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0117 収穫

俺はめんどうくさそうに名古屋城の前で、アメリカ行きの招待客を待っている。

ヒマリと古賀さんとアメリちゃんと凛はすでに準備が終っている。

あずさとミサが手分けして、坂本さんと愛美ちゃん、はるさんを迎えに行ってくれている。


「おまたせー」


あずさとミサが来たのは同時だった。


「じゃあ、これで全員だな。さっさと行って、さっさと帰ろう」


大型UFOに、クザンとシュラを加えて乗り込んだ。

俺は、最初少しやる気が無かったが、UFOの中で乗り込んできた全員の顔を見ると、誰もが嬉しそうにしている。

わくわくが止まらないという表情だ。

一人だけ楽しくなさそうにするのが申し訳無いので、端っこでせめて邪魔をしないようにしようと思った。


「とうしゃん、はい」


そんな俺を気遣って、アメリちゃんがコーヒーを持って来てくれた。

美しい金髪幼女姿のアメリちゃんを、そのまま抱き寄せてひざの上にのせた。

UFOから、外を見ているとあっという間に日本列島が見えなくなった。


アメリちゃんをひざの上にのせたまま、窓からぼーーっと水平線を見ていると、あずさの幼い頃の事が思い浮かんできた。

いつもこうして、ひざの上にのっけていたよなー。

こんな頃のあずさは他人を寄せ付けず、俺だけに心を許してくれていたなー。

それが、たまらなく嬉しかった。

そして生きる気力をもらっていた。


「はーーい、みなさーーん! 機内食の時間でーす。ミートオワウナギ」


あずさも、楽しそうだ。

肉または、ウナギってそんな機内食があるかよーー。


「うなぎーー」

「うなぎでしゅーー」


それで全員選択がウナギかよー。

アメリちゃんが俺のひざの上で、うな重を食べ始めた。

時々上目遣いで俺を見上げる仕草がかわいい。

あずさもご飯を食べながらそうしてくれていたなー。


でも、あずさの場合は不安や恐怖でそうしていた気がするなー。

アメリちゃんのような、嬉しそうな顔はしていなかったからな。

いつも泣きそうな顔をしていた。


「とうさん!!」


「うわっ!」


突然、あずさの嬉しそうな顔が前に現れて驚いた。


「私も横で食べてもいい?」


良いという前にすでに座っている。


「はぁーっ、その特等席取られちゃったわね。私の特等席だったのに」


うな重を食べながら、俺のひざの上を見つめている。


「あずさが、俺のひざに座らなくなったのも、うな重を初めて食べた日からだな」


「うん、あの時食べたうな重が、このうな重を思い出させたのよ。懐かしくて涙が止まらなかった。そして前世の記憶が少しだけ戻ったの」


「いまだに全部は戻らないのか」


「はい、前世の記憶も、六歳より前の記憶も良く思い出せない……」


あずさは、寂しそうな表情をした。


「あずさちゃーーん! おかわりーー!!」


「はい、はーーい!! じゃあね。とうさん」


「あ、ああ」


あずさはまた嬉しそうな顔をして、お替わりを配りだした。




まわりの景色が、青一色、海だけになると退屈になったのか、はしゃぎすぎて疲れたのか、皆眠っている。

機内は静かになった。


そして、いよいよ大陸が見えてくる。

大陸が、見えてくるとアメリちゃんの表情が少し変わった。

ずっと住んでいた地だから、なにか思うところがあるのだろう。


「見えたでしゅ。あそこがフォード教授の牧場でしゅ」


「すげーー、馬と牛がいる!!」


「おーーーい!!!」


フォード教授が大きく手を振っている。


「おおー、誰かと思えば、ミサさんとアメリさんじゃないか」


UFOから全員が降りた。

その中から、ミサとアメリちゃんの姿を見つけたようだ。


「あれ、教授は日本語が話せるのですか?」


「君は誰だね」


「ふふふ、アンナメーダーマンでしゅよ」


「ほう、アンナメーダーマン。なつかしいなー。元気だったかね。私は日本語も中国語もフランス語もドイツ語も話せるよ」


無精髭を生やした、俺と同じ位の歳の、アメリカのイケオヤジが握手を求めてきた。

俺はそれに応じて固い握手をした。

なんだか俺と違って、滅茶苦茶かっこいいなー。

映画俳優みたいだ。


「はい、元気です。早速で悪いのですが、トウモロコシの収穫をさせてもらってもよろしいですか」


「構わんが、少し休んでからでも良いのではないか。そんなに急がなくても逃げはせん。で、どの位持って行くのかね」


「ああ、全てです。根こそぎ持っていきます」


「なんだと!?」


「あ、欲張り過ぎましたか?」


「いや、そんなことが出来るのかという驚きだ。全部持って行ってくれるのなら、その方がいい。残す方がむしろもったいない」


「そうですか。では、お言葉に甘えて、すべていただきます」


俺は、細く糸のようにした、蜂蜜さんの体をどんどん伸ばした。

さすがに、少し時間がかかりそうだ。


「みんなは、少し休んでくれ。俺の収穫が終るまではやることは無いからな」


「はーーい」


こんな時ばかり全員良い返事だ。

なにやら、バーベキューでも始めるようで、準備を始めた。


「そうだ。アンナメーダーマン。折角だからうちの馬と牛も、もらってくれないか。そして、私も日本へ連れて行ってくれないだろうか」


「教授は、学校の先生をする気はありますか」


「ほう、興味深い。この世界で学校を作るつもりなのか」


「はい」


「ふふふ、ならば、数学と物理は専門だ。喜んで手伝わせてもらうよ」


「ありがとうございます」


俺は、蜂蜜さんにトウモロコシの実以外の処理をしてもらい、残った実を残らず収納した。

莫大なトウモロコシを手に入れた。

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