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#80 二本目の勝者

「あばっばばばああああああ――!」


 天井にぶら下がっていた生ける屍ゾンビが私達の背後を襲った。服装は如何にも貴族然としているが、腐敗した顔と手足がそれを台無しにしてしまっている。恐らくはこの屋敷の関係者だ。

 驚かし要員なのか、ゾンビはここでは攻撃してこなかった。けれど、今のでゾヘドさんは完全に委縮してしまい、あろう事か私に抱き着いてきた。


「ぴゃあああああ!? ゾヘドさん、何を!?」

「ひええ、ひえええええっ!」


 きゃ、きゃきゃきゃ可愛きゃわいい……! 何だこの人可愛いな!


 いやいやいや興奮している場合じゃない。今はシューティングに集中しないと。ああでも、抱き着かれたままじゃ狙いが定まらない。かといって無理に引き剥す事も出来ない。そんな御無体な真似を推しにする訳にはいかない。

 ていうか、抱き着かれてるの恐縮ではありますけれども至福で御座います。心臓がバクバクとヤバい。


 あああああもうどうにもならない!





「はっはぁー、スコア296ポイント! ここは俺の勝ちだな! ……オイどうした、そんなに疲れた顔をして」

「いや……その……昇天にそうなのを必死に堪えていた結果でして……」

「?」


 ミニゲーム終了後、朱無王国の道端に満身創痍の私達二人がいた。両膝両手を石畳に着けて肩で息をしている。ラトとマイも私達とほぼ同時に帰ってきていた。


「そっち、ステージ何だった?」

「武家屋敷で化け猫とか大狸とかが出てきた」

「妖怪を撃ってきたって事?」


 ナニソレ。銃のシューティングゲームで妖怪が敵ってどんな組み合わせ? ある意味ではこちらと同じお化け屋敷ではあるんだろうか。

 それはともかく、結局私のスコアは101ポイントだった。ラトには負けてしまったのだ。悔しい。


「オレは94ポイントか……。クソ、思っていたより得点取れなかった。悪ぃ、すのこ」

「ううん、私も全然だったから。それに……」


 ゾヘドさんのポイントは77。私やラトは元よりマイよりも低い。マイは成果を上げられなかった事に済まなそうにしているけど、肝心要のゾヘドさんとの勝負には勝ったので問題ない。


 二本目は私に軍配が上がった。

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