ー『交流試合』の日。俺は朝からちょっと『遠出』していた。…というのも、若獅子頭と試合は『大トリ』になるので夕方くらいを予定しているのだ。
だから、昼くらいまで自由時間なので『やるべき事』と『やりたい事』を済ませようと思い、まずは第2都市惑星『リコア』に来ていた。
『ー次ハ、第8エリア入口デス』
そうこうしている内に、リニアは『目的地』があるステーションに到着した。
ー…えっと。
そして、ステーションを出た辺りでもう一度ルートを確認する。…あ、『アレ』だな。
確認の後、『目的地』に向かうバスのステーションを発見したので歩いていく。
ー…すると、ステーションで良く見る待合の長椅子に誰かが腰掛けて居るのが見えた。
「…っ。……」
「……」
その人物…『物静かな感じ』の女性はこちらに気付くと会釈して来た。なので、俺も返して少し距離を開けて長椅子に座る。
ー直後、端末にメールが来た。
『ーお疲れ様です、マスター』
それを確認し、俺は『お疲れ様』と返信した。
ーそれから少しして、隣に座る女性が端末を起動した。…まあ、案の定隣に座る人は変装したクローゼだった。
実は、今から向かう場所に同行してくれるのだ。…つまり、『そこ』は防衛軍の関連施設という事だ。
『ー間モ無ク、第8エリアサウスシーパーク(南部海浜公園)行キガ到着シマス』
ー…お、来た来た。
アナウンスが流れてほんの少し経った頃、バスがやって来た。そして、彼女と俺だけがそれに乗り込む。…まあ、そろそろ本格的な『サマー』が近い時期とはいえ今首都惑星では伝統の『フェスティバル』がやってんだから、行く人は皆無に等しいだろう。
『ーご利用ありがとうございます。第8都市サウスシーパーク行き、発車致します』
そんな事を考えていると、ドライバーがアナウンスを流しバスは出発した。
ーそれから、バスに揺られる事数10分。
『ー次ハ、-エイトシェルター-前。エイトシェルター前デス』
バスの電子アナウンスが、『目的地』を告げた。
ー『エイトシェルター』…正式名称は、第2都市惑星第8エリア市民用避難シェルター。
…んで、何でこんな『平時』にそんな場所に向かっているのかと言うとー。
「ー…っ。おはよう、2人共」
俺と彼女は、偶然を装いつつシェルターの管理ビルに入る。…すると、受付ロビーには帝国政府宰相のブラウジス閣下が居てこちらに挨拶して来た。
「おはようございます、閣下。…すみません、こんな朝早くにお越し頂いて」
「…なに、気にするな。
さ、まずは『身なり』を整えなさい。『ルーム』は確保してある。
君、案内を」
…いくら『このタイミング』しかなかったとはいえ、また閣下から提案して頂いたとはいえ今日までタイトなスケジュールをこなして来た閣下に、『此処』まで来て貰うのはかなり申し訳なかった。…これも全部、『カンパニー』のせいである。
だが、閣下は特に気にした様子を見せずに『変装』するように言って来た。
「本当、何から何までありがとうございます」
「右に同じくでございます」
「…お2人共、こちらへ」
俺達は閣下に感謝しつつ、護衛の人の後に続いた。…尚、ビル内はとても静かだった。
それもそのハズ。何せ、本日に限り此処の局員は『ゲスト担当』以外『特別休暇』となっているのだ。
はあ、本当にいろいろな人に助けられてるな。
「ーこちらです」
しみじみと感じていると、護衛の人は1つルームの前で止まった。
「「ありがとうございます」」
俺達はきちんと礼をし、中に入る。…まあ、俺は『マスク』を着けるだけだし彼女も『別の偽装』に切り替えるだけなので、『身なり』は素早く整った。
ーそして、再び護衛の人に案内され俺達は堅牢な作りのゲート前に到着した。
「ーそれでは、ゲートを開きます」
