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0138 気になる返事

「おおっ! ミサちゃん、気が付いたのか」


ゲンは、窓から俺の様子を見ていて、声がしてからミサの気が付いたことに気付いた用だ。


「ふわーーん、ふわーーん」


ミサの奴、子供の様に泣きだした。

いったい何があったのだろうか。


「いったい、どうしたんだ?」


ゲンが、質問した。


「私、私! やっと心からお慕いする人が出来たのに、こんなことになるなんてーー!! うわーーん!!」


「うむ、泣いてばかりでは、分からないぞ。何があったのか言ってみなさい」


ゲンが、おまわりさんみたいになっている。


「見てください」


?? 何を見せたんだ、気になる。


「う、うむ。それがどうしたのだ」


「血、血です。血がべっちょりついています」


ふむ、まるであのアニメ映画のようだ。

じゃねーー!! ミサの血が付いているのって、パンツじゃねえかー。

ゲンに何て物を見せているんだー。

ゲンがどうして良いのか困っちゃうだろう。


「う、うむ。つ、ついているな」


あーあ、気の毒にゲンが、血で汚れたミサのパンツを見せられているようだ。

待てよ、ミサはいうても美人だ。御褒美かもねー。


「私の、初めてを誰かに奪われてしまいましたー。やっと心からお慕いする人が出来て、その方にと思っていましたのにー。うわーーん。もうお嫁に行けませーーん。うっうっう」


本当に悲しそうだ。

だが、恐らく大丈夫だと思うぞ。

ギリギリセーフだったはずだ。


「うむ、ミサちゃんよ。痛みとか、違和感とかは無いか? 何かが挟まっているような……」


「……ありません。なんともありません」


「じゃあ、大丈夫じゃ無いかな」


「あーーーーっ!!!!」


くそう、この会話が気になって、戦いに身が入らない。

まあ、順調に治安隊の隊員は失神しているからいいか。


「ど、どうした!?」


「パンツの裏側には血が付いていません。見てください」


「い、いや。そ、それは。お慕いする人だけにしなさい」


「きゃあーーーーっ!! 私ったら何てことを。こんな粗末な物をゲンさんに見せるだなんてーー」


本当になんてことだよーー。

ひょっとして、ゲンの奴ちょっとくれー見ちゃったんじゃねえのー。


「ところで、ミサちゃんのお慕いする人ってのは、金髪でデブなんじゃねえのか」


うおっ、それって俺の事かー?

ゲンの奴、まさかミサみたいな美女が、俺なんかを好きになる訳ねーじゃん。

とか言いながら、すげー返事が気になる。


「……」


おーーい、言葉で言わねえと分からねーじゃねえか。

首を縦に振ったか、横に振ったみたいだ。

それじゃあ、わからねえんだよーー。

くそー気になる。気になるぞーー。


なーーんてね。

首を縦に振っている訳ねーじゃねーかー。

俺は、豚顔のぶ男じゃねえかよーー。


「くそーーー!!!! あっ!!」


治安隊の隊員への掌底につい力が入ってしまった。

他の奴は数メートルしか飛ばしていないが、こいつは、ものすごい勢いで飛んで行った。

二階の窓の横まで飛んで行った。

あまり勢いが強かったので、なんか呼吸が止まっている。

しかも、落ちねえで張り付いたままだ。


と、思ったら、落ちた。

落ちた衝撃で呼吸が戻ったようだ。

やれやれだぜ。


「……」


治安隊の隊員が静かになった


「どうした? お前らさっさと、かかってきたらどうでえ」


まだ数人残っている隊員に声をかけた。


「……」


残っている隊員が、無言で後ずさった。


ダカダッ、ダカダッ


なんだか変な音が聞こえる。

うお、師純興業の門を馬に乗った鎧武者が入って来た。

どこの、暴れん坊だよ。


「静まれーー!、静まれーー!!」


すでに、静まっているけどね。

鎧武者は、状況を瞬時に見て判断したようだ。


状況は、治安隊の隊員が二十人ほど倒れ、悪党顔の男が十五人ほど倒れている。

そして、その中央に黒いフルフェースのヘルメットに黒いジャージの男が立っているという状況になっている。


「ふむ、賊とはいえ、なかなかやるようだな。十六人で二十人を倒したのか」


そう言いながら鎧武者が馬からおりた。

どうやら、俺と悪党顔の奴らが仲間と判断したらしい。


「だったらどうした」


「ふふふ、俺がたいまんをはってやろう。ふふふ、丁度九十九勝一敗で、後一回勝てば目出度く百勝だ。喜べ、お前が俺の百勝のキリ番だ」


九十九勝一敗って、ゲンに負けたのが初めての黒星だったのかよ。

こいつは、どうやら伊達の殿様のようだ。

付けている鎧が、伊達政宗の鎧だ。兜に大きな三日月の前立ての付いた黒い鎧だ。

レプリカと思われるが、結構しっかり作られている。

どこかの美術品だろう。


「皆のものー、一対一のサシで戦う! 手出し無用じゃーー!!


伊達の殿様が大声で叫んだ。


「おおうっ!!」


まわりの隊員が少し元気を取り戻した。


「さて、待たせたな! いつでも良いぞかかって来い」


伊達の殿様が俺に手招きをした。

黒いジャージのデブには遅れを取らない自信があるようだ。


「じゃあ、胸をお借りします」


俺は、深々と頭を下げて、丁寧に言った。

そして、ゆっくり殿様に近づいた。

俺は、前回のゲンとの戦いを見ている。

大体の実力は分かっているつもりだ。


「ふふふ」


俺が近づいてもまだ余裕で笑っている。

実は、まだ実力を隠しているのだろうか。

俺は緊張でツバを、ゴクリと飲み込んだ。

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