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#48 vs.巨神官イマシュマモン

 門の向こうは石煉瓦の空間だった。壁にも床にも天井にもブロック状に切り抜かれた石が詰められている。床には魔法陣が描かれており、天井には何とも形容しがたい怪物の絵が描かれていた。半ば不定形で鱗に覆われ、象の鼻か触腕のような細長い何かを幾本も生やした怪物だ。空間は広く、大学の講堂くらいありそうだ。


 部屋の奥には一人の巨人が座っていた。金の装飾が施された白のローブを羽織った男だ。手には杖を握り、頭には司教冠に似た帽子を被っている。全体的に神官を思わせる雰囲気だが、五メートルを超える巨躯とボロボロの衣服、髑髏と化したミイラの顔が神聖さを失わせている。


 名前を【巨神官イマシュマモン】というそのエネミーは更に巨大な椅子に座っていた。縁の彫刻が金箔で彩られた石の椅子だ。今や金箔は剥げ、そこかしこが崩れてしまっているが、在りし日はさぞかし華美であったろう事が想像出来る。


「オォ……オォォ……!」


 神官が呻き声を上げる。同時、門が誰も触っていないにも拘らず閉じた。閉じる限定の自動ドアはゲームでは良くある現象だ。室内のギミックを解除するまで脱出が出来ないというシステム。この場合は、敵を全滅させるまで門は開かないというギミックだ。

 くして神官は椅子から立ち上がり、私達へと敵意を向けた。


「……我が名はイマシュマモン。古の神官に名をあやかる者なり。欲に駆られて不死の呪いに囚われた者なり。我らが神ガタノソアの秘宝を守護せし者なり」


 長らく四肢を動かしていなかったのだろう、動く度にパキパキと何かが折れる音が彼の身体から聞こえた。しかし、彼は自身から発せられる音など意に介していない。ただ凝然と自分の敵を捉えている。


「汝らに告げる。ね。神の秘宝に近付く者、何人なんびとたりとも許さず。命乞いは聞かぬ。汝らには死のみを与えよう」

「ハッ、言ってくれるじゃねえか! てめぇがくたばりやがれ!」


 神官の宣告にマイが吠え返す。彼女の言葉を機に神官が疾駆した。マイに接近し、杖を振り下ろす。大振りの攻撃だった為マイは難なく躱し、杖は床を叩いた。

 瞬間、石の破片が弾け飛んだ。神官の膂力が石畳を打ち砕いたのだ。巨体に見合う凄まじいパワーだ。


「オォォオッ!」


 杖を薙ぎ払い、神官がマイを追う。しかしその時、マイは既にその場を跳躍していた。マイの足の下を杖が通過する。落下と同時にマイが剣を振り下ろす。神官は左腕を差し出すと、なんとその前腕で剣を受け止めた。ガキンッと硬い物同士がぶつかった音が響く。


「!? 何だ、この硬さ! 石みてぇだ!」

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