『先の相撲から察するに、油断ならぬ実力者だと見受ける。であれば、生半可な者をぶつけても意味は薄かろうな。
……奴らは我が相手をする。お前達は女王に仕留めろ』
白海月――シリウス・マギとテップが私達と対峙する。どうやら彼は戦況を二局面で同時進行するつもりのようだ。民間人NPC達がマナちゃんへと押し寄せる。
「マナちゃん!」
「すのこちゃん、駄目! そいつに集中して! そいつ、かなり強い!」
マナちゃんの方を行こうとしたら、そのマナちゃんに制止された。シリウスが私とマナちゃんの間に立ち塞がる。無言でありながら全身から発する威圧が「ここは通さない」と雄弁に告げていた。
「……玉座の裏には地下に続く階段が隠されているの。『まつろわぬ民』の狙いはそこを下りた先にあるサーバーを破壊する事だと思う」
「誰か一人でもマナちゃんを突破して、地下に着けばあの人達の勝ちって魂胆ね」
「シリウスはそれまでオレらの足止めって訳か」
マナちゃんはああ言ったけど、だからといって拘泥している暇はない。彼女の大鎌は
「……だったら、わたしが一掃する!」
ルトちゃんが一歩前に出る。
彼女のレベルは30。私より10レベルも高い。当然、習得しているスキルは私よりも多い。その中には、
「【
上級スキルも入っている。
天にかざしたルトちゃんの手から巨大な炎の球体が現れる。直径十メートルはあるだろうか、天井が高い謁見の間でもギリギリ入る大きさだ。
ルトちゃんの手の動きに合わせて炎球がNPC達へと落下する。彼らの強さがどれ程かは分からないけど、元は民間人だ。この大きさの炎を防ぐ術などある筈がない。そう思っていたのだけれど、
『【
水壁が炎球を防いだ。
突如として現れた水壁はシリウスを中心にして渦を巻き、炎球の進路を塞いだ。炎球が水壁と衝突して相殺し、掻き消される。
「上級魔術……! シリウスの奴も魔法使いだったのか!?」
「……ううん、違う! あれ見て!」
シリウスの隣には人形が立っていた。身長四〇センチメートル程度の日本人形だ。あれは見た事がある。先のアイテム比べでラトが出してきたレア物――『受肉人形・
『キ、キキキャハハハハハー……!』
似が甲高い声を上げたと思ったら、溶解した。一旦ぐちゃ混ぜにした絵の具のようになり、みるみる内に肉体を再形成していく。そうして完成したのはルトちゃんそっくりの女の子だった。
だけど、色が違った。ルトちゃんの髪は
「ルトちゃんが二人……!?」
「……【
【