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んあっ?
あーあー。
あれ? もしかして繋がってる系?
おお~~~ひっさしぶりだねぇ。
ここ何ヶ月も繋がらなかったから、おじさん、もう一生繋がらないのかと思ってたよぉ。
作者の人、ほんと気まぐれだからさ。
いや~ここ最近ヌメ彦と一緒で随分楽しい旅だったけどさぁ。
そっかー、行っちゃうのかぁ。
まぁ、所詮はクラゲの一人旅だからね。
おじさんもたまにはいいことしたでしょ?
みんなそう思わない?
絶望のふちにあったヌメ彦を救って生き方を教えてやったりね。
最近ナレーションの人にも怒られないし、稼ぎは二人で二倍だし、ちょいちょい風俗行けるし。
言うことなしだったんだけどね~。
もしあれだったらヌメ彦と一緒に、その故郷とやらについていってみようかなぁ。
いやぁ、おじさん邪魔者だろうなぁ~。
ヌメ彦、完全に恋しちゃってる目だったもんなぁ。
じゃああれだ!
後ろからこっそりついて行ってみようかな?
それならいいよね? げへへ。
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「にゅわっ! …………にゅ~……」
……イカ頭さんの後をつけるのはおやめなさい。
きっと知り合った女の子と幸せになりたいのでしょうから。
「にゅ!? にゅわっ! にゅわ!」
何を言っているのか分かりません。
ほら、もうすぐイカ頭さんが女の子を紹介しにやってくるのでしょう? 静かになさい!
「……にゅぅ……」
「チェリー君!」
イカ頭さんは旅立つ前に、女の子をチェリーちゃんに紹介したいと言いました。
そう、それが今日なのです。
女の子を紹介したらその足で、イカ頭さんは女の子と旅立つつもりです。
イカ頭さんの隣にはイカの女の子がいました。
人魚ではないので可愛いかどうかは良く分かりませんが、肌が浅黒く、イカ頭さんの身体よりも二周りほど大きいですね。
耳にはピアスが沢山ついています。
……海外のイカでしょうか?
というかイカ頭さんとは親子ほどの年の差があるのではないでしょうか?
「チェリー君、お待たせ! 紹介するよ、こちらカステラちゃんだよぉ。あ、もちろん源氏名ね」
「ヨロシクオネガシマ」
「にゅ……にゅにゅ?」
え……
「あ、本名はね、故郷についたら教えてくれるって!」
「コキョトオイヨ。ヌメノホンキミタイ。ホンミョソノアトヨ」
「にゅ……にゅわ」
そ、そうなのですか……えぇ……
「ヌメ、ハヨイコ」
「あ、うん、ちょっと待ちなさいね。チェリー君には本当にお世話になったからちゃんと別れのご挨拶をしなきゃだよ」
「アッソ」
チェリーちゃんは無言でイカ頭さんにメモを渡しました。
『故郷はどこ?』と端的に書かれています。
あ、私もそれを聞いてみたかったのです。
「えっとね……ここからずっと北のほうにあるんだって。外国だね。スルメット共和国って国だそうだよ」
「…………にゅ、にゅー……」
聞いてもいまいちどこか分かりませんね。
チェリーちゃんは分かっているのでしょうか。
「チェリー君、今まで本当にありがとう。私はチェリー君に出会えて本当の自分を見つけることができたよ」
「……にゅ、にゅわ」
「今度こそ、必ず幸せになってみせる……! そしてカステラちゃんを連れて、私もシャングリラに行くから……必ず行くから!」
「にゅ……わ」
「それじゃあ……少しだけお別れだね……」
「ヌメ、ハヨイコ」
イカ頭さんは、一方的にチェリーちゃんの触手を取り、固い握手をしました。
「それじゃあチェリー君! 必ず行くから待っててね!」
「ヌメ、タバコチョーダイ」
「…………」
イカ頭さんの姿が遠ざかり、人の影にまぎれてしまいました。
イカ頭さんの姿はもう見えません。
チェリーちゃんはその場でぼんやりと立ち尽くしていました。
「…………」
チェリーちゃん。
「…………にゅ?」
追いかけるんじゃなかったのですか?
「……………………にゅーにゅ」
…………奇遇ですね……私もそれが正解だと思います。
人生って……分からないものですね……
「にゅにゅ」
チェリーちゃんはイカ頭さんとは逆の方向へ泳ぎ始めました。