『
シリウスが連続高速移動を開始する。この技を前に目で追う行為は無意味だ。それに、最後には
「左後ろ!」
後方左側に立ったシリウスを注視する。最後の移動はそこからとなる。ならば、そこにカウンターを打ち込めば良い。そう思って右ストレートを打ち出した。
『――【
だが、その程度の対処はシリウスの想定内だった。私の眼前に立つと同時にスキルを発動。更にもう一歩移動する。私の右ストレートを躱し、右脇腹に現れる。脇の下は人体急所の一つだ。そこを突いて【殺意の証】を発動させようという魂胆なのだろう。
けれど、その移動すらも私は読んでいた。
「しっ!」
『ぬっ!』
左踵で回し蹴りを放つ。私を刺す態勢に入っていた為、シリウスは防御が遅れ、左側頭部に踵を受けた。更には人体急所であるこめかみに命中したからか、赤黒い光が迸った。【殺意の兆し】だ。
体勢を崩したシリウスがそのまま床に倒れる。――否!
『――【
床に倒れたのではない。スキルを発動する為に床に触れたのだ。
足元の影全てが槍と化し、天に向かって突き出る。足の踏み場もなく刺してくる光景はまさしく針山地獄の再現だ。
全範囲を攻撃する技を前に回避は不可能だ。……上に逃げる以外には。
『貰ったぞ――!』
咄嗟に跳躍した私はどうにか影槍を躱す事は出来た。けれど、宙に浮いた事で身動きが取れなくなってしまった。霧散する影槍の中、シリウスが落下する私に向けて短剣を突く。
今までの私だったらそのまま為す
「――【浮遊】!」
『何!?』
空中を蹴り、落下する事なく短剣を躱す。
【
この靴に埋め込まれた八つの【大呪魂】が幽霊以上に重いもの――人間さえも【浮遊】させる。
「やあ――っ!」
躱した姿勢から宙返りをして、シリウスの両肩に矢を打ち込む。短剣が私を追うが、空中を跳ねる私に届きはしなかった。
空中を駆けて助走距離を作り、そこから一気にシリウスに向かって疾駆する。この身こそが矢の如く、超加速した私の一撃でシリウスの胸部を穿つ。その威力にシリウスの体が耐えられず
『ぐぬぁあああああっ!』
「まだまだぁ!」