「あずさちゃんは、甘えん坊過ぎませんか」
「ふふ、ミサにはそう見えるか」
俺は、名古屋のドーム球場であずさから、異世界のレベル3ダンジョンの攻略後のアイテムの中から半分ほど、アダマンタイトとオリハルコンそしてミスリルの金属の塊を受け取った。
受け取りが終ると、あずさは旅の疲れからか、眠そうにしていたので健康の為、ちゃんと布団で眠らせた。
あずさの眠る枕元で、俺にミサが話しかけてきたのだ。
「えっ!?」
「あずさは、同じ年頃の子に比べれば、誰よりも賢くて大人だよ。いつも気を張って皆の事を見て、手助けをしている。だからこそ、休む場所が必要なのさ」
「あなたが安らぎの場所というわけね」
「そう、ほら、隕石騒ぎの前に、よく大会社の重役なんかが、おむつをはいて、赤ちゃんプレーを楽しんでいたじゃないか」
「まって、それと一緒じゃ、あずさちゃんが可哀想過ぎる」
「そうかなあ。同じようなもんだと思うけどなー」
「絶対違います!!」
「まあいいや。あずさも眠った事だし、俺は尾張と、美濃の米の収穫を済ませてくるよ。米以外の農作物は土地の人の収入源だから残しておく。明日は、加藤達に具足作りだ。ミサも健康の為眠ってくれ」
「わかったわ。お休み」
俺はミサのあいさつを聞くと、名古屋城名物、金のしゃちほこの尻尾の上にのった。
かの大泥棒石川五右衛門の気分だ。
翌朝、名城公園の体育館で、具足作りをしていると加藤が来た。
「殿、今川家より尾野上と名乗る者が来ました」
「尾野上隊長が? 何の用だろう。通してくれ」
「はっ!」
「ちょっと、待った。具足はいくつくらい必要だ?」
「はっ、えーっと」
どうやら答えにくそうだ。
「いや、いい、名古屋御三家に百ずつ作ろう。それでいいか?」
まだ尾張は、人が少ない、御三家の加藤家も榎本家も東家も百人は超えていないはずだ。予備も含めて三百体作る事にした。
余った物は、ここに置いておけばいい。
「はい!」
どうやら満足してくれたようだ。
「じゃあ、尾野上隊長を呼んできてくれ」
「はっ!」
俺が、具足を十体ほど作ると、尾野上隊長が加藤の案内でやって来た。
「尾野上隊長、どうしました?」
「はっ、私は、殿より尾張の援軍をするように言いつかりましたので、部下千人とやってまいりました」
「ほう、それはありがたい」
どうやら、今川さんは余剰兵力を援軍として出してくれたようだ。
今川家としては、その間は食糧も必要無いし、何より尾張大田家に恩が売れる。一石二鳥というわけだ。
「えーーと、ところで、大田様は何をしておられるのですか?」
尾野上隊長の目が、キラリと輝いた。
「あーこれですか。これは尾張名物、尾張黒鋼深山胴丸具足です」
「ちょっと試して見てもよろしいですか?」
すでに完成している具足を、何度も上から下まで眺めて、具足から目を離さず聞いて来た。
もう答えは一択だ。
「どうぞ、横に置いてあるミスリルの棒を持ち。オイサスト! シュヴァイン! の、かけ声で装着できます」
「オイサスト! シュヴァイン! あーっ! しまったー! 自分で装着してもみることが出来ない。鏡を見てきます」
そう言うと尾野上隊長は、大急ぎでお手洗いへ行ったようだ。
どうやら、もう千体作らないといけないようだ。
やれやれだぜ。
その後、具足を作りながら、戻って来た尾上隊長と、御三家に集ってもらい、ここで軍議を開くことにした。
現在は、加藤が名古屋城を守備し、榎本が岐阜城の守備、東が伊勢の調査に入っている。
「榎本、美濃はどんな状況だ?」
「はい、都心部から離れると、人は多く残っています。ただ、老人が多いですね」
「その方達は、農業に詳しくは無いのだろうか?」
「詳しいはずです。農作物を食べ生き残っていましたので」
「そうか。よかった」
俺は、心からそう思っている。
これで、生き残った住民の中から農業をしてくれる者を募って、農家を増やすことが出来るだろう。
「賊などがいたら捕らえて、治安維持に努めてくれ」
「はっ!」
「加藤」
「はっ!」
「尾張の地で、農業をやりたいという希望者を募集してくれ。これが一番重要な事だ、頼んだぞ」
「はっ、わかりました」
「東」
「はっ!」
「伊勢の状況はどうだ?」
「海があり、田舎なので生存者は多いですね。ですが、治安が悪いです。名古屋より人数が多い分、たちが悪いです。賊の退治をして、治安の向上が必要です」
「ふむ、ならば、尾野上隊長には、そちらに加勢していただくとしましょう」
「分かりました」
「俺は、この後商人大山大として、東北へ出かける。加藤に名古屋城は任せるので、よろしく頼む。くれぐれも、日本人の命は大切にしてくれ」
「ははーっ」
ふふ、まったく、どこの大河ドラマだよ。
全員時代劇の見過ぎだよ。
「うふふ、とうさん!!」
「おっ、ヒマリー、そして古賀さん」
「護衛はいらないって言ったのに、尾野上隊長に護衛されて帰って来ました。もう、お話は終りましたか?」
「うむ、済んだ。もう、駿河の祭りは良いのか?」
「はい、片付けまで全部つつがなく終りました」
ヒマリと、古賀さんと話し出すと、あずさとミサもやって来た。