「あ、有難う御座います!」
「まあ、記憶に関してはこっちでも意見が割れていたけど。でも、すのこちゃんが勝ったんだからどっちにしろ何も問題ないよね。ゾヘドもこれで文句ないよね?」
「……はぁい……」
マナちゃんにそう言われたもののゾヘドさんは不貞腐れた顔だ。とはいえ、これで言質は取った。
良かった、これで私の記憶は無事だ。あの夜のマナちゃんの新たな魅力は私の胸の中に確かに残り続ける。更には推しの計画に貢献する事も出来るのだ。
「はー……」
自ずと吐息がと漏れる。胸を撫で下ろすとはこういう状態を言うのだろう。実を言うと、「負けたらどうしよう」とずっと不安だったのだ。自分の大切な何かを懸けての戦うなんて真似は生まれて初めてだった。ああ、本当に良かった。
「でも、それだけじゃあ駄目だよねえ、ゾヘド」
「へ?」
なんて安堵していたらマナちゃんが小悪魔的な笑みを浮かべた。
「人の記憶を奪おうとしていたんだよ。なのに、自分は負けても何も失わないなんて公平じゃないよねえ。お詫びの品くらいあげても良いんじゃないの?」
「へっ、えっ! あ、あの、それはっ!」
「あ、いえいえお構いなく……!」
狼狽えるゾヘドさんに私も一緒になって狼狽える。いやいやいや、この安堵だけでも充分だというのに、詫びの品なんてそんなの
なんて私の狼狽に反して、ゾヘドさんは口をぎゅっと結んで少し考えていた。ややあって『
「これ、あげる。【ダマスカスの幻想剣】」
「えっ、えええええっ!?」
それはアイテム比べの時に彼女が出したレア武器――あの【ダマスカスの幻想剣】だった。
「そそ、そんなの貰えませんよ! 私なんかが、ゾヘドさんの……!」