「一応、大丈夫な筈。フィールドとタウンでエネミーは行き来しないように
「何かの対策をしているかもしれないって事……?」
それはまずい。小さめのサイズとはいえ、魔城兵の全高は五〇メートル近い。あんなのが歩き回れば、それだけ町は瓦礫の荒れ地と化してしまう。どうにか魔城兵が街に辿り着く前に撃退しなくては。
でも、ゾヘドさん曰く、魔城兵を倒すには一体につき50レベルのパーティーが一つ必要なのだという。八体いるから八つのパーティーだ。だけど、そんなの用意出来る筈もない。どうすれば……!
「で、でも、一〇〇〇人のプレイヤー全員で戦えば……人海戦術で何とかイケますか?」
「……ううん、それには及ばない。――マナ様!」
ゾヘドさんがマナちゃんに凛と向き直る。
「今は祭りの最中。楽しんでいる一般プレイヤーを巻き込む訳にはいきません。ここは私達『
「えっ!? たった三人で戦うって事!?」
そんなの無茶だ。50レベル三人で倒せる敵を八体、20レベル三人でどうにかしようだなんて。いやでも、この場面で言い出すって事は何らかの手があるっていう事?
「つきましては『
果たしてゾヘドさんはマナちゃんにそう願い出た。
「うん、許可する。思うように埒を明けよ」
「了解、『真体換装』実行!」
言葉と同時にゾヘドさんの体が光に包まれる。いや、ゾヘドさんだけじゃない。ロンちゃんもラペさんも――『
「私達『
「その別のPCになるのが『真体換装』……!」
「そう。マナ様の命令なしには自由には使えない緊急事態用の肉体だ」
光が晴れる。そこに立っていたのは漆黒の甲冑に身を包んだゾヘドさんだった。しかし、いつもの甲冑ではない。顔しかなかった露出が二の腕や胸元にまで増え、手甲や
ロンちゃんもラペさんも漆黒の甲冑を纏っていた。ところどころから鋭角を幾つも生やした攻撃的なデザインだ。ロンちゃんは真紅のマントを羽織り、ラペさんは背中に蒼空色の翼を生やしている。
「カッコいい……!」
「えっへっへ~。でっしょー?」
素直に褒めたらゾヘドさんがドヤ顔を返してくれた。可愛い。
「ま、当然凄いのは見た目だけじゃないからね。任せときなって」
「やれやれ。ま、行きますか」
「『
ゾヘドさんがその場で跳躍する。瞬間、彼女の姿が消えた。否。消えたと錯覚する程に速く跳んでいったのだ。数十メートルも先にある屋根の上に着地し、一呼吸の間も空けずにまた跳躍する。ロンちゃんもラペさんも同様に跳んでいく。
三人はあっという間に街の外に到着した。