目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

0316 当世真田十勇士

「はっ?!!」


豊久殿の表情が険しくなった。


「…………くっ」


家久殿がガックリうなだれた。

これを見て、豊久殿は何かを確信したようだ。


「斬首だな!! 誰か刃こぼれした切れ味の悪い刀を用意しろ!!」


「まっ、待て、待て」


義久殿が豊久殿を止めた。


「止めてくれるな叔父貴、これは息子の俺の仕事だ」


「待てというのに、理由を聞いてみないと、わからぬではないか。家久いったい何があったのだ?」


義久殿は豊久殿を止めているのにも関わらず、豊久殿は配下から刃こぼれしてノコギリのようになった刀を受け取った。


「はっ! 昨晩、私は大殿の手足を結び、棒にぶら下げました」


家久殿はうつむいたままそう言った。

あーそう言えば、つるされたなあ。


「おおそうじゃ! 俺はそれを見て、黒豚の丸焼きと間違えて食おうとしたんだ」


歳久殿が少し笑顔で言った。


「ふむ、なるほど。では、歳久も同罪だな。豊久、かまわぬ。歳久と家久の首をはねよ」


「はっ!!」


「げえっ!!」


歳久殿があわてて口を押さえた。

その歳久殿の首に狙いを定め、豊久殿が刀を振りかぶった。


嘘だよな。

まさか本気かー!!

豊久殿が刀を振りおろそうとする。


「まてー、まてまてーー!! 何をする。やめねーか豊久殿」


俺は、うなだれる歳久殿と家久殿の前に立ち豊久殿を止めた。


――まじかよーー!!


「わが島津家では、当主に不敬を働けば斬首にございます。一族の者ならなおさら配下の手本とならねばなりませんので罰は厳しくなります。ましてや大殿に対しての不敬ならば、父親といえども許すわけにはまいりません。すでに罪人二人は覚悟が出来ているようです。せめてもの情け、私に処刑をお許し下さい」


俺は後ろの二人を見た。

二人の目は、すでに死を覚悟したのか目が据わっている。

豊久殿の目も据わっている。


――あっかーーん! ガチだ。ガチなヤツだーー!!


薩摩の人間は皆こんな感じなのかーー?


「まてまて、豊久殿。歳久殿と家久殿は充分反省している。斬首はやり過ぎだーー」


「いえ、こればかりは譲れません」


「ちっ! 聞けーー!! 義久、義弘、歳久、家久、豊久!! 木田家中で大殿に対する不敬罪などという罪はない。木田家、家中の者ならば俺の言う事を聞けーー!!」


「ははーーっ」


五人は姿勢を正し再度平伏した。


「えっ!?」


「ようやく、大殿に家中の者と認めてもらえましたな! はははは」


義久が笑っている。


「はははははは」


四人も笑っている。

と言う事は、なんだ演技だったのか。

そうか! 俺に木田家家中の者と認めさせるためにうった芝居のようだ。

ビックリさせるなよー。


「お前ら、俺が止めなかったらどうするつもりだったんだよー」


「ふふふ、その時は大殿への忠義のため、二人には首になって頂きました。はははは」


豊久が楽しそうに笑っている。


――嘘だろー!! まじなのかー? 実の父親だぞ!!


駄目だ。本気にしか見えない。

やだよーこの人達、恐すぎる。まあ、そのかわり信頼は出来そうだ。




「大殿、よろしいですか?」


真田が待ちかねたように口を開いた。


「うむ」


「大殿に言われた者達にございます」


真田の後ろに、島津の精鋭五百人を打ち倒した者達が整列した。


「うお、リラ! リラじゃねえか! 来てくれたのか」


リラはデズニーリャンドからの仲間だ。なつかしー。

ゴリラのような容姿の身長二メートルを越す大男だ。


「はっ、子供達も面倒を見てもらっています。ここいらでお役に立ちたいと思って馳せ参じました」


「すげーー、あの人。大殿の知り合いだったのか。道理で強いわけだ」


ヒソヒソ声が聞こえる。

まあ、リラは普通の人間に比べれば異常なほど強い。

だからこそ、来てくれて心強い。


「この者達は、信州真田家主催の武術大会のベストエイトに古賀忍軍から優秀な方を二名推挙いただきそろえました。当世真田十勇士にございます」


「なるほど、猿飛佐助はゾノさん、霧隠才蔵はクロさんですか」


ゾノさんは古賀忍軍い組の班長若園さん、クロさんは、は組の班長黒川さんだ。

リラは三好青海入道用の鎧を装備している。


「リラさんは、優勝したのですよ」


ゾノさんが言った。


「なるほど、その武術大会を見てみたかったですね。しかし十人で島津の精鋭五百人に勝つとはたいしたものです」


「ふふふ」


真田十勇士が、うれしそうに笑っている。

俺は九州雄藩連合が、新政府軍との戦いに手こずる場合を想定して、真田家に十勇士を編成する事を依頼しておいたのだ。

そして、十勇士の為に専用の鎧を作り、真田に渡しておいた。

どうやら、十勇士が揃い案内人を待っているところに北海道帰りの豊久に会ったようだ。


「そうだ、大殿。ゲン殿から土産を渡すように言われていました」


「ほう」


「牛乳に、チーズ、バター、ヨーグルト、生クリームです。そして、なんと砂糖です」


「うおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!」


俺は喜びのあまり大声が出てしまった。

ああ、ようやく砂糖が手に入った。

しかも、生クリームまで。

これで、スイーツ祭りが出来る。

どの位の物量があるか後で確認しよう。


「大殿、立ち話もこの辺で、そろそろ場所を移動しましょうか」


義久の提案で島津邸に移動する事にした。

そうだ、九州について話さないといけない。

ここからが本番だ。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?