ーその後、『後始末』も無事に終わり眠らされていた隊員達も問題なく復帰したので俺達は『リムジン』の元へと戻って来た。
『ーお疲れ様ですっ!』
『そちらこそ、お疲れ様でした。…あ、そうだ』
すると、指揮を担当しているユリア副隊長と『SPチーム』が敬礼してくる。どうやら、『敵』はこちらサイドを襲撃しなかったようだ。…なんか、気になるなー。
『ー…あの、ところであの-ケージ-は?』
引っ掛かりを感じていると、副隊長は『トリ』が運搬する『ケージ』に触れた。
『…っと。
ー実は、先程地上警備部隊への救援に向かったところ…あの中に居るヤツが隊長達を眠らせていました』
『…っ、なんと……』
『……』
当然、チームは警戒を強めながらケージを見た。
『ああ、勿論既に無力化は完了しておりますのでご安心を。…ただ、-敵-が奪還してくる可能性がありますので先程星系軍本部に-完全隔離施設-の使用許可を貰いました。
なので、皆さんには引き渡しまでの間-アイツら-の保護をお願いします』
『…なるほど。
ー了解致しました』
『了解でありますっ!』
『…さて、そろそろ地上部隊が来ると思いますので俺達は-着替え-してしまいますね』
『はっ!どうぞお乗りくださいー』
ーそして、俺達は再び『ビッグ』の中で『着替え』て素早くリムジンに乗り込んだ。
『ーこちらは、地上警備部隊です』
それから数分後、地上部隊の誘導チームの1人がこちらに来たので『目的地』を告げる。
まあ、俺達の乗るリムジンはデカイので誘導は最後になってしまうが俺達は勿論伯母様も、不満や文句は口にしなかった。
「ー……あ」
やがて、そろそろ俺達の順番が近いているのを確認していると…エリアのライトシステムが徐々に復帰していた。
…『トラ』は出動していないから、多分あの『フラッシュ』は強力だが『持続性』はないのだろう。しかし、脅威なのは間違いから解析は必要だ。…はあ、今日も警備部隊に直行だな。
「ー報告します。只今より、警備部隊による誘導の元-目的地-への移動を行います」
マジでウンザリしていると、カノンが『リスタート』の報告をしてきたので何とか気持ちを切り替えるのだったー。
○
ー気付けば、ラバキアはそろそろ夜の帳が降りる時間帯となっていた。
「ーこんばんは。夜分遅くに申し訳ありません」
まず、旧知の間柄である伯母様がハウスのインターフォンを押した。尚、俺以外のメンバーはリムジンで待機し『SPチーム』は地上部隊員数名と共にハウス周辺をガードしている。
「…あら?留守かしら?」
しかし、ハウスからの応答はなく伯母様は怪訝な顔をした。
なので、俺はふとハウスのリビング辺りを見る。そこには、ライトが電灯しており特に変わった様子もない。…だが、何故だか『嫌な予感』を感じた。その直後ー。
「ーた、助けてくださいっ!」
不意にハウスのドアが開き、中から血相を変えた青年が飛び出して来て…『助け』を求めて来た。
「…っ!ホスピタルに連絡をっ!
