベルシステムの恩恵を目の当たりにして、

シャンジャーと電脳娘々は、

時代が変わるかもしれないという結論に落ち着いた。

ただ、このシステムが電脳世界を出て、現実世界まで使われるようになるには、

まだ時間がかかるかもしれない。

それでも、画期的なシステムで、

世界の言葉の壁をバベルシステムが飛び越えるかもしれない。

期待は十分もてる代物だ。


シャンジャーは、管理人室のメンバーに話をつけたらしい。

ちょっと話をしていこうということになった。


テレポートの概念で距離をショートカットする。

電脳世界ならではだ。


管理人室の前に、シャンジャーと電脳娘々は描画された。

古風にノックを二つ。

「どうぞ、あいてるよ」

声がしたので扉を開く。

そこには、若い男女が宙に浮かぶディスプレイに向かって手をかざしていた。

人数は多くなく、8名ほどだろうか。

「こんにちは。僕らが管理人だよ」

「僕はシャンジャー、アルコールに属しています」

「電脳娘々。斜陽街で電脳中心やってます」

「二人のことは知ってるよ。技術的な面は相当なものだね」

「知ってるんですか」

電脳娘々がききかえした。

「言葉は新しいものも古いものも、国籍も超えるものだからね」

「だから、何でも知っている?」

「そういうこと。ここの管理人で、情報と言葉をシステムに送ってる」

「システムには知識がすべて?」

「バベルシステムは、まだ未熟だからすべてではないさ」

電脳娘々は、管理人の男性のアバターの目を見た。

アバターだとわかっているのに、その目には希望がともっているように思われた。


「翻訳技術はどんどん上がっているよ。世界がバベルシステムでつながる日も近いね」

管理人は、そうして話を結んだ。

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