「うがあああああーーーーーー!!!!!!」
島津軍の中で最初に敵軍とぶつかったのは、右翼の真田十勇士隊三好青海入道様です。
この方は真田家主催の武術大会で優勝した、真田隊最強で最も体の大きい猛将です。
大声を出し両手を開いて敵軍に突っ込むと、五人の敵兵に激突しました。
「うぎゃあああああーーーーーー!!!!!」
赤池隊も走っていましたので、その激突のパワーはすさまじいものでした。
吹飛んだのは、赤池隊の兵士です。
敵兵五人は、吹飛ぶときに大勢の兵士を巻き込みながら飛んで行きます。
「おりゃあああああーーーーーー!!!!!! ちいぃ一番槍はのがしたかーーー!!!!」
二番目に敵軍に飛び込んだのは左翼の安東常久様でした。
安東様に飛ばされた兵士はすさまじいスピードで飛んで行きます。
直撃を受けた兵士は全身から力がなくなり、くにゃくにゃしながら吹飛びます。
いけません。恐らく即死ですね。
安東常久様は、まだ加減がうまく出来ない……それともアドレナリンが出過ぎて、力が入りすぎているのでしょうか。
ぶつかられた兵士は、高速で走るダンプの直撃を受けた位の衝撃でしょう。
巻き込まれた兵士が何十人も倒れ、ピクリとも動きません。
「ぎゃああああああーーーーーーー!!!!!!!」
次々、真田十勇士隊が敵軍に飛び込むと、敵兵は阿鼻叫喚の地獄絵図になりました。
耳をふさぎたくなるような悲鳴が上がります。
遅れて安東隊も、敵兵に次々突っ込みます。
真田十勇士隊の比では無いほどの悲鳴が上がりました。
いけません、犠牲者が増えています。
「なっ、なにーーっ!! な、な、ななななななんだーー!! これわああーーーーー!!!!!!」
物見櫓から様子を見ていた相良様が、しゃがみ込んで驚いています。
「くそーーっ!! 赤池隊ー!!!! 前を開けよーーー!!!!」
「深水たーーい!!!! 前を、前をあけよーーーー!!!!」
三好様と安東様が隊の中央あたりまで進んだ所で、赤池様と深水様が声を上げました。
この声を聞くと、真田十勇士隊も安東隊も手を止めました。
相良軍全軍が動きを止めると、右翼、左翼の中央がサーーッと丸く開いていきます。
サークルの中央に一人ずつ将が進み出ます。
そして、三好様と安東様がゆっくり、サークルの中央に進み出ます。
「俺の相手は、深水か!!」
安東様がつまらなそうに言いました。
「ききき、貴様ー!! ぐろうする気かーー!!」
深水様が怒りをあらわにしました。
「おぬし、名は何と言う?」
赤池殿が、三好様に聞きました。
「わが名は、三好青海入道」
「な、なな、にゃにーー!!!! みみみ、三好青海入道ーー!!!!」
赤池殿はなんだか興奮しています。
まさか真田十勇士が好きなのでしょうか。
「ほ、ほ、ほんものだーー!! 本物はこんなにゴリラみたいな顔なのかー」
いえいえ、そんなわけがありませんよ。
おかしな人が多いですねえ。
「ちっ!」
三好様が赤い顔をして舌打ちをしました。
うれしがられて、まんざらでも無かったのに、ゴリラと言われて気分を害した。そんな感じでしょうか。
「いくぞーー!!!!」
赤池様と深水様の声がそろいました。
「うぎゃあああーーーーーーーー!!!!!!」
二人が吹飛ぶのも同じでした。
あっという間です。実力不足ですね。
安東様も、今度はうまく手加減が出来たみたいです。
二人とも倒れてはいますが死ななかったようです。
赤池殿と深水殿が武器を振りかぶった瞬間に、三好様も安東様も、目にも止まらぬ速さで移動すると掌底で吹飛ばしました。二人は何が起きたかもわからなかったでしょう。
安東様と三好様は、倒れている二人の襟をつかみ、ズルズル自軍の方へ運びます。
「く、くそーーっ!! 全軍撤退だーー!!」
相良様が物見櫓から駆け下りながら叫びます。
「桃井さん!!!!」
島津義弘様が叫びました。
「ええっ!! 私ーーっ!!」
急に私の名前を呼ばれて、思わず声を出してしまいました。
「くっ、くせ者ーー!! であえーー!! であえーー!!!!」
相良様を守る守備隊が、守りを固め武器を構えました。
私は透明化を解除しました。
「忍者だー! うぎゃあ」
「ぐあっ」
「げっ」
「ぐはっ」
「ぐわああああーーーー!!!!」
私は最小限の敵に掌底を合せ、相良様に掌底を合せると相良様が一番大きな叫び声を出しました。
そして、相良様の襟首をつかんで、中央の密集した敵兵の肩の上を、ぴょんぴょん飛び越え、島津義弘様の前まで走りました。
「はははは、今日一番のお手柄は桃井さんですなあ!!!!」
「はあぁーー!!!!」
私はドサッと相良様を地面に落とすと、義弘様を見つめました。
義弘様は少しバツがわるそうな顔をすると、大きく息を吸い込みました。
「相良晴広! 捕らえたりーー!!!!」
「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」
島津軍から歓声が上がりました。
この声を聞くと、相良軍はガックリひざをつきました。
捕らえられた相楽様と赤池様、そして深水様は拘束具で拘束され、義弘様の前に座らされました。