恐らく、ご婦人が倒れたのだと思いますっ!」
「えっ!?…は、はいっ!」
瞬時に判断した俺は、警備部隊へオーダーを出した。すると、直ぐに1人が通信を始める。
「…っ!あ、貴女はシュザンヌさんっ!?」
「久しぶりね」
そして、『準備』を始めているとプロデューサー氏とご婦人の息子さんがシュザンヌさんを見て驚いた。…多分、『当時とさほど変わらない美貌』に驚いたのだろう。
「…っ、そうか、だから母は……」
「ー感動の再会中失礼します。…出来れば、ご婦人のバイタルを確認させては貰えないでしょうか?」
しかし、俺はなるべく冷静かつ丁寧に2人の間に割って入った。
「…っ、……え?」
「ああ、申し遅れました。
ー『秘宝探索同盟・プレシャス』所属の、オリバー=ブライトと申します」
すると、息子さんはこちらを見て…衝撃で固まる。…まあ、自分で言うのもアレだが俺って『有名人』だからな~。
「…そうですね。すみません。
それでは、ハウスに入っても良いですか?」
「…っ、は、はい。どうぞ」
そして、困惑する息子さんに伯母様は許可を取った。…まあ、息子さんはいろいろと飲み込んで許可を出してくれた。
「ー…あ、母は自室です。案内します」
「ありがとうございます」
それから直ぐにハウスに入ると、息子さんは案内を申し出てくれた。…そして、セカンドフロアに上がり階段すぐそばにあるドアの前に着いた。
「ー…ボクだ」
『…っ!』
息子さんがインターフォンを押すと、直ぐにドアが開いた。すると、中には息子さんと同い年くらいの女性がベッドの傍に跪いていた。…多分、娘さんだろう。
「…っ、その方達…って、シュザンヌさんっ」
当然、娘さんは俺達を見て困惑するが…伯母様を見て直ぐに早足でこちらに近いて来た。
「…久しぶりね。とりあえず、今ホスピタルから救急チームを手配して貰ったから安心して」
「…っ!……」
…当然だが、目の前に居る娘さんは不安で震えていた。そんな娘さんを、伯母様はそっと抱きしめ穏やかな口調で言う。…すると、娘さんは少し落ち着いたようだ。
「…あ、すみませんがお母様のバイタルチェックをさせて貰っても宜しいでしょうか?」
「…っ、は、はい」
それを確認した俺は、娘さんに許可を取る。すると、直ぐに娘さんは許可を出してくれた。…なのでー。
「ーオーダー。リモートチェック」
『PYEEE…』
「「………え?」」
俺は、後方で待機していた『レスキューチルドレン・CONTACT』にオーダーを出す。当然、お子さん達は唖然とした。…けれど、2人はもっと驚く事になるー。
『ーあ、来ましたね』
『トリ』がベッド傍の小タンスの上に止まると、エアウィンドウが展開し医療班長のアデル大尉が映し出された。
「…あ、あの人は?」
「ドクター・アデル=ホーク。『プレシャス』に協力してくれているホワイトメル星系軍のドクターです」
「…そ、そうですか」
息子さんが聞いて来たので、簡単な説明をする。…まあ、聞いてもそう返すしかないだろう。
『ー…ふむ。
バイタルは安定していますね。…ですが、念のためホスピタルで検診をして貰ってください』
そうこうしている内に、リモートによる検診を終えた大尉は『大丈夫』だと告げた。
「…よ、良かった……」
「…うん」
「ありがとうございます、ドクター・ホーク」
『いえ。それでは、-後-はこちらでやっておきますね』
「お願いします」
『では、失礼します』
そして、大尉との通信は切れた。…お。
すると、ちょうど救急カーのサイレンの音が聞こえて来た。
「ー失礼致します。ラバキアホスピタルの者です」
「…ご苦労様です」
「いえ。それでは、ご婦人の搬送を開始します」
それから数分後。ルームに入って来た女性隊員は、手短に挨拶をしてから素早くご婦人をフロートストレッチャーに移し、ゆっくりと運んで行く。…その後に、息子さんと伯母様が続いた。
実は、救急カーが来るまでの間誰が付き添うか決めておいたのだ。勿論、俺も『やる事をやったら』向かうつもりだ。
ちなみに、バイタルデータは既に大尉がホスピタルに転送済みだ。
「…それじゃあ、私もこれで失礼します」
「…あ、はい。…その、『お忙しいところ』本当にありがとうございました」
そして、俺もルームから出ようとすると娘さんが申し訳なさそうにしながら感謝をしてきた。
「…あー、もしかしてプロデューサー殿辺りかから聞いてましたか?」
「…えっと、実は私もテレビ局の美術スタッフでして、しかも『クイズショー』を担当する事になっているんです」
「…ほう。…それは、『楽しみ』だ」
意外な話を聞いた俺は、ますます『メインステージ』に行くのが楽しみになってきた。
「……。…っ、あ、すみません……」
「いえ。それではー」
娘さんは俺の言葉に驚くが、直ぐに足を止めてしまった事に気付き謝って来た。勿論、俺は気にしていない事を伝えてからルームを出るのだったー。