『ーこんにちは、同志オリバー』
「こんにちは、ブラウジス閣下」
数時間後。俺は例によってブラウジス閣下に今回の『トラブル』の結末を報告していた。
『…今回は、災難だったようだな。本当にご苦労様だ』
「恐縮です。まあ、何とか無事に『3つの事』…
『トラブル』の解決に、『調査』の完遂。
更には『豪華賞品』まで入手する事が出来ました」
閣下は、まず労いの言葉を掛けてくれた。なので、俺は一礼し笑顔で『成果』を口にする。
『流石だ。
ー…しかし、今回は-連中-の新たな恐ろしさを発見したトラブルだったな』
すると、閣下は称賛してくれた。
ーそして、直ぐにとても真剣な表情になり今回の『トラブル』に触れる。
「…いや、全くです。
…既に、提出した報告書をお読みかと思いますが今回は『新たな兵器』を投入して来ました」
『…例の-キャット-だな?…-ヒュプノ-のシステムを搭載していると記入してあったが、どのくらいの-ハザードレベル-だ?』
「…恐らく、『Lv:4~5』相当だと思われます」
『…っ!-致死性ポイズンを持つ害獣-と同じレベルか…』
俺の言葉に、閣下は険しい表情をしながら具体的な比較対象を口にした。…つまり、今回捕まえた『キャット』達はそれほど危険な存在とだという事だ。
「…ええ。
ーその理由は、自制心という-ブレーキを取り払い、悪意や過激な考えという-アクセル-を最大にするヒュプノを使えるからです」
『…っ』
「無論、他にも悪用されればロクな事にならないシステムはありますが、それらは正しい使い方が出来るモノです。
…ですが、-それ-だけは現時点では平和利用は不可能でしょう」
『…そうか。…確か、今回の実行犯となった現地市民も-それ-によって暴走させられたのだったな』
「はい。…まあ、『キャット』の存在を隠す意味と『協力者』を増やす為に実行犯達には厳しい判決が下りましたが」
『…仕方のない事だ。
それに、凄まじく厳しいという訳ではない』
「…そうでしたね。
ー…確か、『奉仕先』での『仕入れ』と『生活サポート』は銀河連盟が行うのでしたっけ?」
『そうだ。
まあ、フルタイムで監視されるし贅沢な生活は出来ないだろうが。…それも、仕方ない事だ』
「…ですね」
閣下は実行犯2人の『管理体制』について口にした。…まあ、『犯罪者』なので仕方ないの措置だ。
『…とりあえず、-キャット-の事は分かった。
そして、-監視-に関しては同志オリバーに一任する。…くれぐれも、-扱い-には注意するように』
「心得ております」
そして、閣下は『キャット』の管理をこちらに一任する事を口頭で許可してくれた。…勿論、『注意喚起』も付け加えて来たので俺は気を引き締めて頷く。
『…そして、もう1つは廃棄衛星を違法改造し-衛星兵器-にした事だ。
それも、星系防衛軍に一切感知されずに…』
「本当に、恐ろしい限りです。
恐らく、複数の『レプリカ』を併用して実行したのでしょう」
『…やはり、そう判断するしかないだろう。
ー今回の-トラブル-で、銀河連盟議会は安全対策の法案に廃棄衛星に関する項目が加える事を決めた』
「それは良かった」
『…だが、-ビル管理-に関する問題は難航している』
「…そうですか(まあ、直ぐには無理か)」
『…だが、少なくとも今回のような事にならない為の対策は早急に設けられるようだ』
「…なるほど」
『ああ。…それでは、次は-ブルタウオ-での件が終わった時に』
「了解です。失礼します」
『ああ、またー』
…ふう。……っと。
そこで通信は切れ、俺は一息付いた。…けれど直ぐにコールがあった。
『ーこんにちは、オリバー』
「こんにちは、クルーガー女史」
映し出されたのは、スペースジャケット姿のクルーガー女史だった。どうやら向こうは、既に出発のスタンバイを終えたようだ。
『私達は、先に出発しますね』
「分かりました。お気をつけて」
『ありがとう。
ーでは、-お返事-を渡します』
すると女史は、こちらにデータ…昨日ウェスパルドさんから預かった『返事』の入った物を転送して来た。
