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#76 二番勝負、シューティング

「負けちゃった……」


 大通りをトボトボと歩く。

 私の記憶を懸けた戦い、それは黒星でのスタートとなってしまった。出鼻をくじかれるというのはこの事だ。否が応でも気落ちしてしまう。


「仕方ねえだろ。あの場で努力してどうにかなる勝負じゃなかったしな。向こうの準備が上手うわてだったって訳だ。なら、次はその場で努力して勝てる勝負にすりゃあ良い。まだあと二本残っているんだろ?」

「うん……。うん、そうだね」


 隣を歩いていたマイが慰めてくれた。素直に嬉しい。持つべきものはやっぱり親友だ。

 そうだ。彼女の言う通り、これはまだ一本目なのだ。三本勝負は二本先に取った方が勝ちになる。まだ一本しか取られていないというのに気落ちするのは早い。まだ巻き返せる。


「となると、次の勝負ミニゲームは何にするかだけど」


 出来るだけ私が有利になるものを選びたい所だ。聞いていたスケジュールによると、そろそろこの周辺にゾヘドさんがやってくる筈だ。そのミニゲームは比較的私の得手だった。視線を左右に動かして、それらしいミニゲームを探す。すると、


「こんにちは、『お屋敷シューティング』は如何ですか?」

「マ、マナちゃん!?」


 道端に立つマナちゃんと目が合った。


「どうも、犀芭マナです。本体じゃなくて端末なのは御免ねー」


 ふんわりと微笑むマナちゃん。端末とてその愛らしさは変わらない。笑顔が眩しいぜ……!


「どうしたの? ほっぺたが赤いよ? ふふふ、可愛らしい」


 あっ、そんなマナちゃんが私に手を伸ばして……私の頬を撫でるなんて、そんな……! その美しい指先が穢れてしまいます! 畏れ多いです! ああでも、やめないで欲しい。至福……!


「こらあ、二倉すのこ! マナ様に近付き過ぎだぞ、それは!」


 なんてドキマギしていたらゾヘドさんが現れた。人混みを突っ切って、真っ直ぐにこちらに迫り寄ってくる。


「ゾヘド、近付いたのはマナの方からなんだけど。文句あるのかなあ? ん-?」

「いいえ文句などある筈もありませんスミマセン生意気ナマ言いました!」


 笑顔で怒気を表すマナちゃんに、ゾヘドさんはすぐさま直角に腰を曲げて頭を下げた。電光石火の謝罪体勢だ。相変わらずマナちゃんが絡むと知能指数下がるな、この人。まあそこが可愛いんだけど。


「それで、マナちゃんはここで何を?」

「ここのミニゲームの受付兼案内人をしていたんだよ。どう? 二人共参加してみない?」

「あっ、は、はい勿論!」

「マナ様が働いているイベントに参加しない訳にはいきません」

「おい! 俺も俺も! 参加するぜ!」


 ゾヘドさんと共に首肯すると後から追ってきたラトも混ざった。三人の参加表明を聞いてマナちゃんが頷く。


「それじゃあ、ルールを説明するね。そこの魔法陣に乗ると空間転移されるよ。転移先はとあるお貴族様のお屋敷においてあるトロッコ。そのトロッコに乗ってお屋敷の中を決められたレールで走りつつ、出現するエネミーを撃ってね。強そうな奴程ポイントが高いから」


 マナちゃんが指差した先の床には三つの魔法陣があった。あそこからゲームのステージに転送されるらしい。貴族の屋敷に行くという話だけど、選べるステージの種類は三つあるという事なのだろう。


「んで、これがシューティング専用の武器ね」

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