「それでは諸君、ミーティング終了と共に行動を開始せよ!」
『ハッ!』
「ー以上をもちまして対策本部のミーティングを終了します」
そして、司令のオーダー通りミーティングが終了すると同時に部隊の責任者達は順々にルームを出て行った。…けれど、オットーとユリアは未だその場に留まっていた。
「ー済まないな。わざわざ残って貰って」
すると、司令は2人に近く。…そう、事前に司令官が『ミーティング終了後に少し時間をくれないか』と言って来たからだ。
「いえ。元々、イリーナ情報班長を待つつもりでしたので」
「どうか、お気になさらず」
「ありがとう。
ー『2人共』、入ってくれ」
そう言った司令は、ふと端末を使い『入室』の許可を出した。
『ーハッ!失礼致しますっ!』
『…し、失礼致しますっ!』
すると、エアウィンドウから『場馴れした感じ』の壮年の男性の声と、『ガチガチ』になった若い女性の声が聞こえ直後にミーティングルームのドアが開いた。
「遠い所、また遅い時間に良く来てくれた」
「いえっ!恐縮でありますっ!」
「…き、恐縮です」
入って来た2人に、司令は労いの言葉を掛ける。勿論、白衣を来た壮年…恐らく軍医か研究職だと思われる人物はきびきびと応える。
…だが、後ろに居る同じく白衣を着たライトパープル色のショートボブの若い女性はびくびくしながら応えた。
「紹介しよう。
こちらは、ナイヤチ星系防衛軍科学研究所所長のクローデル博士。
その後ろに居るのが彼の『弟子』である、エリゼ=アルジェントだ」
「お初にお目に掛かります」
「…よ、宜しくお願いしますっ!」
司令に紹介された2人は、対照的な感じでお辞儀をした。
「そして、こちらがー」
「ーっ!あの『第1分隊』の…」
「…ふぇっ!?」
それから、司令はオットー達を2人に紹介する。…それを聞いた2人はあからさまに驚いた。
「…さ、紹介も済んだ事だし適当な所に座ってくれ」
「「「ハッ!」」」
「…ひゃ、ひゃいっ!」
そう言われたので、オットーとユリアは司令席に近い席に座りクローデル所長は対面に素早く座る。…エリゼと呼ばれた女性は、所長の隣にそっと座った。
「…では、本題に入るとしよう。
ー…実はな、こちらのアルジェント研究員を諸君ら第1部隊の『科学解析メンバー』に加入させたいと思っている」
「「…っ!」」
司令は、単刀直入に言う。…当然、オットー達は驚愕した。
「勿論、既に博士と当人からも良い返事を貰っている。…後は、『そちら』の返事だけだ」
「…あの、司令殿。質問しても宜しいでしょうか?」
まず、オットーは『一番大事』な事を確認するべく挙手をした。
「勿論だ」
「ありがとうございます。
…そもそも、どうして『決定事項』ではなく『相談』の段階なのでしょうか?」
ーそう。第1遊撃部隊は、『連盟防衛軍所属』の部隊だ。つまり、増員等の決定権は『そこ』の本部が持っているのだ。…それなのにー。
「無論、連盟防衛軍本部にも許可は申請した。…が、本部は『最終的な判断は-向こう-に委ねるように』と返信して来たのだ」
「……」
「…つまりは、『エージェント・プラトー』に判断を委ねるという事ですか」
「ああ。…だが、君達の意見も聞いておきたい」
「…ならば、まずはそちらのアルジェント殿の『履歴』を見せて頂きたいと思います」
司令の言葉に、オットーは冷静に答えた。
「まあ、当然だな。
ー2人共、宜しいかな?」
「ええ」
「…は、はい……」
博士の方は堂々と頷くが、彼女の方は消え入りそうな声だった。…こんな場所に連れてこられた挙げ句、いきなり『面接』が始まったのだから当然だろう。
そして、司令は部下にタブレットを持ってこさせ2人は『中』を確認する。…そこには、彼女のデータが入っていた。
「ーなるほど、分かりました。…ちなみに、この『アビリティ』の部分ですが医療班の元に転送しても宜しいでしょうか?」
「…っ!は、はい…」
「賢明な判断だな。
…それで、隊長と副隊長はどう判断する?」
司令にそう聞かれた2人は、互いに顔を見て頷き合う。…そして、代表して隊長が口を開く。
「我々としては、異論はありません。
ーいや、是非とも来て頂きたいと思っています。…きっと、エージェント・プラトーも同じ結論を出すでしょう」
「間違いないかと」
「……え?」
「ー隊長殿。…もしよろしければ、どんな所を見てそう感じたのか聞いても宜しいですか?」
オットーの言葉に、ユリアは同意し言われた当人は耳を疑った。…すると、所長は疑問を口にする。
「…そうですね。
ー…ここにある『動機』の内容を見て『将来起こる-危機-に備える意思』を感じました」
