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第159話 ドレス

 それから二人は暇さえあればいいデザインのドレスを見せ合ったがなかなか一致するのもが見つからない。累は基本的には私の意見を聞くと言ってくれるが、彼なりのこだわりもあるようで、なかなかOKが出なかった。


「うーんドレスはもういっそのことオーダーメイドにした方がいいのかな?」


 そう提案すると累はきらきらした目で私を見てきた。


「それだ!もうオーダーメイドで作ろう!そうしたらお互いの理想形のドレスがきっと作れるよ。まずは基本の形から。俺は結菜にはシンプルなマーメイドをきて欲しいけど刺繍やレースにはこだわりたいかな」


「そうだね!私もマーメイドラインいいなって思ってたから、まずはオーダーメイドできるお店探そっか」


 累は真剣に行ける範囲にあるオーダーメイドのドレスショップを探し始めているようだったので、私も色々なお店を見比べていった。その中で価格は高いけど質の良いドレスの写真を掲載していたお店のホームページに心を奪われた。店の外観もレトロだし、場所は代官山だから行けなくはない。


 早速累にそのお店のホームページを見せると、彼も同じように感じたようで、ここにしようと意見が合致した。


「今日はもう遅いから明日俺から問い合わせてみるよ。おやすみ結菜」


 ベットに潜り込むと私は目を閉じる。するとあっという間に眠気に襲われて眠ってしまった。


 夢を見た。

 私は純白のウエディングドレスを見に纏い綺麗な夕陽隣では累が微笑んでいる。

(あ…私累と結婚するんだ)


急に現実味を帯びてきて私は幸せで思わず累に抱きついた、夢の中なのに暖かいしなんだか安心する匂いがする。私がそっと目を開けると寝ぼけて累に抱きついていた。


「あ…起きちゃった?なんか、急に結菜から抱きついてきてくれたから嬉しくて、もっと抱きついていてもいいんだよ?」


「ごめん!なんの夢を見てたのかわからないけどなんだかいい夢を見ていて、そこに累が出てきたから抱きついちゃったの」


 すると累はねつっぽい視線で私を見つめて言った。


「夢で見るくらい俺のこと恋しいと思ってくれているんだね。嬉しいよ」


 唇が自然と近づき累は私を食べるようにキスをしてきた。私は累に応える。

 まだ日が登ってないから室内は暗く、二人の行為を包み隠してくれる。


「累…大好き」


「俺も結菜のこと愛してるよ」


 二人は深く繋がり愛を確かめ合った。


 それから少し仮眠をとって目をこすりながら会社に行く為の準備を始めた。累は上半身裸で首からタオルをかけて機嫌よく鼻歌を歌いながら朝食を作ってくれている。


 仲良ししたあとはいつも機嫌がよく、累は朝からふわふわのオムレツを作ってくれた。


 中にはひき肉とチーズが入っておりとても美味しい。パンもカリッと焼いてバターをたっぷり塗ったあと、蜂蜜をかけてくれている。

 眠気を吹き飛ばすためにカフェオレボウルにたっぷりのカフェオレが入っており、そのどれも全て絶品だった。


「累のご飯はどれも美味しい!太っちゃいそうで怖いな」


「俺は結菜が太ってもいいよ。ムニムニして触り心地が良さそうだし」


 累は冗談とも本気とも取れる声でそういうと私にデザートのカットした桃を出してくれた。


「あ!これあたり桃だね!すっごく甘い」


「良かった。桃は美味しいのと美味しくないので差が激しいから美味しいの選べて良かった」


「累は食べないの?」


「うーん俺は桃あまり好きじゃないんだよね」


 累はどうも私が桃好きだからわざわざ買ってきてくれたらしい。

 その気遣いが嬉しかった。


「累ありがとう!いつも私のこと気にかけてくれて…本当に嬉しい」


「当たり前だよ。俺にとって結菜以上に大切なものなんて何もないからね」


 そう言いながら累も朝食を束始めた。なぜか上半身裸で。


「累シャツ着たら?」


「ん〜まだいいかな。余韻に浸りたい気分なんだ」


 その回答に私は恥ずかしくて赤くなる。累は私との行為を大切にしてくれていて、しばしばこうやって余韻に浸って楽しむことがある。その度私は恥ずかしくなってやめてと言うのだが、全然きいてくれない。

 変なところで頑固者なのだ。


 説得は早々に諦めて私は朝食を食べ終えると食器を片付けて出かける準備をする。

 寝室には累が私のために用意してくれたドレッサーがあるのでそこで化粧をするのだが、プロが使うような鏡に照明がついたタイプのものなのでメイクがしやすくて助かっている。

 引っ越してきて、最初は累の使っていたものかとびっくりしたが累が私と暮らすことを楽しみに買ってくれたものだとわかって嬉しかった。

(累は本当に私のこと大事にしすぎなくらい大事にしているよね。私ももっと累のこと大切にしよう)


 どう頑張っても累には叶わないと思うが、少しでも愛情を返せたらと思う。

 そんなことを思いながら私は手早くメイクを済ませてカバンを持って会社に向かった。

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