マイがようやく戻ってきた。魔物は無事に倒してきたらしい。これ幸いとマイに話題を振る。
ちなみに彼女は今、黒いジャケットの下に小袖と袴を着ている。ルトちゃんが今回の戦いの為に買い与えてくれた物だ。装備名は【サムライの衣装】といい、敏捷値と刀剣系武器の攻撃力にボーナスが得られる。【骨刀ノザラシ】と相俟ってますます武士っぽい姿だ。
「スゲーのって何?」
「デッケェ門だよ。ありゃあ絶対に中に特別なもんがあるぜ」
マイに案内されて地下通路を進んでいく。彼女の言う通り、そこには両開きの門があった。壁は石や土塊で出来ているのに、この門だけ鉄製だ。紋様も凝ったものが描かれており、明らかに差別化が図られている。
「雰囲気的に多分ここはボス部屋だな」
「だね。そいつを倒せばこのダンジョンはクリアって事で良いと思う」
「……うん。それじゃあ色々と準備してから入ろう」
ルトちゃんが教典から幾つものアイテムを取り出す。
そうだ。ルトちゃんが私達にアイテムを使っている間に、マイに私が5レベルになった事を伝えておかないと。
「そういえば、マイ。私さっき敏捷値を100にしたよ。そうしたら新しいスキル手に入れた」
「おー、そうなのか。やったな。そういうオレもさっき
「そうなの? おめでとう!」
それは有難い。これからボス戦なのだ。手数は多いに越した事はない。現実だと付け焼き刃の新技なんてどうしたって不安を伴うが、ここはゲームの世界だ。覚えたての
「……うん、準備オーケー。それじゃあ開けるよ」
ルトちゃんが門に手を掛ける。彼女の細腕に押されて、門が錆びた音を立てながら内側に開いていく。緊張と興奮に身体がやや強張るのを感じながら私達は部屋の中へと入った。