『担当』の局員がそう告げて端末を操作すると、ゲートはゆっくりと開いていく。
…いや、本当に厳重な警護体制だな。
そんな事を考えながら、ゲートが十分に開くのを待ち…この間出会った『トオムルヘ』のゲスト達が避難している『特殊なエリア』に、閣下達と共に足を踏み入れた。
「ー…っ。これは……」
「………」
直後、俺達の視界に広大な『ビーチ』が飛び込んで来た。…勿論、それが『フェイク』である事に直ぐに気付いた。
「ー凄いでしょう?これは少しでも『ゲスト』達のストレスを緩和する為の設備なんです」
すると、中に居た別の『担当』の人が自慢げに近付いて来た。
「…いや、凄い『心遣い』ですね」
「…お見それしました」
「ありがとうございます。
ーようこそお越しくださいました。どうぞ、こちらへ」
「ありがとう」
「「ありがとうございます」」
そして、今度はスタッフの案内でビーチを進み端っこにある『休憩所』…面会ルームに向かう。
「『ー失礼します。-お客様-をお連れしました』」
「…(…すげ、何時の間に『トオムルヘの言語』を)」
『スムーズな異国言葉』で要件を告げるスタッフに、俺はかなり驚く。…勿論、セリーヌが作成した『会話学習システム』は閣下や此処の外交官、そして『担当』スタッフ等に送っているがまさかこんな短期間でマスターしているとは思っていなかった。…いや、ナイヤチの人って本当に勤勉で『配慮の上級者』だよなぁ。
『ーあ、はい。どうぞ』
心底感心していると応答があったので、俺達はルームに入る。…そこもまた、『外の景色』にマッチした非常に落ち着けるデザインの空間だった。
「ー…あっ!?キャプテン・プラトーッ!」
直後、座っていたディノー外交官は非常に驚きつつ素早く立ち上がりこちらに近付いて来た。
「お久しぶりです、ディノー外交官。…お元気そうで何よりです」
「…ありがとうございます。これも、全て貴方や銀河連盟の勇猛な戦士達のお陰です」
久しぶりの再会に、俺は心からの言葉を送る。すると、外交官は俺の手をガッチリ握り涙を流しながら感謝の言葉を返して来た。…というか、前に比べてかなり『レベルアップ』しているな。
「…っ」
「「……」」
「ー…そうカ。貴公ガ我々の『命の恩人』でアルキャプテン・プラトー殿か」
俺は外交官の『語学力』レベルに驚き、スタッフはもらい泣きをし、閣下とクローゼは凄く誇らしげに俺を見る中ふともう1人の『ゲスト』…このナイヤチの言葉を借りるなら、『威風堂々』とした30歳後半くらいの男性が感謝した様子で口を開いた。
「ー…ッ!シ、失礼シマシタ、『陛下』ッ」
「「「…っ」」」
外交官は我に返り、その男性…『トオムルヘ前政権トップ』に頭を下げた。まあ、予想通りだったので閣下や俺達はそんなに驚かなかった。…というか、俺は別の事に驚いていた。
「…サて、まずハ自己紹介をさセテ頂く。
ートオムルヘ星系国家元首ノ、ソラン=パーファシーだ」
パーファシー陛下は、ゆっくりと立ち上がり堂々と名乗った。なので、こちらも名乗る。
ーそして、互いに席に付き『話し合い』が始まる。
「ー…まずハ、改めて救援二感謝スる」
「『勿体ないお言葉です』」
「『右に同じくです』」
陛下は深い感謝を示されたので、閣下と俺は帝国流の礼節を持って返す。
「…出来ル事なラ、何か『形』を持って応え
タイ所ダが…」
「……っ」
すると、陛下は申し訳なさそうにそんな事を言う。…その時、クローゼはピクッと反応した。
「……。『…でしたら、-1つ-要望がございます。
ーもし、-貴国の解放を成功させた時-どうか、-秘宝の手掛かり-を探す許可を頂けませんか?』」
「ーっ!?」
「………」
なので、本題を切り出した。…まあ、当然向こうは仰天した。