「まつろう」とは「服従する。付き従う」という意味である。つまり「まつろわぬ民」とは何らかの勢力や権力者に従わず、逆らう民の事である。
チクタクマン社が
幻夢境の文明は停滞している。神々が幻夢境の文明水準を産業革命以前に留めさせているからだ。特殊な力を使えば目覚めたままで幻夢境に入る事が出来るが、その場合、持っていた懐中電灯は松明に、銃はナイフか剣に変わってしまう。そこまでして神々は徹底的に文明の発展を拒んでいた。
しかし、それに幻夢境の住人達が賛同しているかといえばそうではない。
幻夢境は発展性が乏しい。更にはあくまで夢の世界である為、現実世界の人々の夢に依存する。夢を見る者がいなければ創造を為せない。故に住人達は常に参入者に飢えていた。特に若者であればその傾向は顕著だ。
チクタクマン社が『旧支配者のシンフォニア』の世界観を幻夢境に創造すれば、それは新たな資源となる。物は増え、人口も増え、大地すらも増える。異なる文化が入ってくれば他都市の文化も流動する。良い事尽くめだ。原住民にも配慮して、朱無王国を興す場所は誰も住んでいない土地を選んだ。
だが、そこまでしても反対する者は現れるものだ。いつの時代、どの地域であろうとも古きを望む者、変化を
賛成派と反対派、双方の意見はどれだけ言葉を交わそうとも交わらず、平行線のままだった。そしてついには抗争にまで発展した。
チクタクマン社はその抗争に便乗した。賛成派に『
それでも、反対派は諦める事はしなかった。僅かな生き残りを連れて、自らを「まつろわぬ民」にしてでも、彼らはまだ執念の火を灯し続けた。どうにかチクタクマン社の計画を阻止しようと画策した。
ヒントになったのはセレファイスからの
しかし、今回はテストプレイ。プレイヤーは一〇〇〇人しかいない。そこに自分達が混ざってしまうのは不自然だ。目立ってしまえば捕らえられ、目論見は潰える。
そこで彼らが目につけたのはNPCだった。
簡易AIによって管理されている街の住人やエネミー。その中に入り込む事にしたのだ。何でもないNPCを装い、情報収集に努め、虎視眈々と機会を狙っていた。そして今日、行動を起こした。
八体の
狙うは一つ。