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0336 アイドル登場

屋台は、俺と謙之信とスケさん、カクさんの男衆とロボットのようなフォリスさんで店員になり、浴衣姿の美しい女性達はお客様だ。


「お、おい!! こ、こんな物をどこから出したんだ?」


番兵の隊長が俺の屋台に来て聞いてきた。

俺は腹のポケットを両手で指さした。

俺は、八兵衛さんの時は黄色いジャージを着ている。

その黄色いジャージのポケットから、全部出したのだ。


「う、嘘だろう」


番兵達がザワザワしている。


「ふふふ、こう見えて私は二十二世紀から来たロボットなんです」


「ま、まさか、まさか、ド、ド、ドラ……ブタミちゃんなのか?」


隊長がつぶやいた。

おーい、そのままドラのままでいいだろう。

なんでブタに言いなおしたー。


「そ、それは、まさか……」


番兵達が屋台の上を見て唾を飲んだ。


「サーロインステーキとロースステーキ、そしてハンバーグ」


ダミ声で言ってやった。

あー、ダミ声だとお兄ちゃんの方になっちゃうなあ。


「スッ、ステーキだと!?」


「ふふふ、でも隊長さんはいらないんでしたよね」


俺は、さっき誘ったのに断った隊長に、仕返しをしている。

あーー、なんて心の狭い男なんだーー!! 自己嫌悪。


「くっ!」


隊長さんが世界の終わりのような顔をした。


「八兵衛さん!!」


響子さんとカノンちゃんが恐い顔をしてにらんでいる。

浴衣姿のこの親子は美し過ぎるだろーー!!

しかも怒った顔もまた美しい。


「冗談です。自由に食べて下さい」


「な、なんと。だが、差し出す物が何も無い」


「何を言っているのですか祭りですよ。祭りの屋台は全部無料です。でなければ誰もが楽しめません。でも、だからこそ、食べ残しは許せません。もったいない事はしないで下さい。日本人なら出来るはずです。ゴミもゴミ箱に捨てて下さい」


俺は子供の時も貧乏だったから、祭りへ行ってもお金を持っていけなかった。

祭りに楽しい思い出は無い。

両手一杯に色々買ってもらって、うれしそうにしている子供を見ると、さみしかったもんだ。

小学校高学年になったら祭りにも行かなくなったよ。

ふふふ、大人になっても貧乏だから、きっと子供がいても何も買ってやれなかったはずだよなー。


「もちろんだとも、おーい!! みんなー!! 聞いたかー!!!! 遠慮しないで腹一杯食べまくるぞーー!!!!」


「おおーーーっ!!!!!!」


おーーい、ちょっとは遠慮しろよなー!!

……ふふっ、いや遠慮なんかいらないさ。

こんな世界だ。今日くらい目一杯楽しんでくれ。


「あっ、あのー」


番兵の眉毛のつながったおっさんが話しかけてきた。


「なんですか?」


「私達の家族はこの近くに住んでいます」


「ふふふ、全員呼んで下さい。祭りは大勢の方が楽しいです」


「おおーーっ!! ありがとうございます!!」


近くの番兵達からも歓声が上がった。

目に涙をためている人もいる。

プチのつもりが、結構本格的になってきた。

広い道の駅だが、狭く感じるほど大勢の人が集ってきた。


「こうなったらあいつらを呼ぶしか無いなー! ミサーーッ!!」


「あいつらって誰よ?」


って、はやいなー。すぐ横にいたのかよ。


「ふふふ、祭りと言えば音楽だ」


「ま、まさか!?」


「そうだ! あいつらだ!! どうせ、授業はもう終わっているはずだ!! ピーツインを呼んでしまおう!!」


最初にあずさが来た。


「おーー!! あずさーー!!」


「…………」


無言で横を向いた。

プイって言う感じだ。

どういうこと。怒ってらっしゃる。なんでだーー!!

あーーでも、美少女は怒った顔がとっても美しいなあ。

怒っているワリには、青いアイドルのコスチュームをしっかり着込んでいるし。


そして、黄色いコスチュームのヒマリも到着した。


「あずさちゃーん! 久しぶりーー!! とうさんも久しぶりーー!!!!」


ヒマリはうれしそうに俺に抱きついてくれた。

良い子だ!

と、思ったら、あずさも抱きついている。

でも、顔は仏頂面だ。


「とうさんばっかり、こんなに楽しんじゃってさ!!」


怒っているのはそこっ!?


「いやいや、いつも遊んでいるわけじゃ無いよ。それに今日だって、楽しむどころかステーキを一心不乱に焼いているからね」


あずさと共にクザン、ヒマリと共にシュラが来て、ステージの設営をしてくれた。


いよいよ、ピーツインのコンサートの始まりです。


「私達ーー!! 駿河公認アイドルーー!! ピーツイン!!……」


今日は、今川はいないようだ。


「すげーー可愛いーー!!!!」

「うおーー、美少女過ぎるーー!!!!」


子供も大きいお兄さんも盛り上がってくれた。

都城にもピーツインのファンが大勢出来た様だ。

ピーツインのおかげでさみしい祭りが、本格的な祭りに変わり華やかになった。




夜も更けて、祭りの火が消えると急に静かになる。


「アドちゃん、皆帰ったわよ。そろそろ、しまわないとお尻が風邪引いちゃうわよ」


響子さんが、アドのお尻の心配をしている。


「ニャーー!!!! 何ニャ!! これはーー!!」


涙目になっている。

どうやら気付いていなかったようだ。


「なんで、教えてくれなかったニャ!!」


なんで俺をにらむんだよ。


「そういう、ファッションかと思ったんだよ」


俺は言い返した。


「こんなパンツ丸出しのファッションなんて、している人はいないニャ!!」


「いや、いるぞ」


「誰ニャ」


「ワカメちゃん」


「なんで、そんなのばかりスッと出てくるニャーー!!」


俺の胸を漫画のようにポカポカたたいてくる。

パンツは隠してしまったが、浴衣姿のアドはやっぱり可愛いなあ。

おじさんホイホイってやつだこれ。


「さて、夜食はうな重です」


そういうと、あずさが全員分のうな重を出した。

いつの間にか、あずさとヒマリも浴衣に着替えている。

やっぱり、この二人が日本一の美しさだ。間違いない。


久遠さんはおなかが苦しそうだったが、うな重を一口に入れると、とまらなくなっている。

初めて食べると衝撃のうまさだからなあ。

あずさとヒマリは、ほっぺたをまん丸に膨らまして食べている。

本当の双子のようによく似た食べ方だ。

でも、二人とも美少女なんだから、もう少し上品に食べてほしいもんだ。






翌日は、朝から雨だった。

時々雨脚が強くなり土砂降りになった。

無理して移動する事も無いので、道の駅の宿舎でそのまま一日お休みをとる事にし、俺はミサにテレポートを頼み、木田家各地のゴミ処理をした。

宿舎は、番兵さん達が自主的に交替で見張りをしてくれている。

都城の関所の番兵さん達とは仲良くなれたようだ。


夕方宿舎に戻ると、古賀忍軍い組の組頭桃井さんの姿があった。

アドへの報告と言う事だったが、ついでに俺も聞いておいた。

特に気になったのはベッキーという猛将の事だった。

きっとハーフの綺麗な女性だろう。会うのが楽しみだ。

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