「ー確認しました」
『では、ごきげんよう。…それと、-彼女-の事を頼みますね』
「了解です」
ふと女史は、『彼女』…すなわち『伯母様』の事に触れた。
ーそう。実は、伯母様は俺達と一緒にブルタウオに戻る事になったのだ。…その理由は、まだ定期船の運行が再開されていないからだ。
『ーっ、失礼。…ええ、分かったわ。
それじゃあ、またいずれ』
「はい」
そんな事を思い出していると、女史はクルーからの報告を受けた。どうやら、そろそろ出発するようでそこで通信は終わった。
「……ー」
そして、俺は先程貰ったデータを再生した。すると、ウェスパルドさんが映し出される。
『ー…えと、私の渡したデータが事件解決のお役に立って良かったです。
それと、もし可能であれば-あの2人-の監視役の方に-今後絶対にあんな事をしでかさないように厳しく対応して下さい-…とお伝えください。
それでは、失礼しますー』
モニターに映る彼女は、最初緊張しながら喋り始める。…だが、『実行犯』の事になると厳しい顔で頼んで来た。流石、この星系の生まれなだけはある。
「……ー」
なので、データを保存した後直ぐに情報班の所にオーダーを出した。すると、少しして向こうから返事が来た。…相変わらず、スピーディーな対応だ。
「ーっ!」
やるべき事を済ませた直後、船内に明るくてワクワクするようなメロディが流れる。…どうやらこちらも、出発のスタンバイが終わったようだ。
「……。…良しっー」
俺はシートから立ち上がり、気持ちを切り替えて自分のルームを出たー。
「ーお待たせっ!」
『お疲れ様です、マスター』
「「お疲れ様です、キャプテン」」
そして、コクピットに入るとカノン達は所定のシートから出迎えてくれた。
「…っと。
ーそれじゃ、最終チェックだ」
俺はキャプテンシートに座ると、クルーに向けてコールする。
「アンゼリカ。
『本船』ならびに『サポーター』のエネルギーは?」
「問題ないですっ!」
「ロゼ。
食料の積み込みは?」
「量の確認と固定は完了しています」
「ティータ。
『本船』ならびに『サポーター』のメンテナンスは?」
「勿論、完璧だ」
「シャロン。
目的地の設定と到着時間は?」
「設定は問題なく完了。ブルタウオ到着予定は現地時間で17日夜となります」
「クローゼ。
クルー達と第1分隊、それから伯母様は?」
「既に専用ルーム内にて待機しております」
「良しっ!
ーカノン、軍港管制ルームへ繋いでくれ」
「イエス、マスター。
ーこちら、『アドベンチャーカノープス』。管制ルーム、応答願います」
そして俺は、カノンにオーダーを出す。
『ーはい、こちら管制ルームです。ご出発ですね?』
「はい」
『畏まりました。現在、宇宙港より出発している船はありません。また、ハイパードライブはスタンバイ状態です』
モニターに映った管制官は、素早く外の状況を教えてくれる。…まあ、ランチタイムの少し後の時間で出るのはウチら『プレシャス』ぐらいだろう。それに、『こちら』に来る人は多分いないだろう。
「ありがとうございます。
ーキャプテン」
「ああ。
それでは、当船は出発します」
『了解しました。少々お待ち下さいー』
そして、俺は管制官に出発を告げる。すると彼は一旦通信を切った。
ー直後、固定アームが解除されゲートがオープンされた。
『ーお待たせ致しました。
それでは、発進どうぞ』
「了解です。
ースラスター、起動」
「イエス、キャプテン」
すると、また管制官がモニターに表示されゴーサインー出してくれる。なので、アイーシャにオーダーを出す。
そして、スラスターが起動した事を自分のモニターで確認した俺はペダルを踏む。
それに連動して、『船』はゆっくりと前進を始めた。
『お気をつけてっ!それから、本当にありがとうございましたっ!』
それから少しして、船はゲートを通過し宙域へと出る。…その際、管制官は見送りの言葉と感謝を口にした。
「こちらこそ、ありがとうございます」
『ありがとうございます』
なので、俺達は返事をしてからルリームイールを旅立つのだったー。