昨日ミスティさんと食事をしながら、学内での授業の様子やら何やら話を聞いて、色々と学ぶ方法を考えた。
まず、今までコルクス教授にマンツーマンで教えてもらっていたので、他生徒との交流もない。
食堂に行ってご飯を食べるときに、見かける生徒はそこそこの良家の出、もしくは貴族なのではないかと推測できた。
そもそも子供を働きに出さず、学びの場を与えることができるのは、金銭的に余裕がないと無理だ。
もちろん僕みたいに村から来ている平民もいるかもしれないが、大勢の人の中からピンポイントで見つけ出すのは不可能だ。
また、平民は平民でも街で生まれ育った平民、村で生まれ育った平民では生活基盤が違いすぎる。
未だに村では物々交換が主流だが、町で物々交換をしているのはほぼ見なかった。
急遽必要なものが出た人はやっていたが、おそらく鮫トレだっただろう。
一応、学校の教育方針で、身分など関係無く平等教育を受けられる。
学内では無闇矢鱈と権力を振りかざすことは禁止されている。
だが、貴族は貴族、平民は平民、考え方が違い衝突することが多いのではないだろうか。
そんな中で、
村人のアルージェが入って行っても、平民にも貴族にも属せないので、まともな話が出来るとは思えない。
ここまであくまで僕自身が勝手に考えているだけだ。
少し偏屈な考えだが、これくらいは考えておかないと、教育方針を鵜呑みにして、
「みんなウェーイ!仲良くウェーイ!」と調子に乗った結果。
何か有ったら、ショックを受けるのは自分だからな。
まぁ、ウェイウェイ言うのは流石にないけど。
上記理由により、図書館が一番だと判断しました。
ってことで、ミスティさんに教えてもらった、図書館の入り口に到着しました。
「あれ?ここまで来たけど、ルーネって図書館入れるの?」
紙という脆弱で劣化する素材を扱っている以上、かなり厳しく規制されている可能性もある。
「ルーネ、一緒に入れなかったらどうしよう・・・、考えてなかった・・・」
「バウッ」
入れなかったら外で待っとくから気にしないでと、脳内に伝わってくる。
「うぅ・・・ルーネ!何かあったら一緒に入れるように説得してみるからね!うぅ・・・」
ルーネにハグしてルーネの優しさを噛み締める。
「はい、確認が取れました。結構です、お入りください」
あんな感動的なシーンをやっていたのに、ルーネもあっさりと入れてしまった。
カウンターにいた受付の人に言われるがまま、アルージェは手の甲を見せた。
そこにはフォルスタでルーネと契約した時に出来た紋章が刻まれている。
受付係の人が「繋がりを示せ。
同じタイミングで、ルーネからは赤い光が放たれて、交わり紋章が現れた。
「あのさっきのって・・・?」
何が起きたのか分からなかったから、素直に受付の人に聞いた。
「主従契約をしているのに、ご存知ではないのですか?手の甲にあるその紋章は血の契約をしているという証明です」
受付の人が手の甲を指差しながら話す。
「人間でも動物でも魔獣でも、全てがそこに集約されます。なので紋章に対して、呪文を唱えて、誰と契約をしているのかを確認しました」
「な、なるほど、では紋章がある人に呪文を唱えたら、何と契約してるかがバレちゃうってことですか?」
「そうですね、もちろん隠蔽する方法もあります。ただそういうのは人と契約する場合に使われることが多くて、魔獣や動物と契約するときは、明確にすることがほとんどです」
「あぁ、まぁ確かに人だとプライベートにも関わりますもんね。逆に魔獣なんかはすぐに分かる方が安心かもしれないですね」
「その通りです」
「ありがとうございます!また一つ賢くなりました!」
アルージェは、ルーネと一緒に図書館の中に入る。
「はい、ごゆっくりどうぞ」
受付の人は、アルージェの後ろに並んでいた人の対応を始める。
「おぉぉぉぉぉ」
アルージェは驚嘆の声を上げる。
中に入るとまず驚いたのはその広さである。
どういう原理かはわからないが、外から見えていた建物と明らかに広さが異なっていた。
天井は高く、上の方にある本はどうやって取るのかもわからない。
「ミスティさんが言ってた、特別な魔法が掛かってるってこういうことか、すごいな」
見渡す限りの本!本!本!で、どこにあるのかも検討もつかない
「この中から付与魔法の本探すの不可能じゃない・・・?まぁ探してみるけど」
付与魔法のことが書かれている本を探し始める。
とりあえず、棚に書かれていないかと期待して見るが、棚には棚番号しか書かれていない。
「ぐぬぬ、案内を探すしかなさそう」
案内を確認しようにも、それらしき物は無い。
「ルーネなにか分かったりしない?」
少しでも手掛かりが欲しくてルーネに聞いてみる
「ワウ・・・」
と元気なく答える。
「まぁ、そうだよね、初めて来たし、なら棚を一つづつ見ていこうか」
キョロキョロと本棚一つ一つ確認して、付与魔法の本を探し始める。