「先生、今一番人口が多いのはどこですか?」
女子生徒が質問しました。
「人口調査はまだ出来ていませんが、私が知る限りでは仙台ですね」
「わーっ、仙台ってお祭りのあった所でしょ。私も行ったわ。アイドルのピーツインかわいかったなー」
ピーツインの言葉に私は、過剰反応してガタンと椅子をならしてしまいました。
ピーツインは青い衣装のあずさと、黄色い衣装のヒマリという女の子のアイドルですが何をかくそう、そのあずさこそ私なのです。
そして、ヒマリちゃんは私のかわいい妹です。私は目を閉じてステージを思い出しました。
そうだ! 美代ちゃんには顔を見られています。バレていないでしょうか?
「ええっ、なに、アスカ君! 私という者が有りながらピーツインが好きなの??」
美代ちゃんが言いました。おかげでライちゃんまで私を見つめます。
「違います!」
でも、バレていないようです。ほっ、よかった。
「そう言えば、アスカさんって、あずさちゃんに少し似ていないか?」
前の席で、中川が小さな声で言いました。
勝手に席替えをして、中川は今、私の前の席にいます。
ちなみに、左隣にライちゃん、右隣が美代ちゃんです。
中川の左隣がノブ君です。
「ばかを言うんじゃ無い! あっちは女だぞ」
私は、なるべく声を低くして男の子の声で言いました。
「ですよねー」
中川にも気付かれなかったようです。よかったー。
「あの二人、滅茶苦茶かわいいよなー」
「俺は、あずさちゃんがいいなー」
「俺は優しそうなヒマリちゃんだー」
教室中がピーツインの話題でザワザワしています。
「ちずかにちてくだちゃーい!」
すぐに静かになります。
さすがは、アメリ先生です。
「では、話を戻します。木田家のまわりには、越前の福井城を本拠地にする織田家、安芸の広島城を本拠地にする新政府があります。新政府は四国も支配していますね。支配していると言ったのは文字通り支配しているからです。九州は群雄割拠の時代が来ていましたが、新政府軍の侵攻を防ぐため団結しているようですね。ですが、いつ裏切られるかという疑心暗鬼の状態で、硬い団結ではないようです。おかげで豊前への侵入を許しています」
「先生、新政府が出来ているなら、木田家も新政府に支配されたらいいのではないですか?」
今川家のグループの男子生徒が聞きました。
「ばかやろー!! あんな奴らに支配されたらお終まいだ!!」
新政府に支配をされてきたノブ君が切れました。
「うふふ、ノブ君、遠慮しなくていいから、そのままどういうことか説明して下さい」
「新政府というのは名ばかりで、首相を名のる鈴木の独裁国だ。住民から全てを奪い去り、男は兵隊にして女は城に連れて行く。子供は放置だ。生きていけないぞ。支配されたいなら、一度行ってみろ!」
「そうですね。だから木田家が戦っているのです。わかって頂けますか? 新政府から日本人を救う戦いをしているのです。木田家は日本を支配したいわけでは無く、困っている人を助けたいだけなのですよ」
「すみません……」
質問した生徒がしょんぼりしています。
「続いて北海道ですが、ここは北海道国を名のり日本から独立をしたようです」
「ええーーっ!!」
これは知らない生徒がいたみたいです。
「ここも、政治家主導のもと独立をしましたが、多くの粛清ののち首相の藤崎による独裁国になりました。
北海道には自衛隊の師団が二つ有り、ここの武器を入手した北海道国は独裁者のやりたい放題です。
北海道以外ではすでに弾薬が底をついて、燃料もないので近代兵器はほぼ使用不能ですが、北海道国軍には武器が豊富で戦車まで使用可能という事です。航空機も使える物があるのじゃ無いでしょうか」
「あの、北海道は農業国です。食糧とかは十分ではないのですか?」
「そうですね。北海道は豊なので安定した暮らしが出来るはずですよね。ですが独裁者は国民を奴隷と考えているようです。結果新政府と同じ事をしているようです」
「……」
教室は静かになりました。
「実は、隕石は本当に地球にぶつかる予定でした。ですが隕石は正義のヒーロー達三十一人の手によって、消し飛ばされたのです。
その中の一人のヒーローがこう言っていたそうです。何故、隕石がぶつかるその日まで普通の生活が出来なかったのだろうかって」
「……」
生徒は何も言えません。
「地球にもどったそのヒーローは、真っ暗な東京の街を呆然と見つめていたそうです。『こんなことなら、隕石がぶつかって地球なんか無くなっちまった方が良かったんじゃないのか』ってつぶやいたそうですよ。皆さんはどう思いますか。生きていて良かったですか。これからどうしたいですか?」
「それでも俺は生きていて良かった。そして、この先もしっかり生きて行きたい」
ノブ君が言いました。
そうですよね、ノブ君は沢山の命の犠牲を見ていますものね。
いいえ、ここにいる生徒全員が見ているはずですね。
「そうですか。じゃあ、この学校で一緒に学びましょう。これからどう生きて行くのか。どう生きたらいいのかを」
とうさんは、こんなことを考えていたのですか。
そのために急いで学校を作ったのですか。
荒くれてすさんでしまった子供達の心を真っ直ぐいい子にしたいのですね。私は、少し感動しています。
「じゃあ、少し休憩しましょう。休憩後は体育館に移動して下さい」
古賀先生が言いました。