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0308 壮観の撤退劇

「離せーー汚ねーぞ。やり直しだーー。てめー達は四人もいた。反則だー! ありえねえ。やり方が汚すぎる。これがお前達のやり方なのかー」


「……」


全く! あおり運転の運転手みたいな言い草です。あきれました。

自分のやった事はかえりみず、相手がやった事だけが全て悪いと言うのでしょうか。

だいたいたった四人にこれだけの戦力で襲いかかり、手出しをしないと言っている人に不意打ちをしておいて、最初にルールを破ったのはそっちでしょうに。


最近こんな人が大勢日本にいますよね。

崩壊した世界ではしょうが無いのでしょうか。

私は、日本はもっとましな国だと思っていました。


でもだからと言って大臣がこれでは……まさか! まともな教育を受けていないからなのでしょうか。

いいえ、この大臣もきっと有名な大学を出ているはずです。

日本の学校は、もう少し心の教育をしてほしいですね。 


「離せーー!! 離せば、おまえを、元帥にしてやる。北海道国陸軍元帥だ。なっいいだろ、助けてくれ。褒美も思いのままだーー! ほらわしと一緒に行こう!」


「はーーっ! 全く、あなたっていう人は最低ですね。本当によく大臣になれましたね」


「ひゃああぁー、はっはっはー、おもしれえー。てめーは政治家に何を期待しているんだ。政治家なんざ、皆こんなもんだ。こんなんだから大臣になれたんだ。自分の事しか考えねえで権力と金と女の亡者だ。それを3文字で書くと政治家なんだ。俺なんかまだいい方だ。現場に来てちゃんと見て指揮しているのだからな」


「あ、あなたでいい方なのですか?! そ、そういえば政治家なんて選挙のときしか姿を見た事がありません」


私は驚きから、もはやあきれて悲しくなっています。


「ははは、政治家で正義をかざす者は力がねえ。何もしねえんだから同罪だろう。しかも、高給をもらって、歳費なども黙ってもらっているじゃねえか。消費税を無くせ、低所得者を守れと言いながら。選挙で何千万も使い、給料も何千万だ。そんな奴が低所得者の味方? はあーっ! 信じている奴は馬鹿か間抜けだ」


くっ。

でも、これはこの大臣の個人的な意見です。

事実とは違うはずです。消費税をぶっ壊せ政党とかありましたよね。

無いかー、有ってくださいよ……泣けてきました。

私は母子家庭で育ちました。母は低所得で私を必死で育ててくれました。こんな奴が政治家として、好き勝手をやっているようでは、日本が住みやすくなるわけがありません。


――?!


今の木田家は低所得者に優しくてとても住みやすいです。

こんな崩壊した世界でも、とても住みやすく感じます。

だから、私は自主的に頑張れています。

それもこれも、大殿のおかげなのですね。ありがたくて泣けてきました。


「てめーら、聞きゃあがれ!!!」


ゲン様が大声で言いました。


「!?」


撤退する、北海道国軍の兵士が振り向いて声の方を見ます。


「遊びはここまでだー!!」


「あ、遊びーーーーーー!!!!!!」


ゲン様の言葉に敵兵も、大臣も伊達様も豊久様も、もちろん私まで驚いています。


「赤穂さん、大臣を離してやってくれ!! いいかーー!! よく聞けーー!! 俺達木田軍は、次は本気で攻める。そっちも本気の装備で来てくれー! 小手調べは終わりだー! むかってくる者には、戦士として全力でお相手する。無論ブレードも使用して、三千の釧路で待機している機動陸鎧を参加させる。正々堂々全力で戦おう。そっちも三つや四つの機動陸鎧でごちゃごちゃ言わねえでもすむように準備してくれーー!!!!」


私は大臣から手を離しました。


「お、おい! 機動陸鎧とは何だ?」


大臣はさっさと逃げればいいのに話しかけてきました。


「貴方の目の前にいるロボの事ですよ」


話したくはありませんが、一応返事を返しました。


「お、おい。これが釧路に三千もいるのか?」


「あー、いますね。ゲン様は今回の戦いは遊びだったようです。まあ、北海道国軍も遊びだったのですからお互い様ですね。次は本気だそうですよ。北海道国軍も遊びじゃ無くて全力で来てほしいそうです」


「ば、馬鹿な! これが北海道国軍の本気だ。弾薬も八割は使い切ってしまった」


あのー、それ、言っていいのですか?

スピーカーから全体に聞こえていますよ。


「またまたー、そんな事を言ってー。油断させるつもりですかー。次は今回の千倍は準備して下さい。戦車も戦闘機も一万ずつは用意して下さいね。次は本気という事は命のやりとり、戦争をするということです。お互い悔いの無いように正々堂々戦いましょう」


「お、お前は知らないのか、そんなに戦車や戦闘機があるわけ無いだろう。日本中のものを集めてもそんなに無いぞ!! ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬ……!!」


あ、貴方だって、日本に核兵器が無い事知らなかったくせに!

大臣様は、何かを考えているようです。うなり声が止まりません。


「あーーっ、言い忘れたーー!! 降伏する者は歓迎するぞーー。しばらくは農業に従事するから、農業をやりたいものは、帯広に移住してくれーー、歓迎する!! 追撃はしねえから、ゆっくり転ばないようにけえってくれーー!!」


逃げる兵士達に追い打ちでゲン様は言いました。

大勢逃げて来てくれるといいですね。


「すげーー、すごすぎる。来て良かった!」


三万を超える兵士達の撤退劇は壮観です。

豊久様が私の横に来て言いました。

心から感動しているみたいです。


「く、くそーー!! 憶えていなくてもいいからなーー!!!!」


大臣が捨て台詞です。って、「憶えておけよ!!」じゃないのですかー。

初めて聞きました。


「はあーはっはっはっー!!!!」


皆の笑い声が北の大地にこだまします。

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