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余命一年のヒロイン編1-2 eスポーツ部始動!

背の高い男性はコトジョの国語教師、護国寺牛次郎うしじろう三二歳。青みがかったワイシャツにジレ(袖のない胴着)をつけている。ハンサムで誠実。人が良すぎるほどの生徒想いの彼は女子人気も高いが名前のせいで舐められている。生徒にため口で話されても文句を言わず人当たりもいい。


前巻でクリスマスに片思いしていたスクールカウンセラーの小山ひかりちゃんに手ひどく振られた。どんな振られ方をしたかは一巻部分を見てほしい。


それでもひかりちゃんとすれ違うとちゃんと挨拶している彼は聖人だと思う。ひかりちゃんも挨拶をかえすが、生徒たちの前で本性を現すことはない。


彼女の本性は男の運命を狂わすファム・ファタールなのだ。


「おお、うっしー。その荷物はなに?」

姫川さんが綺麗な瞳をしばたたかせた。


「モニタだ。おまえたちは携帯ゲーム機やPCで格闘ゲームをしていただろう。これからはモニタで対戦する」


「部費で買ったの?」


「そうだ。新品は買えないが中古の32インチテレビだ。ゲームモニタは32インチがベストだと思っている。これ以上大きくなると迫力は増すが格闘ゲームには大きすぎる」


「あたしたちに言ってよ。手伝ったのに」


「おまえたちは女の子だからな」


「やさC!」(※誤字ではない)


「録画もするぞ。一部のハードには録画機能がある。PCも録画できることは知っているな?」


「理由は?」


「対戦を研究する。有名な言葉を知っているか。勝利に偶然はあるが、敗北に偶然はない。つまり負けた試合は負ける要素があるということだ」


「それを研究して反映させるんだね」


「そうだ。みんな席に座ってくれ。黒咲さん、入部おめでとう。自己紹介してくれるかな」


「ボクの名前は黒咲ノア。ゲーマーさ。二月七日生まれ血液型A型。尊敬している人はジャンヌ・ダルク。嫌いなものは虫全般。

魔王ベルゼサタナスに対抗するためこの星に降臨したカフラマーンの騎士のひとり。あなたたちとは大いなる宇宙意思ヴァイチャのガイダンスによって巡り会った。

以後、余をよろしく【ノア言語でよろしくお願いします】」


「なんだベルゼサタナスとかカフラマーンって! 宇宙意思ヴァイチャってなんなんだ!」


護国寺先生も動転している。


「ヴァイチャはライトワーカーにサインとガイダンスを与え、この宇宙を調和に導く存在です。過去にもこの星で仏陀、キリスト、ジャンヌ・ダルク、ナイチンゲール、そしてキング牧師ともコンタクトを取っています」


「本当か?」


「うっしー。スルーが正しい。つっこむと喜ぶから。ノア、設定だよね」

姫川さんも髪が乱れている。


「イエス、マスター!」ノアちゃんは口元が綻んだ。


「そこはやりきりなさいよ。ぶれちゃいけないところなんだから」

折笠さんは不機嫌そう。


「二四次元にアクセスできるボクは自分をべつの宇宙から眺めることができるのです」


「ノアちゃん、中二病がんばってね。小説の参考になります」

村雨さんはノアちゃんと打ち解けた。


「応援有り難う御座います!」

ノアちゃんは村雨さんの手を握った。


「応援するものではないからね。中二病って言うより電波だわ。どうしよう。新入生に核弾頭来ちゃったわ」

折笠さんが眼を細めた。


「みなさん、ボクのパトロンになりませんか? いまなら一ヶ月無料期間と現金一〇万円キャッシュバックがあります」


※パトロン……経済的支援者のこと


「新手のマルチ商法か!」姫川さんですら唖然としている。


「ならんわ!」折笠さんはお手上げのポーズを取った。


「うっしー、彼女を矯正して。教師だから」

姫川さんが護国寺先生に話題を振る。


「いやいや。生徒の自主性を尊重する」


「放置したらこの子は大変なことになりますよ。世界を揺るがす大事件を起こします」折笠さんは本気らしい。


「ヴァイチャは調和を望んでいます」

ノアちゃんは両手で見たことのない印を組んだ。


「ああ、そう。護国寺先生つぎ行って」折笠さんは頭を抱えた。



※黒咲ノアちゃんのいうことを真に受けないでくださいね。そんなやついないと思うけど……。



つづく


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