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決意

 ーSide『マダム』


「ーっ…」

 シュザンヌが友人を見守るなか、不意にドアが開かれ彼女の夫であるプロデューサーが慌てながら入って来た。

「こんばんは。お久しぶりですね」

「…っ、貴女は、ルグウィン教授…?」

 彼女はチェアから立ち上がり、プロデューサーにお辞儀をする。…一方、プロデューサーは困惑しながら空いているチェアに座る。

「今は、レーグニッツ姓名乗っております。

 それと、教授職は大分昔に辞しておりまして、今はブルタウオのセサアシスにある博物館の館長をしております」

「…これは失礼しました。…でも、どうして貴女が此処に?

 …あ、もしかして、妻の為にわざわざ?」

 彼女の訂正に、プロデューサーは謝りつつ『理由』の確認を取る。…すると、彼女は頷いた。

「…今は、『それ』が第1の目的ですが実はもう1つあります。

 ー今回行われる『クイズショー』に、私の『家族』であるオリバー=ブライトが出場するのですよ」

「…っ!?なんと、彼は貴女の親族だったのですか……。……本当に、次々と衝撃の事実が出て来ますね。

 ー…ところで、妻の容態は?」

 彼女の口から出た事実に、プロデューサーは驚愕する。…そのお陰か、彼は少し冷静になり静かな口調で尋ねた。


「少し前にドクターが診察をされていましたが、『大丈夫』だと言っていました。

 そして、『早ければ今夜中に目を覚ますでしょう』と仰っていました」

「…そうですか。……ー」

 それを聞いたプロデューサーは、心底安堵した。…けれど直ぐに、その表情は曇る。

「ー大丈夫ですよ。誰も、貴方を責めたりはません」

「…っ!……」

 すると、彼女はピタリと相手の心情を読み取りフォローを入れる。当然、当人はビックリするが…また表情が曇ってしまう。

「そもそも、悪いのは全て『犯人』です。だから、貴方が責任を感じる必要はないのですよ」

「……、…そうですね。

 …一体、誰がこんな事を……」

 彼女の言葉に、プロデューサーの顔から僅かに曇りが消えた。…けれど、代わりに静かな怒りが涌き出て来る。

「(…これは、『ダメ』ですね。下手をすると、余計な『トラブル』が発生するでしょう。)

