「今回のことは全て英二のおかげだな。本当にありがとう」
累は田村に微笑みかけるとまた田村は赤面してはにかむ。
「いやあ、俺はただセッティングしただけだから。2人がちゃんと話し合ったからまとまったんだよ。だから俺に恩を感じる必要なんてないさ。ただ、2人の結婚式には呼んでくれよ」
田村は突然びっくり発言をするので私は仰天した。
「ええ!結婚なんて早すぎます。まだ復縁したばかりなのに」
「いやいや。鉄は熱いうちに打てってね。今の勢いで結婚しちゃえば?」
「…それもいいかも」
「累さんまで!もう!まだ早すぎます!」
私は2人の本気度がわからなくて戸惑ってしまった。本気だとしたら早すぎだし、冗談だとしたら結構ひどい。怒らないといけない案件だった。
「せっかく見直したのに、塁に変なこと吹き込まないでよ。結菜お姉ちゃんが困ってるじゃん」
そこで花ちゃんが助け舟を出してくれた。
「え?見直してくれてたの?あちゃー失敗した」
「失敗した!じゃないわよ。結婚って軽々しくするものじゃないの。人生がそれで大きく変わっちゃうんだから。累も結菜お姉ちゃんにグイグイプロポーズして困らせちゃダメだからね」
花に釘を刺されて累はうっと言葉を飲み込んだ。
「でも。今すぐじゃないけど、結菜の気持ちが固まったらプロポーズしたいと思ってる。それだけは覚えておいて」
累は真剣な眼差しで私を見ながらそう言った。
「累さん…私、まだそういうの実感がわかなくて、でも、真剣に考えてくださっているの嬉しいです。ありがとうございます」
「結菜…俺ももっと頑張るよ。結菜のことを安心させられるように。頑張るから」
「その意気だ!俺も応援するぞ」
「だから2人の世界に足を踏み込むな!」
田村はまたやらかしたので花に怒られていた。
「そういえば英二は花と付き合わないの?」
累は自然とそう言った。すると花は怒り狂う。
「累!私がこいつのこと苦手なの忘れたの?」
「いや、今のやりとりを見てたら、なんだか棘が少し取れてたから」
確かに、少し当たりがソフトになった。まだ口は悪いが、最初に出会った時より随分優しく話すようになった。
「それは…大好きな累と結菜お姉ちゃんの仲立してくれたこと感謝してるから。私だったらできなかった。それが悔しいけどありがたくて…だから英二のこと、ちょっとだけ見直した。キライから苦手に変わった」
「大進歩だね!田村さん、あとは頑張ってデリカシーのないことを言わないようにしたら花ちゃんもきっと…」
私はすっかり嬉しくなった。花と田村はきっといいカップルになる。そう直感したから。でもあまり推しすぎて花の負担になると良くないのでそれ以上はプッシュしなかった。
「そういえば、結菜、どこか怪我したの?それもしかして血?」
忘れていた。今日の昼にあったことをかいつまんで説明すると累は静かに怒っていた。
「そいつら次に見つけたら殺す」
「そんな物騒なこと。累さんは本気っぽいから怖いです!」
累ならやりかねない。だから私は釘をさす。
「田村さんが助けてくれましたし、これは事故みたいなものなので。もう忘れましょう」
「だけど…痛かっただろ?よく見たら鼻も少し赤いな」
そう言って累はそっと鼻に触れる。その指先はひんやりと冷たくて、累が今まで緊張していたことが伝わってきた。
「累さん。大丈夫。これからは累さんが私を守ってくれるんですよね?だからもう忘れましょう。ね?」
「わかった。これからは俺がしっかり結菜を守るから」
その時田村がうーんと唸り始めた。何事かと様子を見ていると田村は私に向かって言った。
「結菜ちゃん、敬語とさん付けやめよう」
「へ?」
田村さんは突然そう提案してきた。