隊長は再び『履歴』を表示し、下部スペースの『志望動機』を見ながら説明する。
「…っ」
まさか、そこを評価されると思っていなかったのか当人は意外な顔をした。
「そして、もう1つはアルジェント研究員の取得している『サブアビリティ』ですね。…実は、エージェント・プラトーは『こういう人材』を探していたのですよ。
勿論、今回の『お礼』として『アーツファイター連盟』からとても優秀な方を派遣していただく事になっていますが、『多い』に越した事はない…と、彼は言うでしょう」
「…ほう」
「…これは、随分と高い評価ですね」
「……」
これには、当人もちょっと嬉しい顔になる。…何故なら、自分が今まで積み重ねて来た『もう1つ』の努力が誰かの為になると分かったのだから。
「以上が、私達の意見となります」
「…良く分かった。…後は、『総責任者』の意思確認だけだが君達のおかげで極めて『前向き』だと分かった。
なので、我々は『賛成』の方向で手続き等の準備を進めておく」
「感謝します、司令閣下。
では、当人にもそのつもりで準備をさせます。…それで良いかな?」
「…っ!は、はいっ!大丈夫です!」
「…では、これにて『顔合わせ』を終了する」
「「はっ!」」
「「はいっ!」」
当人が『了承』したので、『面接』も終わった。…ちょうどその時、イリーナも後片付けを終えたので直ぐに解散となるのだったー。
○
ーSide『サポーター』
『ー…以上が、-そちら-に伝えてしたい事です』
「畏まりました。
医療班へは至急に。マスターへは明朝に必ずお伝えします」
『お願いします。ではー』
ナイヤチ星系軍の軍港内にある『ドラゴン』では、オットーとカノンが連絡を取り合っていた。
そして、それが終わるとカノンは直ぐに『トリ』に連絡を入れる。
「ーこちら、『ドラゴン』。ホーク医療班長、応答願います」
『ーはーい、こちらアデル。どうしました?』
少しして、モニターにアデルが映し出された。
「今、宜しいでしょうか?」
『大丈夫ですよ。…もしかしなくても、何か大事な話ですか?』
「はい。…と言っても、『新しい仲間』に関する事ですのでご安心を。
それと、出来れば残りの方々をお呼び頂けますか?」
少し不安な表情をする班長に、カノンは素早く安心させる。それと共に、メンバーを召集するように頼んだ。
『……へ?…と、とりあえず、ちょっと待ってて下さいー』
班長は安心するものの、直ぐに困惑する。だが、至急メンバーに召集を掛けた。…すると、少しして医療班全員がモニターに映る。
「ー皆様、ご休憩中に失礼致します。
実は先程、レンハイム隊長より『新規サブクルー加入』の報告を受けました」
『ーっ!?』
『…え?マジですか?』
そして、カノンは改めて先程の通信の事を話す。…当然、医療班メンバーは唖然とした。
「まあ、あくまで最終的な決定はマスターと直属の上司であられるブラウジス宰相閣下に委ねられているそうですが、皆様の『意見』を聞いておきたいとの事です」
『…な、なるほど……』
『…て事は、-私達-の分野かそれに近い分野のスキル持ちか』
すると、補佐役のビオラは『新入り候補』のスキルを予想した。
「正確には、ナイヤチ防衛軍科学研究所の若手職員ですね。
ー……。今、皆様の元に彼女の『スキル』を転送致しました」
カノンは補足した後、オットーから送られて来た『アビリティ』の項目をそのまま転送した。
『ーあ、来ました。………はぁっ!?』
それを確認した班長は、急に驚愕の声を上げる。
『…ど、どうしました?……って、え?……えっ!?』
『…うわー……。…-驚き-のアビリティ-……』
そして、他のメンバーも『それ』を見て驚いた。…何せ、自分達と近い歳のその人物は『天才』と言って差し支えない程の『アビリティ』を複数習得していたのだ。
『ー…こんな-素晴らしい-人材を、この部隊に……』
『……まあ、それだけ此処の防衛軍と政府は今回の事件を重く受け止めているって事ですよね』
…つまりは、いずれ-他所-で起こり得る-人災-に備える為に優秀な人材を『最前線』に送り出し、そこで当人が得た『知識』を送り返して貰い随時『世界』に発信しようと考えているのだろう。
『…流石は、-かの星-に一番近い星系ですね。
防衛意識は、常に高いようです。…っと。
ーカノンさん。エージェント・プラトーには、-賛成-とお伝え下さい』
ポツリと呟いた班長はふと姿勢を正し、カノンに総意を伝えた。
「畏まりました。
それでは、失礼致します」
『お疲れ様ですー』
そして、通信は切れカノンはブラウジスへ送る為の報告書を作り始めるのだったー。