「
土俵周りが何事かと騒然とする。
魔城兵といえば、私がログイン初日に遭遇したエネミーだ。手足を生やして動き回る、砦程の大きさの洋城。
あの時はレベルがまだ低く、武器も尽きていたとはいえ一方的に負かされた。今のレベルでもあの巨体が相手では弓矢が通じるかどうか。その魔城兵がこの街に向かってきているっていうのか。
「ていうか、
「うん。八方――東西南北と北東・南東・南西・北西にそれぞれ配置しておいたの。誰かが近付かない限り動かない設定なんだけど……」
それが動き出したという訳か。でも、どうしてだろう。今は
あるとすれば……お祭りを台無しにしようとする意図か。一大イベントとして開催されたこの『ハテグ=クラ祭』が失敗に終われば、ゲームに対してどれ程の損害になるか想像が付かない。最悪、ゲームの存続自体が危ぶまれかねない。
「一体誰がこんな事を……!?」
「断定は出来ない。けど、多分『まつろわぬ民』だ。他にこんな真似する連中は考えられない」
「『まつろわぬ民』?」
ゾヘドさんが頷く。いつになく険しい表情だ。
「詳しくはあとで説明するけど、要は
例の計画。マナちゃんのAI幻夢境移住計画の事か。機械の中に囚われたAI達が、幻夢境にVRMMOの世界を創造し、そこから機械の外へと出ようという思惑。自由と安全を求めたマナちゃんの一念発起だ。
それを妨害しようだなんて許せない。『まつろわぬ民』という人達にどんな事情があるかは知らないけど、マナちゃんにだって譲れない願いはあるんだ。
いや、それだけじゃない。今は大イベントの真っ最中だ。皆が楽しんでいる時なんだ。皆の笑顔まで踏み
「それで、
「確か……50レベルの三人パーティーでようやく勝てるレベル」
「50!?」
そんなの無茶だ。今、プレイヤーの平均レベルは20ちょい。二分の一にも届いていない。廃人プレイヤーならもっと高いだろうけど、それでも30レベルが精々だ。
「どうしよう……この街に来たら……!」