ポタポタと血痕が床に出来る。
だけど、その血痕は心臓から垂れたものではない。私の左手だ。最早短剣を避ける事は叶わない。そう悟った私は咄嗟に左手を盾にしたのだ。短刀は左掌を貫いたけど、心臓までには届かせなかった。
見れば、左手首から先から灰色になっていた。欠損ダメージを受けた証拠だ。全年齢フィルターが掛かっているから灰色表現で済んでいるけど、リアルだったら左手がどうなっているのか、想像もしたくない。
「っ、この――!」
シリウスを蹴飛ばす。反動で短剣が抜け、そのまま距離を離す。
「――【
左手が淡い緑色の光に包まれる。回復系スキルの光だ。実は初級魔術は全部、
ともあれ、左手は回復した。これで両手で戦える。
『また殺せぬか。素晴らしい……否、凄まじい反射能力だ』
シリウスが無機質な目で私を捉える。
『我が宿主は貴様を倒す為に修練を積み、技を鍛えてきた。これからその全てを使って、我が貴様を討ち下す』
「やれるものなら!」
矢筒から六本の矢を取り出す。【銀の矢】が二本、【金の矢】が二本、【金剛矢】が二本だ。
【銀の矢】には破魔の追加効果があり、魔性系のエネミーに追加ダメージ。
【金の矢】には魔力が通り易いという設定があり、攻撃力に精神値を追加。
【金剛矢】は単純に攻撃力が高い。ゲーム中最強の矢だ。
値段は当然に馬鹿高いが、弓で飛ばすのではなく矢殴りで使うのであれば二本ずつの購入で良い。高級品なので耐久力も高く、滅多な事では壊れない。片手に一本ずつの計三本、両手で合計六本。これが矢殴りの最終形態だ。
「大盤振る舞いだっ!」
床を蹴り、一直線最短距離でシリウスに肉薄する。私が全力で走ったら追い付ける人なんてこのゲームにはいない。一瞬でシリウスの懐に入り、両手二撃を腹部に叩き付ける。
『ぐぬうっ!』
「効いた!」
シリウスが口から血反吐を零す。どうやら彼は魔性系のエネミーに属するようだ。恐らくは
「追撃!」
更に胸部に一撃、下顎に一撃を入れる。脳天を揺さぶられたシリウスの足元がふらつく。その停滞を隙にもう一撃を打ち込もうとする。が、
『させるか! ――【