目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

0112 言わせねえよ!

「うっ、うっ」


後ろから、坂本さんと古賀さんの嗚咽が聞こえます。

多勢に無勢だけなら何とかなったかもしれません。

でも、人質は卑怯です。

私は涙をこらえて服を脱ぎます。


でも、なるべくゆっくり脱ぎます。

この上は一秒でも時間を稼いで、とうさんの助けが来ることを祈ります。

もたもたやっていると、切れられるかと思いましたが、なかなか辛抱強く待ってくれています。


パサッ


スカートが地面に落ちました。


「ゴクッ」


男達のツバを飲む音が聞こえました。

スカートの後は、靴と靴下です。

もう後は、この白い水着だけです。

右の肩ひもを左手で外し、右手は胸がポロリと出てしまわないように押さえます。

同じように反対の肩ひもを外します。


そして、胸が少しずつ出るように、水着を降ろします。

少しずつ……。


これ以上降ろすと、色の違うところが出てしまいます。

私は動けなくなりました。


「バカヤローー!! さっさと出しゃーーがれーーーー!!!!!」


男達から怒りの声が上がりました。


「ふぇええええーーーーーん!!!! うわああああーーーん!! うわああああああーーーーーーーんん!!! これ以上、下げたらでちゃうよーーーーーー!!!! うわああああーーーーーん!!」




「そりゃあ、大変じゃねえか! まったくよう、俺の大切な娘になんて格好をさせやあがるんだ!」


「うわーーーん! とうさんの幻が見えるー!」


人間ピンチになると都合の良いまぼろしが見えるようです。


「ふふふ、あずさがこんなに取り乱して泣くなんて、いつ以来だ。懐かしいな」


とうさんのまぼろしは、優しく肩ひもを上げてくれました。


「それ、セクハラですよ」


後ろで、坂本さんの声がしました。

坂本さんにも見えているみたいです。

まさか本物のとうさん! 涙がポロポロ地面に落ちていきます。

坂本さんを見たら、泣きながら笑っています。

頬が真っ赤になっています。

古賀さんまで、顔が真っ赤です。


「あ、あずさ、と、とうさんはエッチな気持ちは、これっぽっちも無い。だから、警察だけは勘弁してくれーー」


「あーー、はっはっはっ」


私達は緊張がとけて、大声で笑い合いました。

あっ、やばい、坂本さんと古賀さんの頬が桜色に染まり目がウルウルしています。吊り橋効果だ。

とうさんは黒いヘルメットに黒いジャージです。

顔が出ていないので、ほれてしまうかもしれません。


「ぐぬぬぬぬーーー、丁度良いところで邪魔しやあがってーーー!!!! 構わねえ、人質を端から五人殺せーー!!!!!!」


角刈りの隊長がぶち切れました。

もう、これは止まらないと思います。

手下が、刃物を振り上げました。


「やれやれだぜ! 女性には優しくしねーといかんのになー」


「うぎゃあああああーーーーーー!!!!!」


十五人いた手下が、地面に倒れ悲鳴を上げています。

全員、手の指が折れ、肘も変な方向に曲がっています。

足には、鉄の枷がはまっています。

私のとうさんは、これを一瞬でやってしまいます。

滅茶苦茶頼りになって、かっこいいです。


「なっ、何があった? てめーー何をしたーー!!!」


「女性に、暴力を振るう奴にはお仕置きだべーー!」


「てっ、てめーー!! なめやあがってー、いったい何もんだーー」


「ふふふ、それを、聞いてしまうか。聞いてしまいましたかー。俺はなあ……」


とうさんが嬉しそうに、もったい付けています。

私は、坂本さんと古賀さんの顔を見ました。

二人とも悪戯っぽく、嬉しそうにうなずきます。


「正義のヒーロー、アンナメーダーマンよーーー!!!!」


私達三人で声をそろえて言いました。

とうさんが、慌てて後ろを振り向きました。


「おいおい、先に言っちゃうんだもんなーー! ガッカリだぜ!」


三人そろって肩が震えています。

怖いからじゃありませんよ。

笑いをこらえているのです。

とうさんが来てから、私は心配も不安も何も感じません。

あるのは、とてつもなく大きな安心感です。


「なにーー!! ふざけるな! てめー見てーなデブがアンナメーダーマンのわけがねえだろーー!!」


「隊長! ハルラ様からアンナメーダーマンの特徴を、黒いフルフェースのヘルメットをかぶった、黒いジャージのデブと聞いています」


「じゃあ、あいつがアンナメーダーマンで合っているのか。てんで弱そうじゃねえか。よし! 行くぞー!!」


「待て! 待て! お前達の相手は俺じゃねえ。ヒマリー! 愛美ちゃーん! いるのだろう」


ザッ!!


「はい、とうさん」

「はい、とう様」


岐阜城の屋根から、こともなげに二人が飛び降りて返事をしました。

ちょっとかっこいいです。


「坂本さん、変身だ!!」


「はい! オイサスト! シュヴァイン!!」


坂本さんの、真っ赤なビキニの体に黒い糸が巻き付いていきます。

そして、黒い体に赤い模様が美しい女忍者が出来上がりました。


「てめーら三人の相手は俺じゃねえ。この三人だ!! 古賀さんはさっき戦ったから、今回は見学だ」


「はい」


やばい、古賀さんの返事の後にハートが見えました。

私の勘違いなら良いのですけど。


「な、なにーー、女にガキ二人じゃねえか。てめーはなめているのかー!」


「もし、お前達が一人でも勝てたのなら、俺の首をやる。それなら文句は無いだろう」


「ええっ!」


私は驚いて声が出てしまいました。


「おい、そこの嬢ちゃんが大きな声を上げているぜ! 大丈夫なのか? 俺達をなめとると痛い目を見るぜ」


角刈りの隊長がニヤニヤ笑っています。

何か奥の手がありそうです。


「なめると痛い目を見るのは、あなたの方です。あなたの相手は私がします」


坂本さんがやる気のようです。

でも気をつけて下さい。

何か奥の手があるみたいですよ。


「わあー、はっはっ。エロい下着の姉ちゃんか。大丈夫かー。ひっひっひ!」


「うわあああああああーーーーーーーー!!!!!!」


坂本さんが悲鳴を上げて宙に浮いた。

両手両足がすごい力で引っ張られているようです。


「俺の名は、エスパー江藤。超能力者だ。俺をなめたことを後悔させてやる! わあーはっはっは!!!」

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?