 …それでは、私はそろそろお暇するとしましょう。息子さんには、くれぐれも宜しくお伝えください」

 その様子を見た彼女は、オリバーから内密に頼まれていた『聞き取り』を諦めた。…今のプロデューサーに『手掛かり』を聞いてしまうと、

 最終的に『よりカオスなトラブル』が発生する気がしたからだ。

 なので、彼女はそそくさと立ち上がりルームを出ようとするがー。

「ー…っ……、……あれ?」

 ふと、ご婦人がゆっくり目を覚まし辺りを見回す。

「…っ!気が付いたか……」

「…私は、ドクターをお呼びしますね」

 すると、直ぐにプロデューサーは立ち上がりベッドに早足で近き、彼女はルーム内のインターフォンでドクターを呼んだ。


「…あ、貴方、どうして…?」

「どうしても何もあるか。…お前が倒れたと聞いて、飛んで来たんだよ」

「……あ。……此処は、ホスピタル?」

 婦人は、訳が分からす混乱するが…見慣れない天井を見た婦人はだんだんと理解していく。

「ーはい、分かりました。……あ、大丈夫ですか?」

「…っ!……」

 そして、彼女はドクターに連絡を入れると再び傍に戻る。…すると、婦人はワナワナと震え出した。

「…良かった、貴女が、来てくれて……」

「…ええ。もう、大丈夫よ」

 大切な友人の瞳から溢れる涙を見た彼女は、震えるその手を両手で包むようにそっと握りしめた。…その内心は、既に『犯人』への憤りで満ち溢れていた。

『ー失礼します』

 そんな時、インターフォンが起動した。どうやら、ドクターが来たようだ。

「ーっ!母さん、目が覚めたんだ…」

 そして、ドアが開きドクターとナースと婦人の息子が入って来た。

「……。…それでは、今度こそ私はお暇しますね」

「…えっ……」

 そのタイミングで、彼女は帰ろうとする。…当然、婦人は不安そうな顔をした。

「大丈夫。また、明日顔を見に来るから」

「……」

 彼女は、微笑みを浮かべながらそう言う。…けれど、婦人の顔は不安なままだった。

「…それでは、失礼しますね」

「…ありがとうございました」

「…っ、ありがとうございます」

 そんな友人の手をなんとか離し、彼女はルームを後にした。



 …その胸の内に、強い『決意』を抱きながらー。



 ○



 ー……っ。…これは、『ヤバい』な。

『セカンドトラブル』の後、俺はラバキアの地上警備部隊の基地に向かっていた。…そして、基地の周辺に近くにつれ空気がピリピリしたモノに変わってを感じた。

「ーっ!エージェント・プラトーとレンハイム少佐ですか?」

 やがて、基地のゲートへと到着するとゲートキーパーの隊員がこちらに気付き確認して来る。

「はい」

「こちらをー」

 俺は頷き、オットー隊長はIDカードを2つ取り出し隊員に見せる。

「…っ、確認します。

 ーありがとうございます。それでは、どうぞお通り下さい」

『チェック』は直ぐに終わり、それと同時にゲートは開いた。なので、オットー隊長は『ウマ』を発進させる。

『ーっ!お疲れ様ですっ!』

 それから、敷地内を進む事数分。俺と隊長は、ブリーフィングルームのある建物に到着した。…そして、中に入ると空気は一段とピリピリしたモノになり敬礼してきた隊員達の顔は、凄い形相になっていた。

「…凄い気迫ですね」

「…ええ(…まあ、3回も出し抜かれてるしその内の2回は凄まじい『屈辱』を与えらたも同然だからな。…だが、正直ー)」

「ー…『良くない』空気ですね」

 すると、横を歩く隊長は俺の抱いている『懸念』を口にした。…流石は、経験豊富な『プロ』だな。

「…エージェント・プラトーも、そう感じているのでしょう?」

「ええ…。…このままだと、『別のトラブル』が発生する可能性があります」

 隊長の確認に、俺は頷く。


 ーこのままだと、現地部隊は暴走する可能性がある。…例えば、『ルール』スレスレの捜査。

 あるいは、エネミーへの過度で周辺の安全を顧みない攻撃。または、『犯人』を『星』にしかねないような捕獲劇。

 これは、下手をすると警備部隊…いや最悪星系軍が築き上げてきた『信用と信頼』が、派手に崩壊するだろう。

 やがて、その余波が連盟に広がりー。


「ーっ!エージェント・プラトー、レンハイム少佐、お疲れ様ですっ!」

「「お疲れ様です」」

 そんな事態をシュミレートしていると、目的のルームに到着した。なので、俺は気持ちを切り替える。

「ー『ゲスト』到着っ!」

 そして、ルームのドアが開き俺と隊長はルームの中に足を踏み入れた。

『お疲れ様ですっ!』

 案の定、中は凄まじい緊張感が漂っていた。…さて、どうしたものか。

「ーそれでは、メンバーが揃いましたので緊急報告会を始めます。

 …議題は、本日夕方イーストエリアで起きた大規模な『トラブル』についてです」

 どうやって彼らを『落ち着かせるか』を考える中、ミーティングが始まった。

「まず、始まりは18:45にラバキア宙域で発生した謎の『フラッシュ』です。

 それにより、イーストエリアのライトシステムはダウン。…結果、地上の一般ハウス全世帯の停電と交通システムがマヒしました。

 現在、ハウスの停電は全ブロック回復。交通トラブルは徐々に回復していますが翌日まで影響が出る予想です。

 尚、幸いな事にハウスやノーマルウェイでの『トラブル』やケガ人の報告はありません」

『……』

「…(…良かった。仮に、『何か』あったら余計に『悪くなる』からな)」

 ルーム内の責任者達は、『被害ゼロ』の報告に安堵し少しだけ怒りが収まった。…それを見て俺は、マジでホッとした。

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